2011/12/20 繁盛の法則

昼は麺類、夜は居酒屋利用で支持されるうどん店とは

うどんの本場さぬきでの修業を基に、独自のおいしさを目指した麺・つゆを開発。池袋駅から徒歩15分ほど、細い路地沿いにある「うどん処 硯家(すずりや)本店」は、昼は多彩なうどんメニューで、夜は日本酒と酒肴を楽しんだ後、うどんで締める居酒屋利用で、根強い人気を獲得している。

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うどん処 硯家(すずりや)本店

南池袋の繁華街の外れにある細い路地沿いで創業12年目を迎えた

Key Point

  1. のど越しのいいうどんと味わい深い出汁を追求
  2. 多彩なアイデアうどんを開発
  3. 夜は日本酒と酒肴で居酒屋利用を誘引

うどんの本場さぬきでの修業を基に、
独自のおいしさを目指した麺・つゆを開発

池袋駅から徒歩15分ほど、細い路地沿いにある「うどん処 硯家(すずりや)本店」は、昼は多彩なうどんメニューで、夜は日本酒と酒肴を楽しんだ後、うどんで締める居酒屋利用で、根強い人気を獲得している。オープンは2000年9月で、店舗規模は15坪26席。周辺のサラリーマン、OLが主な客層だが、週末には家族連れも多く、老若男女に支持されている。

経営者である三本松寛店長は、1974年埼玉県生まれで、これからのビジネスとしてうどん店が有望ではないかと考え、うどんの本場さぬきで1年間修業した。まださぬきうどんの全国チェーン等が台頭してくる前であり、とにかく香川・高松市に飛ぶと、求人誌に募集が出ていたうどん店に飛び込んだ。高松市でも5指に入ると言われる100席ほどの人気店で、週末には600~700人が訪れる多忙な店だった。

東京に戻ると、父親が所有するビルの1階で営業していたお好み焼き店が撤退したため、その跡地で開業することにした。修業先で覚えた製麺方法をベースにしながら、コシの強さだけではなく、つるつるとしたのど越しのいいうどんを目指し、平均的なさぬきうどんよりやや細めの麺にしている。小麦粉は開業前にかなりの種類を試し、うどんにすると甘味が強くてのど越しがよく、ほどよい弾力があるオーストラリア産100%の製品を選んだ。修業先と同様、製麺機を使用しているが、前日の朝から仕込みを開始し、生地をひと晩寝かせてから使用する。寝かせることで小麦粉と水分が均一に混ざり、さらに熟成するため、小麦の風味が出て旨味のあるうどんになる。また、出汁にもこだわり、昆布、煮干しで旨味を引き出した後、かつお節など5種類の節類を加え、味わい深い出汁をとる。温かいうどんのつゆは淡口醤油を使い、さぬきと大阪のうどんつゆの中間くらいの味に仕上げる。ぶっかけうどん、ざるうどんなど冷たいうどん用は、濃口醤油を使ったしっかりした味わいとしている。

うどん、出汁などの基本的なおいしさに加え、アイデアうどんの豊富さも同店の特徴である。なかでも人気商品は、牛丼の具のように甘辛く煮た牛肉をのせた「肉ぶっかけうどん」770円、12種のスパイスを調合して作る「スパイシーカレーうどん」580円、「四川麻辣(マーラー)うどん」850円などである。

また、ランチタイムには炊き込みご飯とのセットを用意している。炊き込みご飯は200円だが、ランチセットでは130円、日替わりで4種ほどのうどんを選べる「本日の得々ランチ」では50円増しでセットにできる。昼の客単価は約700円だ。

上品に味付けされた大きな油揚げが載る「きつねうどん」580円は、うどんや出汁の味もよくわかるおすすめの一品。奥は夜の人気商品、「牛すじ煮込み」630円。日本酒は純米酒、純米吟醸酒を中心にそろえている

夜は純米酒を中心とする日本酒と約40品目の酒肴を提供

夜は、日本酒を中心とする酒類と、刺身、天ぷら、焼きもの、煮ものなど約40品目の酒肴をそろえ、居酒屋的な利用を誘引している。店内の壁面に人気の酒肴や酒類を書いて貼り出し、昼に来店した客にも夜は居酒屋風になることがわかるようにしている。夜の客単価は3,000~3,500円で、ドリンクとフードの売上比はほぼ半々。日本酒は純米酒、純米吟醸酒を中心にそろえており、同店で日本酒のおいしさを体感し、いろいろな日本酒に興味を持つようになる若い客も多い。また、宮城・気仙沼市の小さな酒蔵で、東日本大震災で事務所が被災し、地元の販路を失ってしまった「福宿(ふくやどり)」の純米吟醸酒を1合600円で販売し、支援の一助としている。

同店が繁華街の外れで10年以上健闘している要因は、以下のようになるだろう。

1のど越しや甘味、風味を重視した独自の麺、ていねいにとる味わい深い出汁で、うどんの基本的なおいしさを追求している。
2多彩なアイデアうどんを開発し、常連客を飽きさせないように工夫している。
3夜は日本酒と約40品目の酒肴をそろえ、居酒屋として機能している。

2005年12月には、本店から徒歩10分ほどの場所に20坪30席の南池袋店を出店した。うどんは本店と同様だが、夜の一品料理は独自に工夫している。2店とも平均月商350~360万円を上げ、堅実な経営を続けている。

「当初はビジネスとしてうどん店を始めたのですが、最近は必ずしも多店舗展開ばかりが重要ではないと考えるようになっています。店舗が増えると管理が難しいですし、飲食業は目が届く範囲のほうがいいのかなという気がします」という三本松店長。当面は現在の2店舗で、商品の質と顧客をしっかり維持することを目標とする。

住所
東京都豊島区南池袋2-12-10
TEL
03-3980-1451
営業時間
11:30~15:00 L.O. 、
17:00~21:40 L.O.
(金・土・祝前日17:00~22:15 L.O.)
定休日
無休(年末年始休あり)