2015/06/04 繁盛の法則

米農家直営店としてスタートし、バラ園でも知られる人気店とは

夢のあるレストランを目指す「栗の里」(神奈川・厚木) に学ぶ-テーキ、ハンバーグを主力商品に、地元で定評を得ているレストラン。100坪100席の店舗と、約200坪の庭園および約50席の屋外席を有する。

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栗の里

1969年創業の地域密着型のレストラン。店前のバラ園は、4月下旬から6月上旬が春バラの最盛期で、その後も11月ごろまでバラの花を楽しめる

Key Point

  1. おいしいご飯の食べ放題で定評を獲得
  2. 約100種500株のバラ園を造成
  3. 客層の変化に合わせ新メニューを開発

栗の木が林立する郊外に1969年に出店

神奈川・厚木市に1969年オープンした「栗の里」は、現在はステーキ、ハンバーグを主力商品に、地元で定評を得ているレストランである。最寄りの小田急電鉄本厚木駅からバスで約25分という立地で、創業当時は周りに栗の木が林立し、当初はバーベキュー専門店としてスタートした。1975年にレストランに転換し、店舗もレンガ作りのドイツの山小屋風の建物に改装した。約300坪の敷地に、100坪100席の店舗と、約200坪の庭園および約50席の屋外席を有する。

経営元は、200年の歴史を誇る米農家の笹生農園で、もとは自家生産している米をおなかいっぱい食べてもらえる飲食店および米の直売所として出店した。現在も、客席近くに白飯および玄米ご飯を保温ジャーに用意し、お客がセルフサービスで何度でもお替りできるようにしている。当時は付近には飲食店が皆無だったことから、同店の独走状態が続いた。また、米を買えるスーパーなども近くになかったため、米の購入のために来店するお客も多く、近年は自家消費に加え、贈答品としての需要も増えている。

笹生農園が市内の三田地区で栽培している米は、神奈川県の奨励品種のキヌヒカリで、農薬は極力使わず、収穫後の殺虫処理である燻蒸も行わない。粒が若干不揃いという面もあるが、精米して1週間以内で提供・販売しており、まさに米農家直営店ならでは新鮮な味わいを特徴とする。

また、1986年に相模大野に2号店を、2003年に厚木市内に3号店をオープンし(2014年に相模原市に移転)、現在は計3店舗となっている。業態、メニュー構成などは各店がそれぞれ工夫しているが、米については共通である。笹生農園の5反、契約農家の15反で生産しているキヌヒカリは、全量が3店舗での提供および販売に回されている。さらに、玄米は体にはいいが、ボソボソして食べにくいため、おいしくて食べやすい玄米を目指し、独自の「みがき玄米」を開発した。水分の吸収を妨げる玄米のヌカの部分にキズをつける特殊な精米方法により、モチモチした食感を実現している。このみがき玄米は、今年3月、厚木市が推奨する食ブランド「あつぎOEC(おいしい)フード」として認定された。

女性客の比率が増え、お客の要望に応じて2年前から販売している「ビーフシチュー」が、最近の人気ナンバーワン商品となっている。ライスとカップコンソメスープがつくセットが1,900円、ポタージュスープ、ライス、またはみがき玄米パン、ドリンクつきのコースが2,800円(価格は税別)

3代目オーナーがバラ園の造成に着手

本店では、2005年に入店した現オーナーの笹生 新氏により、様々な改革が行われてきた。笹生氏は、米農家としては9代目、レストランのオーナーとしては3代目に当たる。以前は、ハンバーグと食べ放題のご飯を目当てに、おいしくて、価格も手頃な昼食として利用するサラリーマンや肉体労働に従事する男性客が多く、客単価も1000円以下の時代が続いた。笹生氏は、「夢のあるレストランにしたい」という想いから、ハンバーグと並ぶメインアイテムとしてステーキに着目し、全国の銘柄牛を食べ歩いて山形の米沢牛を選び、市内初の米沢牛正規取扱店となった。さらに「庭にバラを植えてみたら?」という奥さんの言葉をきっかけに、10鉢ほどのバラを購入してみたものの、すべて枯れてしまったことから、バラへの情熱に火がついた。横浜の著名なバラの園芸家に師事しながら、独自にバラ園作りを進め、約10年かけて、現在では約100種500株の規模になった。バラが有名になるにつれて女性客が増え、今では女性が8割を占めている。

女性客からの要望に応じてビーフシチューなどの新商品を開発したほか、優しい音色のBGMとして2010年には手回しオルガンを導入。オルゴールのようにハンドルを回すとメロディを奏でるドイツ製とオランダ製のオルガンで、毎日14時と19時に演奏するようになった。加えて、風船を使ってキャラクターなどを作るバルーンアートを得意とする宮脇昇一郎・企画広報部長が同時期に入社し、子供連れのお客に喜ばれている。お客の滞在時間も長くなり、現在の客単価は3000円。春バラが見ごろを迎える5月は、開店時間を1時間早めて10時から営業し、1カ月で約3万人が来店している。

同店が46年の年月の中で地元の名所的な存在に成長してきた要因は、以下のようになるだろう。

1米農家直営店ならではのおいしいご飯の食べ放題で定評を得ている。
210年かけて約100種500株の規模に育てたバラにより集客効果を高めている。
3客層の変化に合わせて新メニューの開発を行っている。

無料で開放している同店のバラ園が、厚木市や神奈川県の観光協会からも認められる存在となり、遠来のお客も増えている。「観光の要素と融合させている飲食店は珍しいと思います。バラを見ながら癒される空間であり、ゆったりとくつろげるレストランとして、市内だけではなく、市外・県外からもさらに来店していただけるように努めていきたい」と、宮脇氏は述べている。

住所
神奈川県厚木市山際554-1
TEL 046-245-1341
営業時間
11:00~22:00(L.O.21:30)
定休日
無休