2016/03/25 繁盛の黄金律

利益を追い求めると、利益はどんどん逃げていく

「お客の満足」を追求すると、利益は自然についてくる-利益を追うと、どんどん逃げていきます。付加価値を追求すると、自然に利益が増大します。不思議なものですが、商売とはそういうものです。

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Vol.55

「お客の満足」を追求すると、利益は自然についてくる

利益を追いかけると、利益はどんどん逃げていきます。お客にもっと満足を、さらに満足を、と付加価値を追求していくと、自然に利益が増大していくのです。不思議なものですが、商売とはそういうものです。

ひとつの例として、回転寿司チェーンAとチェーンBのケースを挙げます。Aはどの店も大繁盛で、利益も十分すぎるほど出しています。Bは、店数がAの3倍もあり、業界でもメジャーな存在なのですが、赤字続きで青息吐息です。

Aは、「お客の満足」を主眼に置いていました。「お客の満足」とは、まずは商品力です。ネタもシャリもボリュームがある。ネタの鮮度も高い。シャリは炊き立てでおいしい。注文したもの(オーダーはタッチパネル式)が、すぐに運ばれてくる。これらの要素(「お客の満足」の増大)をとことん追求したのです。

Aの営業方針は、具体的には以下の通りです。

  • 寿司1貫のシャリとネタのボリュームはマニュアルで決められていて、オーバーボリュームはOKだが、過少ボリュームは絶対にNG。
  • ネタ切りは、店の厨房でこまめに行う。廃棄時間を厳密に守る。
  • ご飯も少量ずつこまめに炊飯。ネタ同様、廃棄時間を厳守。
  • タッチパネルでの注文では、最初の1皿は1分以内、その後の注文は3分以内に提供する。

これらを遵守すると、店舗調理に大きな負担がかかり、人件費は上がり、原価率も上がります。利益を出すという点では、逆行することばかりです。ところが、客数が増え、売上が伸びれば伸びるほど、人件費率も原価率も下がり、利益が増大していきました。売上が伸びると、必ずコストは下がっていくのです。そこが外食業の面白いところです。

店長の仕事は客数を増やすこと。利益の責任を課してはいけない

一方の利益追求型のBチェーンはどうなったかといいますと、悲惨の一途です。店舗の調理をできるだけシンプル化するために、ネタ切りから炊飯まですべて工場に集約化しました。寿司1貫のポーションのバラつきには関心を持たず、店長に利益責任を負わせました。

益出しを主眼にすれば、ポーションダウンするのは目に見えています。ここには、顧客満足度をどう上げるか、という視点がまったく欠落しています。寿司の価値は、一目でわかります。お客もその点ではプロです。ポーションが小さく、鮮度も悪い、価値のない寿司を売っている店に、誰が二度と足を運ぶでしょうか。客足はみるみる落ちて、赤字幅は膨らむ一方で、ニッチもサッチもいかなくなってしまいました。利益を求め過ぎた結果がこれなのです。怖いですね。

店長の仕事は、利益を出すことではありません。客数を伸ばすことです。客数こそが、地域での店の人気を表す唯一のバロメーターです。そして、客数が増えれば、自然と利益も増えていくものなのです。

あなたのお店でも、Bと同じようなことをやってはいないでしょうか。利益を出そうとして、以下のようなコストカットに汲々としてはいませんか。

  • 必要人員を削って、サービスの質を落としている。
  • 厨房メンバーを削ったためにメニューの提供時間が遅れて、かえって客席回転率を落としている。
  • 効率化と称して、下ごしらえ(開店前の準備)をやりすぎて(例/開店前にサラダを全部作り置きする。刺身のカットも全部済ませておく)、鮮度を極度に落としている。
  • これくらいはわからないだろうと、食材の質を落とす。ポーションダウンもした。
  • 本来廃棄すべき未完成品や経時劣化品を「ままよ」とばかり提供してしまった。

これだけやれば、お店の人気が急速に下落するのは当然ですね。まさかと思われるかもしれませんが、日々の営業では結構行われています。とりわけ、利益責任を負わされた店長は、このような小悪事をそれこそ勤勉にコツコツと行っています。目先の利益を追うと、必ずこういう結果に行き着きます。利益は大事ですが、ひとつ頭を切り替えて、「オーバー作戦」を遂行してみてください。「ちょっと多め」でいいのです。グラスワインが多めに注がれたりすると、嬉しいものですよね。

劣化した食材は、思いきって廃棄してください。また、働くメンバーが少なすぎて、キリキリ舞いしている店でなんか、ゆっくり食事できないですよね。一度、人員も多めでやってみてください。従業員に心の余裕が生まれます。一時的に人件費も原価率も上がりますが、客数が増えて、売上が伸びると、以前より諸々のコストは下がります。

やるかならないか。店主であるあなたの勇気と決断ひとつにかかっています。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報はご自身でご確認ください。

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