2015/01/08 繁盛の法則

熟成肉とワインを気軽に楽しめるビストロとは

店内熟成に取り組む「Tsui-teru!」(東京・中野) に学ぶ-店内で2~8週間ドライエイジングした熟成肉をメインとするビストロ「Tsui-teru!」は、約8割にあたる予約席がほぼ連日埋まるほど繁盛している。

URLコピー

Tsui-teru!

ビルの2階にある店舗は57坪110席の規模。約8割の客席で予約を受けるが、連日埋まるほどの盛況ぶりを見せている

Key Point

  1. 店内で熟成させた肉をていねいに調理
  2. 多彩なビストロ料理を提供
  3. 樽生ワインなど気軽に楽しめるワインが充実

建築士から飲食業に転身。4店目でビストロに初挑戦

最近の食のトレンドとして肉料理が注目される中、店内で2~8週間ドライエイジングした熟成肉をメインとするビストロ「Tsui-teru!」(以下、ツイテル!)は、全席のうち約8割にあたる予約席がほぼ連日埋まるほどの繁盛ぶりを見せている。東京・中野駅北口の飲食店街にある同店は、57坪110席の規模がある。オープンは2011年10月で、熟成肉の認知度が上がるにつれ、客数を増やしている。

店内に入ると、まず3台の特製熟成庫にびっしり並ぶ肉の塊に圧倒される。「熟成肉を提供しているレストランでも、他所で熟成された肉を仕入れているお店が多いですが、当店では熟成も調理工程のひとつと考えています」と、経営母体であるガオス株式会社の鈴木潤一代表取締役は語る。鈴木氏は1967年東京・板橋区生まれで、元は建築士として10年ほどゼネコンで働いた経歴を持つ。人が集う場が好きで、飲食店やホテルなどの施設の設計をしたいと建築士の道に進んだ鈴木氏だが、次第に自身で飲食店を経営したいと思うようになった。素人からのスタートになるので、失敗を回避し、ノウハウを身に付けるために、最初はFCに加盟しようと決め、2005年10月に「ぢどり屋 中野店」を出店した。物件探しの過程で中野駅北口の人情味のある商店街に着目し、出店を機に自身も中野に引っ越してきた。以来、中野を拠点にビジネスを展開している。2007年11月に「中野B級酒場」(現在は「ツイテル!和」)、2009年3月にハヤシライスやオムライスを主力とする「ハヤシ屋中野荘」を、いずれも徒歩数分圏内に出店している。

12~20坪の小規模店で基盤を築いてきたが、倍以上の広さのある現物件が空くと聞き、いずれやってみたいと考えていたビストロに挑戦することにした。休みの日には奥さんとビストロ巡りをしてきた鈴木氏は、その経験をもとに、どのような商品で特徴を出そうかと、インターネットを使ってリサーチした。そこで目にしたのが、熟成肉というキーワードだった。

「初めて聞く言葉でしたが、魅力を感じ、どんな肉なのかを調べてみました。まず、田園調布の熟成肉専門の精肉店『中勢以(なかせい)』さんで肉を買い、自宅で焼いて食べたところ、特に豚の熟成肉の香りや脂の甘みが衝撃的だったのです。さらに、大阪・住吉区の熟成肉の焼肉店『又三郎』さんに食べに行き、特に土佐あかうしの赤身の熟成肉に衝撃を受けました。そこで、ぜひ熟成肉をやりたいと考え、肉を熟成させるための温度、湿度、風の管理や、カビ付けについても、又三郎さんで多くのヒントをいただきました」と鈴木氏は説明する。また熟成肉をメインに、ビストロらしい料理を提供したいと考えていたとき、何度か食事に行ったことのある中野のビストロが、東日本大震災の影響を受け閉店するという話を聞いた。そこですぐにシェフに連絡し、「一緒にやらないか」と声をかけたところ、「ぜひやりたい」と快諾してくれた。「物件が見つかり、熟成肉と出会い、シェフもすぐに決まったので、約半年でオープンできました。これはついているなと思い、『ツイテル!』という店名にしたのです」と鈴木氏は笑顔で語る。

手前が「熟成20日 US産 アンガス牛肩ロース炭焼き《200g》」(1,580円)、2列目左が人気の温菜「牛スジの赤ワイン煮込み 八丁味噌仕立て」(540円)、右が冷菜の「名物! 田舎風 豚肉のパテ」(580円)、奥が「熟成20日群馬県 せせらぎポーク ロース炭焼き《 200g》」(1,480円)、※価格は税抜き

注文ごとに約40分かけて焼き、肉の旨みをじっくり引き出す

熟成肉は、肉自体の味わいを最大限に引き出すため、オーダーごとに約40分かけて焼く。表面のカビはトリミングし、炭火で表面をこんがりと焼いた後、70~80度の保温庫でじっくりと中まで温度を上げていく。肉汁が流出しないように休ませてからカットして提供するため、熱々ではないが、ジューシーで柔らかく、香り、甘み、旨みが際立っている。肉が焼き上がるまでの間に、冷菜や温菜約30品目(380~980円)を楽しむという利用が多い。

ドリンクの主力のワインは約100種をそろえ、ボトル価格は2000~3000円台を中心としている。また、中はステンレス製の樽から注ぐイタリア産の樽生ワインは、スパークリング、白、赤の3種があり、グラス450円~と、手頃な価格で提供している。客単価は、当初は3500円を想定したが、現在は4000円となっている。

同店が熟成肉とワインのビストロとして支持されている要因は、以下のようになるだろう。

1店内でドライエイジングした熟成肉をていねいに調理して提供している。
2ベテランシェフが開発した多彩なビストロ料理をそろえている。
3樽生ワインを始め、気軽に楽しめるワインの品ぞろえを充実させている。

同店では現在、4台目の大型熟成庫の導入を準備しており、肉の種類も徐々に増やしていく計画である。また2014年5月には、箸で食べられる熟成肉料理と日本酒を合わせた『ツイテル!和』をオープンし、こちらも1週間前には予約で埋まるほど好調に推移している。今後も熟成肉や既存業態をさらに進化させ、着実な展開を目指していく。

住所
東京都中野区中野5-36-5 ヴィラAK2階
TEL 03-5345-7215
営業時間
17:00~24:00(フードL.O. 23:00)、土日祝16:00~
定休日
不定休