更新日:2022.10.28
Vol.31
目次
・小さな動き、数字の変化を注視しよう
・客単価が下がっているのは、来店客の不満が増えている証拠
小さな動き、数字の変化を注視しよう
「戦争のことは兵士に聞け」という格言があります。大将軍が「われわれは大勝利を収めつつある」と、大ボラを吹いても、参謀が「作戦は成功裏に終わりつつある」と報告しても、戦況をいちばん知っているのは、戦場で戦っている兵士です。どんな景気のよい情報が飛び交っていようとも、「敗色濃厚だな」くらい兵士は肌で感じることができます。
外食業もまったく同じですね。「戦況」をいちばん知っているのは、店長を含めた従業員(パート・アルバイト含む)です。店長が店主であれば、「戦況」は店主がつかめますが、店主が現場を離れると途端に「戦況」がわからなくなります。そして、打つ手が狂ってきます。例えば、2店舗を経営する場合、1つの店の店主だったときには大繁盛を謳歌していたのに、もう1つ店を出したら坂道をすべり落ちるように客数が減っていく。こういう店が後を絶ちません。
店主が1店で頑張っているのと、2店を経営するのとでは、難易度に天と地ほどの開きがあります。どんな猛将であっても、2つの戦場の指揮をとって、いずれも勝利させよと言われたら「それはちょっと」とひるむこと必定です。複数店管理はそれくらい難しいことなのです。少しでも正確な情報を把握するためには、小さな動き、変化も見逃さないことです。はっきり言うと、任せた店の店長の言葉を、信用しすぎないことです。
店を訪れたときに、パート・アルバイト(PA)が生き生き働いていて元気ならば、まず問題ありません。店長1人がカラ元気で、あとは暗い顔でのっそり働いているなんて状態だったら、転落はすでに始まっています。その兆候は、まずPAの定着率に表れます。離職率が上がって、ワークシフト作成には四苦八苦。こんな店で繁盛店はありません。忙しすぎて辞めていくPAは少ないのです。キチッと訓練されたPAならば、程度の差はありますが、忙しくなるほど働き甲斐を感じるものです。
また、客数が減り始めているのに、原価率、人件費率が下がって、むしろ利益は増大している店。これも危険な兆候です。以前にも書きましたが、外食産業は瞬間的に原価や人件費を下げやすいビジネスです。利益優先主義でいくと、この店の店長は「よくやっている」ということになりますが、とんでもない判断です。評価の唯一の基準は「客数」。客数を増やした結果、利益を伸ばしているのがいい店長なのです。
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客単価が下がっているのは、来店客の不満が増えている証拠
もうひとつ、店長が休みの日に店へ行ってみましょう。そこで惨状をさらけ出していたら、どんなに頑張っている店長でも、その人を評価してはいけません。
その店長は、店長がいちばんやらなければならない仕事をやっていないのです。店長の最大の仕事は、スタッフの訓練・育成です。店舗運営に必要なスキルを与えることです。それだけではありません。トレーナーを育てることもです。自らスキルを身に付けているだけではなく、そのスキルを他の社員やPAに注入できる人物を育てること。これが店長の最大の仕事です。その人物が時間帯責任者として、さらには全時間責任者として、店長の休みの日を任されることになります。「いる日」と「いない日」の差がありすぎる店の店長は、失格です。「店長がいない日」のほうが元気で、評判がいいというのも問題ですが…。
客単価が下がっているのも赤信号です。注文回数が減っているのは、サービスのレベルが落ちている証拠です。中間バッシングが遅れたり、テーブルに通う数が減ると、客単価は落ちます。「ビールをもう一杯おかわりしたいな」と思っているお客様も、それに気がついてくれてテーブルまで来てもらわなければ、「ま、いっか」で注文を止めてしまいます。飲食店のサービスは、気付きがとても大切です。気付きが注文数を増やし、客単価を上げるのです。その“気付き力”を身に付けさせるのも、店長の訓練・育成力の高さにかかっています。
売上をつくる“強い店長”は客数も伸ばし、かつ客単価も上げます。客単価が異常に跳ね上がることはあってはなりませんが、メニューの注文数やビールのおかわりが増えるという形で、ジワジワと客単価が上がるのは、お客様がサービスに満足している証拠です。
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