2014/12/04 繁盛の法則

低価格店ながら自家製粉、十割そばにこだわる専門店とは

ビジネスマンに支持される「蕎麦たかね」(東京・茅場町)に学ぶ-サラリーマン層に人気のある低価格そば店。最大16名しか入れない小規模店だが、ランチタイムで1日平均約200人、夜は約50人が来店する。

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蕎麦たかね

10坪弱、最大16席の店舗に、ランチタイムだけで200人が来店。うち男性客が9割を占める

Key Point

  1. 自家製粉の十割そばを提供
  2. 1人前に生麺200gとボリュームを訴求
  3. 人気商品のかき揚げは揚げたてを徹底

16席の店にランチだけで1日平均200人を誘引

東京証券取引所のすぐ近くにある「蕎麦たかね」は、証券マンを含むサラリーマン層に人気のある低価格そば店である。10坪弱の店内に、椅子席13席、立ち食いスペースを入れても最大16人が入れる程度の小規模店だが、ランチタイムだけで1日平均約200人、夜は約50人が来店している。

「ざるそば」「かけそば」(各420円)という低価格でありながら、店頭に置かれた電動石臼で自家製粉し、押し出し式製麺機を使ってそば粉100%の十割そばを提供している。しかも、普通盛りで生麺200g(茹で上がり280~300g)、100円増しの大盛りは生麺400g(茹で上がり560~600g)とボリュームがある。約9割のお客が普通盛りをオーダーしており、量の面でも満足度が高いことが伺える。また、冷たいそば用は細麺、温かいそばとテイクアウト用には太麺と使い分けているが、お客の要望があれば柔軟に対応している。

出汁は毎朝7時から店内で取り、温かいそば用はカツオ節とサバ節で、冷たいそば用はカツオ節、サバ節、ソウダガツオ節で取る。返しは、同店専用品を委託生産してもらっている。

人気メニューは、揚げたてのかき揚げを合わせた「天ぷらそば」「天ざるそば」(各600円)である。かき揚げは、タマネギ、ニンジン、ピーマン、小エビ、イカゲソを入れ、ウエイティングが続く時間帯以外はツーオーダーから揚げる。1個約160gで、器からはみ出さんばかりの大きさがある。揚げ方にもこだわり、大豆白絞油を使って、まず160℃の天ぷら鍋で約1分揚げ、次に180℃のフライヤーで片面20秒、反対側を20秒揚げる。低温と高温の油で2度揚げすることにより、油切れをよくし、表面をカリッとさせている。また、フライヤーの油は頻繁に継ぎ足し、天ぷら鍋の油は毎日交換する。天ぷらはこのかき揚げ1種で、1日平均約200個が出ている。

また、かき揚げの下味や、温かいそば用のつゆには、石川・能登産の伝統製法による海水塩「珠洲(すず)の塩」を使用している。ミネラル分を豊富に含むまろやかな塩で、奥深い味わいを加えている。

ワサビ、ネギ、揚げ玉、ワカメ、大根おろしなどの薬味はセルフサービス式で、ひとつまみずつ取ってもらう〝ルール.としている。さらに、生卵または温泉卵も1人1個を無料でサービスしている。特に温かいそばは、この薬味によって好みの味にアレンジすることができるのも、魅力のひとつとなっている。

人気商品の「天ざるそば」(600円)。カラッと揚げたてのかき揚げは1人前160gで、ザルからはみ出さんばかりの大きさ。自家製粉による十割そばも、普通盛りで生麺200gを使用し、ボリューム感がある。

店頭の電動石臼で1日40㎏を製粉

オープンは2011年4月25日で、当初は「蕎麦まえだ」の店名だったが、同年8月1日より蕎麦たかねとして営業している。現在は1店のみの経営だが、今後は同店のシステムの構築を図り、FC展開を含む多店舗化を検討している。

現在、店長を務める木村善和氏は、2年前に同店に立ち寄った際に、「どうしてこんなに安く提供できるのだろう?」と、その仕組みに驚き、関心を持ったのが入店のきっかけだった。当時は天ぷらそば、天ざるそばともに480円で提供していたため、価格面のインパクトがより強かった。しかしながら、かき揚げに使う油や小麦粉の値上げが相次いだ際にやむなく580円に改定し、2014年4月の消費税増税の際に600円にした。それでも、常連客には味やボリュームといった面を加味して、十分にお値打ち感を感じさせている。客単価は昼580円、夜800円。夜は、2014年10月上旬から「晩酌セット」(980円)の販売を開始した。酒類、酒肴1品、ざるそばまたはかけそばのセットで、徐々にオーダーが増えてきている。

同店がビジネス立地の低価格そば店として、サラリーマンを惹きつけている要因は、以下のようになるだろう。

1自家製粉の十割そばで、そば専門店ならではの品質を追求している。
2そば1人前に生麺200gを使用し、ボリューム感を出している。
3天ぷらは大ぶりのかき揚げ1品に絞り、揚げたてを提供している。

手頃な価格を実現するために、丸ヌキ(そばの実の殻を取った状態のもの)で仕入れるそばは中国産を主体に、北米産をブレンドしている。1日約40㎏を製粉し、ほとんどはその日のうちに使い切る。製粉や、毎日加水率を加減しながらの生地づくりは、縁あって知り合った、他店を定年退職したそば職人に担当してもらっている。

「中国は広いので、そばの品質も産地によってかなり違いがあります。以前は麺がバラバラになってしまうこともありましたが、今は製粉方法や加水率の調整で安定した商品が出せるようになっています」(木村氏)。

今後の多店舗展開においては、製粉や生地づくりのノウハウをいかに確立させていくかがひとつの課題となっている。

住所
東京都中央区日本橋茅場町1-6-16 KKビル1F
TEL 03-3639-1007
営業時間
10:30~15:00(L.O.)、17:00~22:00(L.O.21:30)、土曜日10:30~14:00(L.O.)
定休日
日曜日、祝日