A1肉骨茶
Key Point
- 独自の調合によるバクテーを商品化
- バリエーションやセットを工夫
- インターネットなどで認知度を高める
スパイスメーカーと出会い、日本での出店が実現
「肉骨茶」と書いてバクテーと読む。豚の骨付きバラ肉(スペアリブ)を薬膳スープでとろとろに柔らかく煮込み、ご飯とともに食べる、マレーシアでは非常にポピュラーな料理である。このバクテーを日本に紹介し、普及させていこうと意気込む「A1肉骨茶(エーワンバクテー)」が、東京・十条に2014年2月4日にオープンした。
経営元は、登記上は2013年設立のCharin Porin(チャリンポリン)株式会社(大塚晋社長)だが、マレーシアの大手スパイスメーカーのA1(エーワン)をはじめ、マレーシア系の企業数社が出資して運営している。通販のバイヤーとして、マレーシアを訪れる機会が多い大塚氏は、「日本でバクテーの店を出したい」という思いを8年ほど持ち続けていた。日本のラーメン店のスープ作りと同様に、マレーシアのバクテー店は薬膳スープ用のスパイスの調合に独自の工夫を凝らしており、いわば各店の企業秘密となっている。そこに着目したA1社では、それぞれのバクテー店向けにスパイスを調合して販売することを初めて手がけ、市販用も含め、スパイス市場でのシェアを拡大してきた。そのA1社と大塚氏が出会い、日本でのバクテー店の展開に向け、A1社が出資するとともに、日本の薬事法に抵触しないように調合したスパイスを供給してくれることになった。そこで、JR十条駅からほど近く、たまたま空いていた1、2階計30坪の現物件を使い、バクテー専門店を出店した。
イギリス植民地下でスタミナ料理として誕生
マレーシアでのバクテーの誕生は、19世紀のイギリス植民地時代に遡る。首都クアラルンプール近くの港町クランに、中国からの出稼ぎ労働者が集まり、苦力(クーリー)として肉体労働に従事していた。力仕事には安くてスタミナのつく食事が必要と、解体された豚の骨を入手し、大量のニンニクと漢方を加えて栄養たっぷりのスープを作り、それをご飯にかけて食べたのが始まりである。今では街のあちこちにバクテー店があり、特に女性が薬膳粥の感覚で朝食として食べていくケースが多い。
日本でもマレーシアでのスタイルそのままでスタートしたが、当初のスタッフは、大塚氏をはじめ、マレーシアとの関わりはあるものの、飲食店の経営に関してはほとんど素人の集団だった。また、いきなり「肉骨茶」という看板を掲げても、地元の人たちにはどのような料理なのかわからず、敬遠されていた。そこから試行錯誤が始まり、当初はバクテーだけだったメニューに、肉を骨から外してレタスとともにご飯にのせ、手を汚さずに食べられる「バク丼」や、バクテーのスープとスペアリブをカレー仕立てにした「バクカレー」などを加えた。
さらに2014年8月からは、出資者でもある株式会社リドン・ジャパンから、他の飲食店の経営も手がける大澤祐之氏が店舗責任者として入り、オペレーションをはじめ、商品の訴求方法、セットメニューの構成や価格などを一新した。それまでスペアリブ2本入りとしていたオリジナルのバクテーを「小バクテーオリバク」(単品昼530円、夜680円)とし、スペアリブ3本入りの「ガッツバク」(単品昼830円、夜980円)を「人気ナンバーワン」と打ち出した。
バクテーは、昼は深めの磁器の器を使うが、夜は片手付きの土鍋でグツグツ煮えている状態で提供し、付加価値を高め、ゆっくり食べてもらえるようにしている。15時までのランチセットは、150円増しで小鉢、ご飯付きとし、コーヒーは無料で提供する。夜のセットは100円増しで小鉢、ご飯、サラダ、デザート付きになる。これにより「ガッツバク」およびセットのオーダーが増え、客単価は昼1000円、夜1180円に上がってきた。
同時に、インターネットやソーシャルネットワークサービスなどを駆使して認知度を上げる工夫を重ね、まず1度来店してもらい、バクテーを食べてファンになってもらえるように仕掛けていった。特に今年に入ってから効果が上がってきており、遠方からの来客も増え、最多では1日に250人が来店した日もあった。行列ができたことで地元での知名度も上がり、コンスタントな集客につながってきている。
同店がマレーシアの人気料理をメインにした店舗展開の基盤を固めてきた要因は、以下のようになるだろう。
1独自に調合してもらうスパイスを使ったバクテーを商品化している。
2バリエーションメニューやお得感のあるセットを打ち出している。
3インターネットなどを活用し、認知度を高める努力を続けている。
同店での集客増と同時に、百貨店の催事への参加や、期間限定でのフードコート内への出店などで、今後の多店舗化に向けてのトライアルを重ね、新商品の開発にも取り組んでいる。
「今後は、フランチャイズ展開を進めていきたいです」と、大澤氏は次のステップに向けての抱負を語っている。
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