2012/01/10 繁盛の黄金律

客単価は、経営者の意志であり、店の戦略である

時間帯別客単価に無頓着な経営者に成功はありえない。大手チェーンのトップから、1店舗経営の個人店の主まで、私は40年間にわたって1万人以上の飲食店経営者の話を聞いてきました。

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Vol.4

時間帯別客単価に無頓着な経営者に成功はありえない

大手チェーンのトップから、1店舗経営の個人店の主まで、私は40年間にわたって1万人以上の飲食店経営者の話を聞いてきました。

その時、取材の中で必ず出てくる言葉に、「客単価」があります。そして、ひとつの共通点があることに気づかされます。成功する経営者は、この客単価という言葉に敏感であり、ダメな経営者は無頓着であるということです。「客単価ねぇ。10,000円使ってくれるお客様もいれば、2,000円のお客様もいるねぇ」なんて答える経営者の事業がその後、うまくいったという試しはありません。

客単価とは、もちろん売上を客数で割ったものですが、「結果」であってはいけません。ひとりのお客からいくらいただくかは、経営者の明確な意志であり、店(やチェーン)の戦略でなければならないのです。そして当然、時間帯別という但し書きが付かなければなりません。朝食は600円、ランチは1,000円、夕食は3,000円というふうに。

この目標客単価は当然、現実の客単価とズレます。このズレを、どう捉えるかが肝要です。例えば、夕食3,000円をいただこうと思っていたところ、現実は3,500円になってしまったとします。実は、これは大変に危険な兆候です。客単価はその業態の商売のあり方を凝縮したものですから、500円も上がってしまっているということは、店主が目指す店と実際の店との間に狂いが生じているということです。

500円くらいなんだ、と思われるかもしれませんが、とんでもない話です。500円の差は客層も来店動機もまったく別の商売になってしまいます。店主の狙い通りにいっていない店に、誰が足繁く通うでしょうか。

狙い通りの品数を注文してもらうことが大事

逆に、客単価3,000円を狙う店が、2,500円の客単価になってしまったとします。これも同じように大問題です。お客は3,000円も払う価値ナシ、という声なき声をあげているのです。店主が売れてほしいメニューを注文せず、より安いサブメニューで我慢しているか、もう一品注文してほしいところを、お客が自らにブレーキをかけているのです。3,000円じゃ高すぎる。客単価2,500円の店になってくれ!という悲鳴をあげているとも考えられます。

いずれにせよ、メニュー構成と一品一品の単価の徹底的な洗い直しが急務です。主力メニューを中心に、店主の思い通りの組み合わせ(例えば、料理3品、アルコール2品といった具合)でお客が注文してくれるようになったら、しめたものです。メニューの中身と価格とメニュー構成の絶えざる修正作業を遂行してはじめて、店主の意志とお店のニーズの合致が果たされます。

目標の客単価と実際の客単価が100円でもずれていれば、思い通りの商売ができていないのだ、ということを痛感すべきです。繰り返しますが、時間帯別の客単価戦略を持たなければなりません。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報はご自身でご確認ください。

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