2014/05/15 繁盛の法則

鶏ベースのスープと自家製の細麺で人気のラーメン店とは

あっさりした味わいの「鶏そば 一瑳」(埼玉・浦和) に学ぶ‐鶏ガラベースの澄んだスープに自家製の細麺を合わせた「あっさり鶏そば」が人気。平日で1日300~400人、土日は400~450人が来店する。

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鶏そば 一瑳

JR浦和駅西口から徒歩2分ほど、路地に入ってすぐの場所にある20坪16席の店舗

Key Point

  1. 独特の繊細な鶏そばを開発
  2. 商品のスピード提供に努める
  3. 接客に力を入れ幅広い客層に対応

鶏そばに絞り込んだ商品構成で専門性を追求

鶏ガラをベースとする澄んだスープに、独自の「塩かえし」(塩ダレ)、自家製の細麺を合わせた「あっさり鶏そば」(750円)を主力商品とする「鶏そば一瑳(いっさ)」は、平日で1日300~400人、土日は400~450人が来店する人気店である。埼玉・JR浦和駅から徒歩2分ほどの路地沿いにあり、店舗規模は20坪16席。この来客数に対応できる秘訣は、商品提供の早さである。あっさり鶏そばであれば、店内で食券を購入し、席に着くとほぼ1分以内で商品が提供される。そのため、店頭にウエイティングができていても、次々と客席が回転し、数分待つ程度で入店できる。急いでいるサラリーマンもためらわずに並んでくれるほど、信頼感を獲得している。

オープンは2011年2月7日。ラーメンのトレンドとして、とんこつ系、魚介系、その2種を合わせたダブル系、ガッツリしたつけ麺などの流れがあった後、とんこつも豚肉も一切使用しない鶏そば専門店は、新鮮な感覚で受け入れられた。また、オープンの翌月に東日本大震災が起こり、物流の遅れや計画停電の影響などで周辺の飲食店が休業を余儀なくされていたときも、同店では業者の協力を得てできる限り営業を続けたことが、地元で認知される一因ともなった。

あっさり鶏そばのほか、「濃厚鶏そば」(830円)、「鶏白湯つけ麺」(並盛220g780円、大盛330g880円、特盛440g980円)、夜限定の「まぜそば」(780円)があり、そのほかはトッピング9品目(100~200円)、ご飯もの3品目(100~200円)と、絞り込んだ商品構成としている。餃子や野菜炒めなどのサイドメニューはない代わりに、鶏そばのさらなるブラッシュアップや、商品をより早く提供できるように工夫を重ねてきている。

「一瑳という店名は、ひとつのことを磨き上げていくという意味です。オープン当初と比べて、麺もスープもかなり改良してきましたし、お客さまをできるだけお待たせしないように、スタッフの作業の分担やオペレーションも変えてきています」と、月岡圭(つきおかけい)店長は語る。昼のピークタイムは5人体制とし、仕込みと製麺、麺の茹で、スープ、調理補助と洗い場、ホールと、きっちり作業を分担している。中でも麺を茹でる担当者は、お客が入口の食券機のどのボタンを押すかを見て麺を茹で始めるため、細麺の鶏そばであれば、席に着いた途端に商品が出てくることに、最初は驚くお客も少なくない。

看板商品の細麺を使った「あっさり鶏そば」(手前750円)と、太麺を使う「鶏白湯つけ麺」(並盛780円)。あっさり鶏そばには柚子コショウが添えられるほか、卓上に用意された揚げたエシャロット、ピーナツなどが入った自家製ラー油などを好みで加えて、味の変化を楽しめる

接客にも力を入れ、子ども連れや年配客に配慮

看板商品のあっさり鶏そば用のスープは、岩手産銘柄鶏「さわやかあべどり」のガラをメインに、モミジ(足)、ボンジリ(尻)、首肉、ショウガを加え、濁らないようにコトコトと静かに煮て取る。濃厚鶏そば用のスープは、あっさり鶏そば用のスープを取った後に、さらにグツグツと煮立たせながら計10時間かけて鶏の旨味を凝縮させ、最後にガラ等を絞り、白濁した濃いスープとする。つけ麺用は、濃厚スープをベースに、ニンジンやタマネギなどのペーストを加えてさらにとろみやコクを出す。また、鶏そば用は、静岡・焼津産のカツオの荒削りと、利尻昆布でとった出汁に塩を加えた塩かえしで味付けし、つけ麺用は、本醸造しょう油、ウルメイワシ、宗田節、サバ節、ザラメ糖で仕上げている。

麺は、ガラス張りになった店内の製麺室で、中華麺用の小麦粉、かんすいに、小麦胚芽を加えて製麺する。鶏そば用は35秒で茹で上がる細麺に、つけそば用はプレスの回数や熟成時間を変え、茹で時間4分半の太麺にする。

オーダー比率は、あっさり鶏そばが約5割を占め、濃厚鶏そばが3割、つけそばが2割となっている。具材では、鶏モモ肉を蒸して柔らかくし、皮をバーナーであぶって香ばしさを出した「鶏チャーシュー」(追加200円)、中がトロリと半熟になった自家製の「味玉」(100円)などの人気が高い。客単価は800~850円で推移する。

ラーメン店としては女性客が比較的多く、3~4割を占めるほか、週末には小さな子ども連れや年配客も増える。

「接客には気を使っています。入口の扉の開け閉めや、席へのご案内に加え、年配の方には先に着席していただいて、スタッフが食券を買ってくることもあります」と月岡店長は語る。同店が鶏そば専門店として幅広い客層に支持されている要因は、以下のようになるだろう。

1繊細であっさりとした独特の鶏そばを主力商品として開発している。
2商品のスピード提供に努め、忙しいサラリーマン客にも信頼されている。
3サービスに力を入れ、子供連れや年配客などにきめ細かく対応している。

「今後も日々味の研鑚に努め、あっさり鶏そば、濃厚鶏そばともに、もっとおいしくなるようにし、地元の方々に愛される店にしていきたいですね」と月岡店長は真摯に述べている。

住所
埼玉県さいたま市浦和区高砂1-8-11
営業時間
11:00~15:00、18:00~翌1:00
定休日
無休