2015/02/05 繁盛の法則

すじカレーで独自性を出し地域で愛される専門店とは

8席がフル回転する「ブラウニー」(東京・末広町) に学ぶ-「牛すじカレーごはん」、「牛すじハヤシライス」を看板商品とする「ブラウニー」は、8席という小さな店だが、地元で愛される個性派店である。

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ブラウニー

神田須田町から2001年に移転。紆余曲折を経て牛すじカレー、牛すじハヤシの専門店に転換

Key Point

  1. 国産の良質な牛スジをていねいに調理
  2. トッピングやライスでも差別化
  3. 立地や客層に合わせて軌道修正

10年続けたケーキ店から移転を機に業態を転換

「牛すじカレーごはん」(750円)、「牛すじハヤシライス」(750円)を看板商品とする「ブラウニー」は、7.5坪8席という小体でありながら、地元で愛される個性派店である。地下鉄銀座線末広町駅から徒歩1~2分、蔵前橋通り沿いの繁華街に、一見地味な外観でたたずんでいる。

牛スジは、国産牛と和牛のミックスで、すぐ近くにある有名精肉店の石橋牛肉店から仕入れている。毎朝圧力鍋で90分かけて充分柔らかくし、うまみのよく出たスープとともに、カレーとハヤシに仕上げている。

合わせるライスにもこだわり、もちもちしたタイプよりパラパラしたタイプのほうが同店のメニューには合うことから、新潟産の「こしいぶき」を産地直送で仕入れ、水加減を少なめにして、やや硬めに炊き上げている。

店名のブラウニーとは、チョコレート入りの生地を平たく焼き上げたクッキーのような洋菓子の名前で、店主の久芳正昭氏は、以前は東京・神田須田町でケーキ店を10年ほど経営していた。ブラウニーは当時の人気商品のひとつであり、ケーキのほか、時流に合わせてデリ(惣菜)なども扱い、女性客を中心に支持されていた。しかし、古くて小さいビルが密集する界隈にあったため、湾岸地区に次々と建設された新築ビルに移転する企業が続出した。ブラウニーも突然売上げが半減するという、周辺環境の急激な変化に見舞われ、久芳氏は移転を決意した。物件を探している中で紹介されたのが、以前は弁当店だった現物件だった。

店頭に「DELI BROWNIE」と書かれている通り、2001年の移転当初はサンドイッチとデリを主力商品としていた。店内奥に5席のイートイン席を設け、入口近くにはショーケースを置いて、テイクアウト販売に力を入れる考えだった。ところが、以前の店舗と比べ、現店舗の周辺は男女比がほぼ逆で、デリやサンドイッチへの需要は少ないことがわかった。再度移転先を探すわけにもいかず、久芳氏は現在地周辺の客層に合う商品、業態を模索し、軌道修正を図っていった。

「ハーフ&ハーフのオムごはん」(1,000円)は、牛すじカレー(左)と牛すじハヤシを1度に味わえる人気メニュー。「ハーフ&ハーフ」(900円)の白飯をオムライス風にしたもので、トロリとした玉子のコクがカレーにもハヤシにも合う

牛スジに加え、トッピング、ライスでも差別化を図る

久芳氏が他店と差別化できる素材として着目したのが、牛スジだった。輸入牛肉ではなく、おいしい国産牛を使ったビーフカレーを手ごろな価格で販売したいと考え、いろいろと探した中で、唯一使えそうな部位がスジ肉だった。柔らかくするには時間がかかるが、独特のプルプルした食感を持ち、牛肉ならではの風味を楽しめるため、関西ではおでんや煮込み料理によく使われている。また、高タンパク・低脂肪で、コラーゲンをたっぷり含むのも特徴である。久芳氏は、以前、デリで手がけていたイタリアンの煮込み料理の調理法を基に、やや辛口で、クセになる味わいのカレーに仕上げている。

また、当初はカレーとハヤシの注文比率は9対1だったが、徐々にハヤシのファンも増え、今は7対3になっている。

「最初にハヤシがあまり出なかったのは、印象に残りにくかったのだと思います。そこでもっとおいしくしようと改良していったところ、大分出るようになりました」と久芳氏は笑顔を見せる。ハヤシライスというと、本格的な洋食店ではじっくり時間をかけてつくるデミグラスソースをベースにするが、同店の手狭な厨房では難しいため、久芳氏は工夫を重ねて独自の“ハヤシソース”を開発した。カレーとハヤシの両方を食べたいというお客も増え、「ハーフ&ハーフ」(900円)もよく出ている。

また、大衆的なカレー専門店では、バリエーションを増やすために、コロッケ、トンカツ、鶏の唐揚げなど、揚げものをトッピングに使う店が多いが、久芳氏は「他店の真似は嫌い」と、揚げものではなく「青菜炒めのせ」「オムチーズのせ」などを用意している。さらにはごはんにも変化をつけて「野菜ピラフ」「ガーリックピラフ」などを選べるようにした。牛スジを使ったアイテムでは、もう1品、ゴボウ、ニンジン、タマネギ、昆布出汁を使った「牛すじ煮込みごはん」(750円)がある。現在の客単価は900円で、男性客が約9割を占めている。

同店が牛すじカレー、牛すじハヤシで支持されている要因は、以下のようになるだろう。

1国産牛、和牛の良質な牛スジをていねいに仕込み、独自の商品に仕上げている。
2ひと工夫したトッピングやライスのバリエーションでも差別化している。
3立地や客層に合わせて軌道修正を重ねている。

同年代の知人友人が悠々自適の“第二の人生”に入っていく中、久芳氏は生涯現役を貫く覚悟で、「ある日突然、仕事をしながらバタッと倒れ、そのまま逝きたいね」と冗談交じりに語る。「次はより大きな店舗で、さらに専門化した業態に挑戦したい」と、すでに準備を開始している。

住所
東京都千代田区外神田3-7-9 サンビュー外神田1F
TEL 03-3252-1165
営業時間
12:00~21:00、土祝~19:00(15:00~18:00の間で2時間休憩)
定休日
日曜日