2014/06/30 繁盛の黄金律

「コア商品」と同じ領域に、「浮気商品」を散りばめる

普通の人は同じ店に3回行くと飽きる‐強い商品を持っていても、人は3回同じ店を訪れると、利用頻度は落ちるものです。客を手離さないためには、行くたびに新しい商品が存在することが大事です。

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Vol.34

普通の人は同じ店に3回行くと飽きる

「繁盛店への道」はただひとつ。1日、1日、確実にお客の数を増やしていくことです。これだけです。サラッと言ってしまいましたが、これがまた至難の業なのですね。客数アップを実現するためには、強力なコア(核)商品を持っていて、その商品をうまずたゆまず磨き上げていかなくてはなりません。

しかし、それだけでは繁盛店にはなりません。どんな強いコア商品を持っていても、毎日食べに来てくれるお客はいません。それぞれの商品の中身(価格も含む)によって違いますが、一定の頻度で利用されるものです。そして通常、人は3回同じ店を訪れると、利用頻度はガタッと落ちるものです。「飽き」が原因ですね。すぐれた商品ほど飽きられやすいという言い方もできます。

繁盛店になるためには、トライアル(初来店)の客を、一定の頻度で来店するリピーターにすること。そして、リピーターになったお客を手離さないこと、です。そのためには、行くたびに新しい商品(企画やキャンペーンなどを含む)が存在することが大事です。絶えず刺激を与えていないと、来店客をリピーターにすることはできないのです。強い商品があるだけでは、なかなかお客を引き留めることはできません。

その中心になるのは、新メニューの導入なのですが、メニュー開発を熱心にやり過ぎると、コア商品の焦点がぼやけ、専門性が失われてしまいます。新メニューというと、コア商品とは別のジャンルの開発を考えがちですが、これが危険なのです。

例えば、あなたの店が、パンケーキ専門店だったとします。その場合、新商品にサンドイッチはどうか、スパゲティはどうか、ハンバーガーはどうか、と守備範囲を横に拡げていきがちですが、そうでななくて、パンケーキというジャンルの中で新しいメニューを次々に出していくべきです。パンケーキで、実験メニュー、トレンドメニュー、季節限定メニューを開発するのです。こうすると、店の専門性が失われることはありません。

「牛のヨダレ型」の店がいちばん強い

もっとも売れるパンケーキ(看板メニュー)の周辺を、それらの新メニューで固めるのです。そして、その周辺メニューは、次から次へと変えていきます。そうなると、お客はたまには新メニューを注文してみようか、と浮気心を出します。刺激を受けるのですね。そして、新メニューを注文してトライしたお客は、再びコア商品のパンケーキに戻ります。

コア商品である看板メニューには、浮気したお客を引き戻す力がなければなりません。この引き戻す力が、来店頻度を高める役割を果たします。周辺メニューは、一般的には季節の素材などを使うことによって開発されるもので、コア商品よりも少し高めの価格設定をしたほうが有効です。この高めの設定が、コア商品に引き戻す力の要因にもなります。

同じジャンルでの周辺メニュー開発には、もうひとつ、「新しい時間帯への挑戦」という役割があります。パンケーキでいうと、喫茶メニューと位置付けられていたものを、食事メニューにならないかという視点で新商品の開発を行うのです。コア商品がスナック(軽食)であったならば、“重食”化ですね。朝食ならばどんなメニューになるか、ランチならばどうか、ディナー商品にはならないか、こういう「時間」という切り口で商品開発を進めていくと、今までまったく売れなかった時間帯にお客が入るようになることもあります。

もっとも、これはコア商品の性格にもよります。ハンバーガーならば、食事にもスナックにもなりますが、ハンバーグとなると、スナック化は難しいですね。あくまでも食事です。特性を無視していたずらに新しい時間帯メニューを開発すると、コア商品の力が弱ってしまうことがありますから、開発できるメニューとできないメニューがあることを、頭に叩き込んでおくことが必要です。商品の特性によっては、時間帯メニューを開発することで、1日中ダラダラと「牛のヨダレ」のようにお客が来店してくれるものです。

飲食業のつらいところは、売れる時間が決まっているという点ですね。そのために、客数も決まってしまいます。この壁を突破するには、新しい時間帯を開発することがぜひとも必要です。そして、飲食業を経験した人ならば誰でも実感していることは、お客が途切れない「牛のヨダレ型」の店がいちばん強いということです。

「お客が途切れない店になれないものか」。このことを商品開発の肝にしておくと、意外な発想が生まれます。ただし、繰り返しますが、商品特性を無視して無理にメニュー開発を進めると、看板商品が台無しになってしまい、店のブランドが急降下してしまいます。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報はご自身でご確認ください。

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