2012/01/24 繁盛の法則

北海道の漁師との連携で差別化した海鮮居酒屋とは

創業50年のすし店の三代目が、ビルの建替えを機に新業態に挑戦。北海道・函館の北西、噴火湾に面した森漁港の有限会社其田水産から直送される魚介類をメインとする「其ノ田水産 東京水天宮直売所」は、東京では珍しい北海道の地魚を楽しめる店として個性を出している。

URLコピー

其ノ田水産 東京水天宮直売所

地下鉄水天宮駅6番出口の目の前にあり、ビルの2階だが注視効果は高い

Key Point

  1. 北海道の漁師とタイアップし、魚介類に特化
  2. 北海道の地魚を手頃な価格で提供
  3. 旬の素材にひと工夫を加えた商品を毎週開発

創業50年のすし店の三代目が、
ビルの建替えを機に新業態に挑戦

北海道・函館の北西、噴火湾に面した森漁港の有限会社其田水産から直送される魚介類をメインとする「其ノ田水産 東京水天宮直売所」は、東京では珍しい北海道の地魚を楽しめる店として個性を出している。ここ数年増えてきた漁師小屋をイメージした海鮮居酒屋とは異なり、コンクリート打ちっ放しの壁を生かした12坪の店内に、オーソドックスな食堂スタイルのテーブルと椅子で24席を配している。店内奥の大型モニターで北海道での漁や魚介を加工する映像を流し、産地直送を訴求している。

オープンは2010年10月22日で、経営元の有限会社作田は、東京・中央区の地下鉄半蔵門線水天宮駅からすぐの現在地で、50年間「たぬき鮨」を経営していた。4階建ての自社ビルを使い、宴会場を備えた大型店だったが、ビルの老朽化に伴い建替えを決意。10階建てに増床し、3~10階は1DKのマンションとした。1階は靴のクリーニング店がテナントとして入り、2階でたぬき鮨三代目の作田昌久さんが、新たなコンセプトの飲食店に取り組むことになった。数人の企画チームで業態開発がスタートし、その中で、「北海道の漁師で、東京に販路を広げたいという人がいるので、提携してみてはどうか」という案が出た。それが大将こと其田水産の其田猛さんで、同店の店名も「其ノ田水産 東京水天宮直売所」とし、漁港と直結した店舗であるとアピールすることにした。

其田さんは1947年生まれのベテラン漁師で、主にタコ漁と昆布漁を手がけるほか、干物やスモークサーモン、塩辛などの加工も行ない、森漁港と函館漁港での競り人でもある。現在、同店では生および急速冷凍した魚介類や魚介加工品が週2回、北海道から届くほか、一部を築地市場から調達し、魚に特化した料理を提供している。

「高級魚よりも、北海道ならではの地魚をできるだけ手頃な価格で食べていただきたいのです」と、同店の作田所長は語る。まずは「其ノ田の刺盛」5種盛り2,800円、3種盛り1,800円が自慢で、その日に入荷した魚介類からお客が好みで選べるほか、数品のおまけがつくサプライズ商品としている。また、作田所長が寿司店などの修業で身に付けた調理技術を活かし、寿司をはじめ、季節の食材をひと工夫したオリジナル料理を毎週1~2品、多いときは3~4品開発している。最近では、白身魚のナガツカに独特の衣をつけて揚げた「フィッシュアンドチップス其ノ田流」680円、ワカサギに似たチカという魚を、オイルサーディンのように低温の油でじっくりと柔らかく煮た「チカのオイルサーディン」780円などが人気商品となっている。

「其ノ田の刺盛 3種」1,800円は、サービス品が加わるサプライズ商品。ナガツカを使った「フィッシュアンドチップス其ノ田流」680円。其田猛大将がつくる肉厚の「真ホッケ一夜干し」1,200円

夜は40~50代の男性客が中心
2回転以上するランチは女性客も増加中

平日は周辺の企業に勤めるサラリーマンが中心で、40~50代の男性客が約7割を占めるが、週末はカップルや家族連れなども多くなる。夜の客単価は3,800円で、フードとドリンクの売上比は6対4。1日に30~40人が来店しており、19時以降はほぼ毎日満席となる時間帯がある。店内が賑わっているときを見計らって、木桶にその日に届いた活ウニであったり、タコの柔らか煮を炊き込んだおにぎりなどを盛り込み、客席を回って販売する。演出効果が高く、あちこちから注文が入り、さらに店内が盛り上がる。

昼は、5品目のランチメニューを680~1,480円で提供しており、1日に50人前後が来店している。一番人気は新鮮な「お刺身定食」880円で、注文を受けてから揚げる「海鮮MIXフライ定食」880円も好評を得ている。魚介と野菜の天ぷらをのせた「其ノ田天丼」680円はお値打ち感が高く、「日替わり定食」780円は焼き魚をメインとする。昼の客単価は800円で、最近は女性が1人で来店するケースも増えている。

同店が独自のスタイルの海鮮居酒屋として支持されている要因を挙げると、以下のようになるだろう。

1北海道の漁師とのタイアップを基盤に、魚介類に特化した商品構成としている。
2高級魚よりも、北海道の地魚を手頃な価格で提供する方針を徹底している。
3経営者の調理技術を生かし、旬の素材にひと工夫を加えた商品を毎週開発している。

オープン1年強で、徐々に認知度を上げてきており、月商は300~400万円の間で推移している。17時~19時の強化などにより、売上を安定させることが当面の目標で、その後、2店目、3店目を出店できれば、直送の経費の低減やスケールメリットも出てくると予想している。

住所
東京都中央区日本橋蛎殻町1-29-7 2F
TEL
03-6661-6153
営業時間
11:30~14:00、17:00~23:30
定休日
日曜・祝日