2015/10/30 繁盛の黄金律

失敗しない複数店経営・運営の大原則

1人の店長に複数の店を管理させてはいけない-複数店舗を管理するうえでの原則として、各店には必ず1人の店長がいなければなりません。1人の店長に複数店を任せる経営者がいますが、必ず失敗します。

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Vol.50

1人の店長に複数の店を管理させてはいけない

読者の中には店舗を複数経営している人もいるでしょう。なかには、10店以上持っている、という経営者もいると思います。また、今は1店しか持っていないが、将来は大チェーンに仕立て上げたいと考えている人もいるはずです。

今回は、複数店舗を管理するうえでの原則の話をします。まず、各店には必ず1人の店長がいなければなりません。1人の店長に複数店を任せている経営者がいますが、必ず失敗します。1店の売上が小さすぎて、各店に店長を置けない、というケースもありますが、別に正社員店長である必要はありません。準社員でもアルバイト店長でもいいのです。「俺はこの城(店)を守るんだ」という覚悟を持つ人間であればいいのです。

複数店の管理がなぜ失敗するのかというと、この「城を守る」という覚悟が形成されないのです。戦国時代の出城であっても、それぞれの出城に城主がいました。そして、その城主の一人ひとりが城を枕に討ち死にをする覚悟を持っていました。死守の覚悟を持つ人間がいた、ということです。複数店管理は無管理と同じ、ということを肝に銘じてください。

さて、複数店管理の原則ですが、全店を均等に目配りするのは現実に不可能ですし、また効果も上がりません。例えば、あなたが7店を経営していたとします。週1回1店ずつ行けば均等に回れるな、と考えるのは間違いです。問題がある店には集中的に出向いて行かなければなりません。時には経営者は1店に張り付く必要があります。

問題がない店なんてあるわけがないのですが、各店で「重症度」が違います。問題が軽度の店は後回しにして、“集中治療室”に入れなければならない重症の店の立て直しを最優先することです。まず「重症度」によって優先順位をつけて、“完全治癒”への難度が高い店の治療に専念しなければなりません。優先順位をつけること。それこそが複数店舗管理の原則です。

よい店にはたまに顔を出して店長を褒める

優先順位の付け方は、次の通りです。

  1. QSC(クレンリネス、サービス、クオリティ)のレベルが極度に低い店(本来、開店してはいけない状態の店)
  2. 新人店長の店
  3. 新任店長の店
  4. パート・アルバイトの離職率がハネあがっている店
  5. 客数の落ち込みが激しい店
  6. 人件費、原価など、数字が激変している店
  7. クレームが激増している店
  8. 競合状況、立地が変化している店

①と②は、経営者自らが張り付くべき店です。新人店長だからQSCがメチャクチャになっているということは、しばしばありますから、①と②は連動している、と言ってもいいでしょう。新人店長とは名ばかりで、店長候補者に過ぎません。こういう人を一から教えて込んで一人前の店長にするのが経営者の務めです。そして、この期間に、経営者の思想・理念もしっかり叩き込ませなければなりません。

③の新任店長ですが、これまでとは別の店に赴任した店長ということです。新任店長は店の特徴も、パート・アルバイトの採用状況も、競合状況もわかっていません。その人に、どういう店なのか、問題は何なのか、を教え込まなければなりません。これまでの店とは違うやり方で戦わなければならないことを、教えなければいけないのです。

④と⑤も連動しています。パート・アルバイトの離職率がハネ上がっている店は、必ず客数が減っていきます。店長のマネジメントに問題アリ、ということですが、現店長ではなく前任者に問題があった、ということもあります。前任者がメチャクチャにして去っていった、ということもあるのです。

⑦のクレーム激増も、その原因が前任者にあった、ということもあり得ますから、まずはその解明が必要になります。ここの見極めが大事です。

⑥の数字の変化ですが、「人件費が下がった」「原価が下がった」など、これらも問題なのです。人件費が下がったということは、適切なサービスがなされていない可能性があります。原価率ダウンは、適切なポーションで提供されていなかったり、本来廃棄しなければならないものまで売ってしまっていることが原因で、起こっていることも多いのです。

いっとき利益が妙に出ている店。これは最大限の警戒が必要です。間違っても店長をほめたりしてはいけません。本来の価値が提供されていなかったり、お客の店舗体験を破壊していたりすることが原因で、その後、客数の急落が起こること必定なのですから。

⑧は意外にも経営者が把握できていないことがあります。店長も立地変化や競合店の出現を知らないことがあります。情報をこまめに取って、先手、先手で対策を立てていかなければなりません。立地と競合状況の変化は、場合によっては、閉店しなければならないこともあります。

まんべんなく均等に店を回ることの危うさ、愚かさがわかると思います。業績好調な店にだって問題がないわけではありませんが、当面は放っておいて、たまに出かけて店長をほめてあげればいいのです。「ほめる」。これが人間をいちばん成長させます。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報はご自身でご確認ください。

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