2015/11/11 繁盛の法則

食文化としてお粥に着目し東北の米を使った専門店とは

お粥を軸に終日集客する「オカユスタンド」(神奈川・厚木) に学ぶ-和風出汁を使い、18種類の雑穀を加えて炊き上げるお粥が主力商品。朝から夜まで気軽に立ち寄れる専門店として顧客をつかんでいる。

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オカユスタンド

Key Point

  1. 雑穀入りのヘルシーなお粥を開発
  2. 時間帯ごとのニーズに合ったセットを提供
  3. 酒類を充実させパーティ利用を誘引

前職の出張時に体験した中国のお粥文化がヒントに

和風出汁を使い、18種類の雑穀を加えて炊き上げるお粥を主力商品とする、神奈川・厚木の「オカユスタンド」は、朝7時30分から夜の23時まで、終日気軽に立ち寄れる専門店として着実に顧客をつかんでいる。朝はお粥とサラダ、昼はお粥とサラダと煮もの、ティータイムはせいろ蒸しの饅頭やデザートと、それぞれの時間帯に合わせてセット内容を変えている。夜は、果実酒やカクテルを中心に約100種そろえた酒類と、点心などのサイドメニューを楽しみ、最後にお粥で締める居酒屋的な利用が可能。女子会、忘年会、歓送迎会などのパーティ利用も多い。

オープンは2012年5月11日。経営元の株式会社伍乱は、同店と、2007年6月オープンの「オトコノカッテ」の2店舗を厚木市内で経営している。「オトコノカッテ」は、炭火焼をメインとするおまかせコース料理の店で、焼酎だけで100種類ほどをそろえ、バーとして来店するお客も多い個性的な店舗である。代表取締役の森谷 達(もりや とおる)氏は、大学卒業後は都心の広告関連企業に勤務していたが、30歳のときに飲食業での独立を決意し、出身地に近く、以前からなじみの深かった厚木に「オトコノカッテ」をオープンした。同店が徐々に軌道に乗り、そろそろ2店目をと考え始めていたときに、前職で何度も出張に行った中国で、食事としてのお粥の文化が根づいていることを思い出した。また、2011年3月の東日本大震災の際は、何度かボランティアとして被災地の支援に足を運んだ経験から、米どころである東北の米を使ったビジネスを始めれば、継続的な支援につながると考えた。そこで、東北産の米を使ったお粥の店というコンセプトを固めていった。

ランチタイムのセットは、トッピングの違いで8品目ある雑穀入り粥に、煮もの、サラダ、薬味がつき、各680円で提供。写真はクリーミーな「明太クリーム粥」に、大根と鶏肉のあんかけ、タコとヒジキのサラダ、ショウガの佃煮とゆかりの薬味という組合せ。お好みセットメニューとして「セイロ蒸し小龍包&エビ豆腐シュウマイ」(+200円)を合わせている

多店舗化を構想し、将来的に東北の米の地産地消を目指す

出店場所は、小田急線本厚木駅に近いところにと考えたが、繁華街が広がる北口側ではなく、人通りは少なくなるが、大手チェーンよりも個性的な飲食店が多い南口側を希望した。現物件は、以前は不動産業者の事務所だったが、高齢の経営者が2011年末に廃業を決めたため、2012年3月に契約し、飲食店用に改装した。木を多用してナチュラルな雰囲気とし、一部を吹き抜けにして開放感を出した。1階は14坪で、オープンキッチンと、1人客も来店しやすいようなカウンター席11席、テーブル席4卓14席を設けた。2階は7坪18席だが、最大で26人の宴会ができる。

同店の基本のお粥は、昆布とかつお節で取った和風出汁を使い、赤米や黒米、粟(アワ)などが入った国産の18穀ミックスを加え、コトコトと30分弱炊き、15分ほど蒸らす。朝、大きな寸胴で炊いておき、オーダーごとに出汁を加えて濃度を調整し、加温して提供する。この和風出汁のお粥のほか、ベジブロス(野菜の種、皮、根などから抽出した出汁)のお粥も用意している。さらに、トッピングにより「梅と青紫蘇の粥」「明太クリーム粥」「本格マーボーナス粥」など、8種類のバリエーションがある。普通サイズはお粥が300g弱、トッピングが約50gで、1杯当たり190~280キロカロリーと、かなりヘルシーである。お粥が1.5倍の450gになる大盛りは120円増しで、若い母親と小さな子供がシェアして食べていくこともある。

客単価は、朝が550円、ランチとティータイムが800円、夜はお粥だけで1000円以下という場合もあれば、居酒屋的な利用で4000~5000円という場合もあり、平均では2500円ほどになる。客層は、ランチタイムは周辺で働くOLや主婦など、女性客が9割を占める。夜はカップルや宴会などで来店する男性客が増え、朝は出社前に1人で立ち寄るビジネスマンもいるため、朝と夜は男性客が3割を占めている。

「朝ご飯をきちんと食べて、健康的に1日をスタートしてほしいという想いがあり、オープン当初から平日は朝7時30分から営業しています。お粥は消化がよく、エネルギーに変わりやすいので、朝食利用が定着してくれるといいなと思います」と、森谷氏は語る。

同店がお粥専門店として認知度を高めている要因は、以下のようになるだろう。

  1. 和風出汁を使った雑穀入りのヘルシーなお粥で特徴を出している。
  2. 早朝から深夜まで営業し、時間帯ごとのニーズに合ったセットメニューを打ち出している。
  3. 夜は果実酒やカクテルを中心とする酒類を充実させ、パーティ需要を取り込んでいる。

「『オトコノカッテ』はバー的な要素も強く、集客が人に起因する部分も大きいのですが、『オカユスタンド』はある程度システムで稼働できるため、人材を育てながら多店舗化も考えていきたいです」という森谷氏。神奈川から徐々に北上していき、いずれは東北への出店を夢に描いている。東北の米の地産地消に結び付け、雇用の創出にも貢献したい考えだ。

オカユスタンド
住所

神奈川県厚木市旭町1-24-15
TEL 046-280-5887
営業時間
7:30~23:00(L.O. 22:30、土11:00~)
定休日
日曜日・祝日