2014/06/13 繁盛の法則

鮮魚販売、食堂、そうざい、弁当で魅了する複合店とは

豪快な魚定食の「タカマル鮮魚店 3号店」(東京・西新宿)に学ぶ‐魚介類販売の鮮魚店と、魚をメインとする食堂を併設。常連客が増えて手狭になると、徒歩圏内に新店を出店するという展開をしてきた。

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タカマル鮮魚店 3号店

東京・西新宿の至近距離に3店舗を出店。3号店は、1階では主に鮮魚や弁当、そうざい類の販売を行い、2階を食堂としている。

Key Point

  1. 魚介類の新鮮さと高原価でお値打ち感を訴求
  2. 漁師の家の食事のようなボリューム感ある定食類を提供
  3. その日の仕入れで毎日料理内容を変更

鮮魚卸、販売指導から小売り、食堂経営に進出

魚介類販売の鮮魚店と、魚をメインとする食堂を併設する「タカマル鮮魚店」は、東京・西新宿7丁目で3店舗体制を築いている。2009年に18坪のガレージを改装して1号店を創業、2011年に徒歩1~2分の場所に2号店をオープンし、翌年12月に青梅街道沿いに3号店を開店した。各店とも派手な広告宣伝は一切しておらず、開業当初は苦労したが、徐々に常連客が増えて手狭になると、徒歩圏内に新店を出店するという、堅実な展開を進めてきた。

店内の一角は、冷蔵ケースに魚介類を並べた正真正銘の鮮魚店で、築地市場から仕入れる天然ものを中心に扱っているため、近隣の住人ばかりでなく、飲食店の料理人が買いに来ることも多い。食堂では、漁師の家の家庭料理をイメージした、刺身や魚料理の定食、丼ものなどを提供している。技巧を駆使した料理ではなく、大きくてぶ厚い刺身や、煮る、焼く、蒸すといったシンプルな魚料理、ポテトサラダや玉子焼きといった家庭的なそうざい類を揃えている。しかも客単価は昼1000円、夜3000円ほどと手頃で、原価率50~60%をかけたコストパフォーマンスの高さ、ダイナミックさで幅広い客層を魅了している。

同社代表取締役の相原正孝氏は、1972年兵庫・尼崎出身。22歳で上京し、当初は役者の道を目指していたが、縁あって大手水産会社に入ると、間もなく店長を任され、バイヤーも担当するなど、頭角を現した。さらには「魚コンシェルジュ」として、大手スーパーの鮮魚コーナーやチェーン展開している小売店などに魚を卸し、荷下ろしから、パック詰め、並べ方、価格設定などの販売指導や、マグロの解体ショーなどのイベントに協力し、売上げ増に貢献する業務を担当した。2004年に株式会社鷹丸を創業して独立し、築地市場での買参権を取得して卸業と販売指導を年間契約で請け負うようになった。しかし、成果と連動しない年間契約に疑問を覚えた相原氏は、自分たちの魚の販売力を試したいと、2009年に株式会社タカマル鮮魚店を創業し、小売りや食堂経営に挑戦することにした。

手前が桶盛りの刺身、ご飯、あら汁、香の物がつく「タカマル定食」(1,000円)で、刺身の内容はその日の仕入れによって変わる。奥の「ひじき煮物」(100円)、「手作り厚あげ」(100円)など、家庭的なそうざい各種も好評。

昼は定食の提供と弁当の販売、夜は居酒屋利用に対応

都心で物件を探す中で、紹介されたのが西新宿の1号店の物件で、小滝橋通りからやや路地に入った難しい立地だが、業務店の鮮魚の仕入れのニーズはあるだろうと出店を決めた。食堂の併設に向け、料理は何もできなかったという相原氏は、中心メンバーの社員2人とともに実家に泊まり込み、母親から家庭料理の手ほどきを受けた。「ひじきや切干し大根の煮付け、きんぴらごぼうなど、そうざいのイロハを教わりました。新鮮な魚を豪快な刺身で食べてもらうことを中心に、煮付けなら煮付け、蒸すなら蒸す、焼くなら焼くというストレートな料理で、漁師の家での食事のような、飾りっ気のない食べ方をしてもらったらおもしろいのではないか、お客様もそれを求めているのではないか、と思っています」と相原氏は述べる。また、食堂で提供する定食類も、その日の仕入れによって毎日内容が変わる。

夜は、刺身とともに酒類を楽しむという利用が多く、2000円以下でさっと立ち寄るお客もいれば、会社の部下を連れて来店し、珍しい魚を“おまかせ”で注文して振る舞う経営者もいる。夜はフードとドリンクの売上比はほぼ半々となっている。

最近は1、2号店では食堂でのイートインがメインになっており、1号店は日商平均70~80万円、2号店は同50~60万円を上げている。3号店は1、2階計45坪70席の規模があり、1階では鮮魚のほか、焼き魚や煮魚の大きな切り身がドーンとのった「魚屋のお弁当」(398円~)、コンビニのおにぎりの1.5倍ほどある「手づくりおにぎり」(各100円)、そうざい各種100円~などのテイクアウト販売にも力を入れている。3号店は現在、鮮魚販売が日商平均10万円、食堂と弁当などの販売で日商70~80万円を上げ、西新宿の3店舗だけで平均月商5000万円を上げる人気店となっている。

同店が鮮魚店と食堂との相乗効果を上げながら、リピーターを増やしている要因は、以下のようになるだろう。

1鮮魚店との併設で、魚介類の新鮮さと高原価でお値打ち感を訴求している。
2刺身をメインに、シンプルな魚料理、各種そうざいで、漁師の家の普段の食事のようなボリューム感ある定食類を提供。
3その日の仕入れによってメニューが変わり、毎日来ても飽きないように工夫している。

「まだまだ未完成なので、お客様の安心安全に留意し、信頼を得ながら、もっと深く掘り下げて仕事をしていきたい」と語る相原氏。自社での店舗展開に加え、来年秋には私鉄から声がかかった再開発プロジェクトとして、鮮魚と野菜の販売、食堂、すしを組み合わせた、500坪ほどの大型店の出店を実現させる予定である。

住所
東京都新宿区西新宿7-12-3
営業時間
11:00~23:30(L.O. 23:00)
定休日
無休