2014/08/13 繁盛の法則

そば粉を使ったおしゃれな創作料理を提供する専門店とは

そば粉をテーマとする「蕎麦粉食堂Buckwheat」(神奈川・藤沢)に学ぶ‐料理にそば粉を使い、そば粉の手打ち生麺のピッツォッケリやそば粉のクレープのガレットを柱に創作料理を提供し、繁盛している。

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蕎麦粉食堂Buckwheat

繁華街の外れにあるビルの2階、19坪30席の開放的な雰囲気の店舗。江ノ電の高架の真向かいにある

Key Point

  1. そば粉というテーマを明確に設定
  2. パスタとガレットの2本柱を導入
  3. 多様な人数、利用動機に対応

北イタリアの郷土料理をヒントにコンセプトを考察

ほとんどの料理にそば粉を使っている、その名も「蕎麦粉食堂 Buckwheat(バックウィート)」は、幅広い年齢層の女性客から支持されている創作料理店である。藤沢駅から徒歩5分ほど、繁華街の外れにあるビルの2階という立地ながら、店内は木を多用したナチュラルな造作で、通り側は窓を大きく取り、開放感を感じさせる。店舗規模は19坪30席で、カウンター6席、ボックス席4席、テーブル席20席を設け、多様な人数に対応できるように工夫している。通りの向かい側には江ノ電の高架が走っており、ゴトゴトと電車が行き交う様子を眺められるのも一興だ。

オープンは2012年7月20日で、バーやイタリアンなどに勤務してきた山本純也氏が独立開業した店舗である。山本氏は1978年東京生まれで、独立前に8年ほど藤沢・片瀬海岸のカジュアルイタリアンの店長を務めていたことから、藤沢での独立に踏み切った。

イタリアといえば多彩なパスタの本場だが、北イタリアの郷土料理のひとつに、ピッツォッケリというそば粉のパスタがあると知った山本氏は、洋風のそば店という業態ができるのではないかと発想した。当初は、日本そばの洋風バージョンを考えたが、日本そばと洋風のそばパスタでは、茹で上げるときに前者は塩を入れない、後者は入れるという違いがあり、茹で麺機を2台入れるのは難しいと判断した。そこで、麺メニューは洋風のそばパスタに絞り、手打ち生麺のピッツォッケリのほか、山形産のそば粉入りリングイネの乾麺を使用することにした。

さらに、そば粉のクレープのガレットも、もうひとつの柱としている。ガレットは元々はフランス料理だが、同店ではそば粉に小麦粉を加えた独自の配合で、ほんのりとフルーティな甘味のある生地とし、中にトマトソースを挟んでみたりと、独自のアレンジを加えている。ほか、「自家製そばの実入り豆富」(500円)、「そばがきをトマトソースで」(500円)など、和をベースにした前菜や、「そばの実入りラタトゥイユ」(500円)、「ムール貝とそばの実の白ワイン蒸し」(900円)、「そば茶のブランマンジェ」(450円)など、そばの実やダッタンそば茶を使った料理も揃えている。また、時代の流れで健康志向が強くなっているため、地元産の新鮮な湘南野菜をふんだんに使い、ヘルシーさを訴求している。

新鮮な野菜をたっぷり使った「湘南野菜のガレット」(手前 1,000円)、そば粉を使った手打ちパスタの「自家製サルシッチャと旬野菜のピッツォッケリ」(奥左 1,200円)、そば粉入りの自家製ドレッシングをかけた「グリーンサラダ」(奥右 写真はランチセットのサイズ)

手間ひまかけた創作料理が主婦層にも好評

ランチタイムは、「サラダランチ」(850円)、「ガレットランチ」(900円.)、リングイネを使った「そば粉入りパスタランチ」(1100円~)を提供しており、いずれのセットにも自家製のそば粉入りフォカッチャ、スープ、そば粉入りのオリジナルドレッシングをかけたサラダ、ドリンクがつく。ドリンクは、コーヒー、紅茶、ジュース類のほか、急須で提供するダッタンそば茶も選べ、若年層にも好評を得ている。昼の客単価は1200円になる。

夜は、前菜、ガレット、パスタ、魚料理、肉料理、デザートを揃え、それらのほとんどが、そば粉やそばの実などを使ったオリジナル料理である。「料理には、できるだけ手間ひまをかけています。当店のお客様には主婦層が多いので、簡単な料理でしたら毎日家庭料理をつくっている主婦の方たちにかなわないですから」と山本氏。

夜の客単価は3500~4000円で推移しており、フードとドリンクの売上比は7対3。ドリンクでは、30~40種揃えたワインをはじめ、ビール、焼酎、日本酒、カクテルなどもラインナップしているが、店名を「食堂」としているせいか、夜も食事目的のお客が少なくない。月商目標は400万円に置く。

同店がそば粉をテーマとする創作料理で、主に女性客から定評を得ている要因は、以下のようになるだろう。

1そば粉という明確なテーマを設定し、そば粉、そばの実、そば茶を駆使した創作料理を開発している。
2そば粉入りパスタとガレットという、2本柱を設けている。
31人でもグループでも、食事目的でもアルコール類とともにでも、多様な利用動機に対応できる商品構成、客席配置としている。

現状では、そば店と間違えて入店してくるケース以外には男性同士の来店は少なく、ビジネスランチとしての利用も多くはない。また、江ノ電の車窓から見て、あるいはインターネットで見つけて訪れるお客が多いという傾向もある。独立までは主にサービスを担当してきた山本氏は、さりげなくお客に語りかけながら、来店動機などを把握し、顧客情報の収集に努めている。

「一生続けていける店にしていきたいと考えています。常に新しい要素は取り入れていくのですが、老舗の和食店のように、味のある店をつくっていきたいです。今はまだ、そのための基本をつくっている最中です」と、山本氏は謙虚に語っている。