2014/04/30 繁盛の黄金律

ストアコンパリゾンこそが、あなたのお店が進化する近道だった

店に立てこもるから店の寿命が縮まってしまう‐自分の店が進化し続けるために、時代遅れにならないために、「ストコン」といわれる、競合店や繁盛店の視察は定期的に行わなければなりません。

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更新日:2023.10.23

Vol.32

店に立てこもるから店の寿命が縮まってしまう

ストア・コンパリゾン(store comparison)という言葉があります。直訳すると「店舗比較」。業界では略して「ストコン」などと呼んでいます。要するに、競合店や新手(あらて)の繁盛店、新機軸店を見てまわることですね。自分の店が進化し続けるために、時代遅れにならないために、この「ストコン」は定期的に行わなければなりません。

日々の営業で手いっぱいで、「他所(よそ)の店なんて見る暇はないよ」などという店主(店長)がいますが、そんなことだから店はジリ貧になるのです。四六時中、店にはりつきっ放しで、すっかり情報過疎に陥り、お客よりも飲食業界のことを知らない人間になってしまう。料理は作れても世の中の動きから完全に取り残されてしまう。その料理も刻々と時代遅れになっていく。そんな業界人があまりに多いのです。また、「ストコン」の費用は、当然社費ですが、その金を惜しむようでは、店に未来はありません。また、そのための利益も出ていないような店ならば、閉店したほうがよいかもしれません。

店主(店長)以下、店の仲間が連れ立って、集中的に店をまわるわけですから、食べる量は半端ではありません。ひとつのテーブルで、ああでもないこうでもない、と論議をするのですから、4~5人のグループが最適でしょう。そして1回にまわる店の数、これも注文するメニューの量にもよりますが、やはり4~5店が限界です。注文するメニュー数はケチってはいけません。

最初の1~2店は目いっぱい注文できても、すぐに満腹になって、後半は注文してもほとんど手もつけずに残してしまう、ということがままあります。最初のスケジュールの立て方がいい加減だと、ストコンが時間と金のムダ使いになってしまいます。コツは、店と店との間に「歩き」をいれることですね。これでだいぶ腹がこなれます。間にショッピングセンターを入れて、その視察も兼ねる、というのも有効な方法ですね。

「否定」から入ると、何も学べない

収穫の多い「ストコン」になるための原則を書いておきましょう。

① 大まかにテーマを決めておく
大まかでいいのです。ハンバーグの比較食べ歩きをする、サイドメニューの参考例を探す、アルコールの新しい売り方を見つける、競合店の値付けチェック、といったメニュー関連が中心テーマになりますが、キッチン内の作業と労働環境のチェック、フロアの作業動線とサービス内容の確認といった、オペレーション関連がテーマになることもあります。しかし、テーマを限定的に決めすぎていると、そのことしか目(口)に入らず、副産物の収穫が得られなくなります。目も口も「広角」にしておかなければなりません。

② 事前のデータを集めておく
ぐるなびのサイトを使えば、相当くわしい店の情報が集まります。メニュー内容と価格ばかりではなく、店の雰囲気、店舗レイアウト、調理レベルなど、たいていのことがわかります。その情報を基に、店のフィギュア(像)をつかんでおかなければなりません。昼、夜の客単価がいくらになるか。月商はどれくらいになるのか。原価率、人件費率は。これくらいの予想は出しておかなければなりません。立地の特性をつかんでおくことも、大切なことです。

③ 「まずい」と言わないこと
どこの店に行っても、「まずい」を連発する人がいます。トップが「まずい」と言ったら、部下は「いや、うまいですよ」と言えなくなります。どういうわけか「うまい」と言う人よりも「まずい」と言う人の方が、味覚がすぐれている人と思われるのですね。特に、料理人は自分の「舌」を誇示するために、「まずい」と言いがちです。だれかが「まずい」と発したとたんに、その店のコンパリゾンは、すべてムダになってしまいます。せっかく訪店したのだから、その店のよいところを発見するようにしなければ、時間と金をかけた意味がなくなってしまいます。「まずい」は禁句。これを徹底しましょう。

④なるべく店内、店外をウロウロすること
店に迷惑をかけない範囲でウロウロしけましょう。席に座っているだけでは見えないものが見えてきます。トイレは必ず複数回行くべきです。トイレのクレンリネスこそが、その店の営業力と従業員のモラールのバロメータです。他の来店客のテーブルもまわるべきです。何を食べているのか、酒の注文度合いは、客層は。ウロウロすることで、得られる情報は少なくありません。それに、店の記憶が鮮明になりますし、何が特徴なのかがはっきりわかります。ただし、写真撮影は禁物です。店に迷惑をかけますが、何よりもお客が不快に思います。商品写真やテーブルまわりの写真を撮ることはかまいませんが、店内写真は厳禁です。

次回へ続く)

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報はご自身でご確認ください。

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