2014/07/11 繁盛の法則

手間ひまかけて手づくりし、進化を続けるカレー専門店とは

毎日食べられるカレーの「ホットスプーン 五反田店」(東京・五反田)に学ぶ‐牛すじカレーとチキンカレーをベースに具材や季節メニューで変化をつけ、毎日でも通えるカレー専門店として常連客をつかむ。

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ホットスプーン 五反田店

五反田駅から徒歩2分ほどの立地。「牛すじ煮込みカレー」という看板と大きなスプーンのオブジェが目印。

Key Point

  1. 欧風とインド風の2本柱を用意
  2. 毎日食べられるように手頃な価格で提供
  3. 季節商品や新商品を随時開発

2種のベースのカレーを用意し、辛さやライスの量は好みで調整

手間ひまをかけて仕込む牛すじカレーとチキンカレーをベースに、具材や季節メニューで変化をつけている東京・五反田の「ホットスプーン」は、毎日でも立ち寄れるカレー専門店として、多くの常連客をつかんでいる。五反田駅から徒歩2分ほどの繁華街にある10坪14席の小ぢんまりした店舗で、周辺のサラリーマン層が月に数回来店するケースが多い。

「当店がオープンした2004年当時は、本格指向のカレー専門店というと、1000円以上の商品を提供している店舗が多かったのです。そこで、毎日でも食べに来ていただけるカレー店にしたいと、欧風タイプの牛すじ煮込みカレーと、インド風のチキンカレーの2本柱を用意し、1000円以下の手頃な価格で提供できる店を考えました」と、飯嶋玄考店長は語る。辛さは中辛を基本に、マイルドから超激辛まで5段階で選べるようにし、辛さの調整は無料で対応している。ライスの量も、並盛270gを基準に、中盛340g、大盛410gは追加料金なしで選べ、少なめの200gは30円引きになる。

また、最後まで熱々のカレーを食べてもらいたいと、1人前ずつ保温性の高い土鍋で、グツグツと煮立った状態で提供するスタイルも特徴である。カレーは冷めてくると口当たりが重い印象になるので、おいしさを保つという意味合いがある。とはいえ、中には急いでいたり、猫舌で熱い食べものは苦手というお客もいるため、希望に応じて皿盛りでも提供する。

創業前に、ベースのカレーの作り方を確立するまでには、約半年間かけて試行錯誤を繰り返した。「牛すじ煮込みカレー」(820円)は、牛肉、鶏ガラ、野菜類を6時間煮て取ったブイヨン、アメ色になるまで炒めた玉ネギ、12種のスパイスと2種のカレー粉に小麦粉を加え、バターで7時間炒めたルゥ、野菜類を加えてトロトロになるまで約8時間煮た牛すじ肉を合わせてさらに煮込み、最低1日寝かせてから提供する。当時は牛すじ肉をカレーに使う店は珍しかったが、価格を抑えて提供するために、牛のバラ肉、スネ肉、モモ肉などいろいろな部位を試した結果、柔らかくなるまで煮込むのに時間はかかるが、安定的に手に入る牛すじ肉を使用することにした。当初は牛すじカレーは数量限定で販売し、一般的なビーフカレーも同じ価格で提供していたが、肉の量が多く、野菜類のうま味も加わる牛すじカレーが好評だったため、終日提供できる体制を整え、メイン商品として看板にも掲げるようになった。

もうひとつの柱の「インド風チキンカレー」(820円)は、下味をつけた鶏肉をフライパンで炒めて焼き色をつけ、寸胴に移して14種類のスパイスを加えて煮込む。炒めた玉ネギとトマトを加えてさらに煮込み、仕上げにバターと生クリーム、マサラスパイスを加える。小麦粉を使わないため、サラッとしていながら、野菜類の甘味とバターや生クリームのコクが加わっている。

季節商品の「牛すじ夏野菜カレー」(928円)と、定番の「インド風チキン野菜カレー」(928円)。カレーは土鍋で熱々に加熱して提供する。辛さは5段階、ライスの量は4段階で調節可能。

2号店と連携しながら、継続的に商品を進化させる

この五反田店のほか、2012年3月に、東京・丸の内の丸の内永楽ビルディングの商業ゾーン「iiyo!!(イーヨ!!)」内に、32席の丸の内店を出店。周辺の客層に合わせ、商品構成やスパイスの調合などを若干変えているほか、夜はバル的な利用にも対応するため、アルコール類や一品料理も揃えている。丸の内店で好評な商品を五反田店で採り入れることもあり、特にインド風チキンカレーは、以前はヨーグルトを加えて酸味を生かしていたが、丸の内店での前述のような作り方が好評を得ているため、五反田店でも切り替えることにした。ほか、季節の野菜を使った野菜カレーなど、期間限定商品も随時登場させる。そのため、五反田店で創業時からあるアイテムは牛すじ煮込みカレーくらいで、お客の反応を見ながら徐々に商品を進化させている。

同店が手作りカレー専門店として、リピーターに10年以上支持されている要因は、以下のようになるだろう。

1欧風の牛すじカレー、インド風のチキンカレーの2本柱を用意し、辛さの調整は5段階で対応している。
2毎日でも食べられるように、手頃な価格で提供している。
3季節商品や新商品の開発などにより、商品を随時進化させている。

カジュアルなカレー専門店ではあるが、従業員の笑顔の接客や、ていねいな商品説明も、店内の温かい雰囲気づくりに貢献している。

「当店のコンセプトは、空腹のお客さまを笑顔で迎え、温かなおもてなしをし、おいしくて熱々のカレーを食べていただくことです。お客さまの満足が、私たちの存在理由であり、当店の理念です。ですからスタッフには、必ず笑顔で接客し、しっかりあいさつしてくださいと伝え、実践してもらっています」という飯嶋店長。今後も機会があれば店舗展開をしていく考えだが、好機を逃さずに実現できるよう、人材育成にも日々意識して取り組んでいる。

住所
東京都品川区東五反田1-14-8 KCビル1F
TEL
03-3441-1552
営業時間
11:00~23:00
定休日
無休