2017/07/06 繁盛の法則

女性にも支持される隠れ家的な立ち食いそば店とは

独自のメニューで勝負する「そばうさ」(東京・半蔵門) に学ぶ-立ち食いそば店でありながら、女性がターゲット。「スタミナそば」と「バジルそば」を2大看板として、オリジナリティを打ち出している。

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そばうさ

Key Point

  1. 女性に合った立地を選定
  2. 製麺所の協力で独自のそばを開発
  3. オリジナリティの高い商品を考案

料理好きが高じて、脱サラからそば店を開業

「立ち食いそば店ですが、女性のお客様をターゲットにしたかったので、あえて隠れ家的な立地がいいと考えました」と、「そばうさ」のオーナーである小島和樹氏は語る。地下鉄半蔵門駅から徒歩2分ほどだが、細めの路地からさらに奥に入ったところにあり、路地に看板を出していなければ、その奥に店があるとは気づかないような場所である。わずか8.9坪の同店は、元は倉庫だった物件を改装し、2015年2月4日にオープンした。

そばそのものも、伝統的な日本そば店とは趣を異にする。同店の2大看板商品の1つで、男性を意識した「スタミナそば」(温・冷各750円)は、太めで黒っぽい色をした田舎そばの上にゴマと刻みノリが山のように盛られ、甘辛く煮つけた挽き肉入りのつゆで食べる。もう一方の「バジルそば」(温・冷各850円)は女性向けに考案した商品で、そばの上にレタス、カイワレ、ベーコン、スクランブルエッグ、ゴマと、爽やかな酸味をプラスするレモンをのせ、バジルペースト、ミニトマトを加えたつゆを合わせている。いわば、東京・港区の繁盛そば店「港屋」のスタイルの延長線ではあるが、小島氏独自の工夫を加え、オリジナリティを明確に打ち出しているため、オープン以来、右肩上がりで売上を伸ばしている。

小島氏は1983年東京生まれで、脱サラして同店の開業を果たした。もともと料理好きで、休みの日には毎週あちこちの飲食店を食べ歩いていた。おいしい料理と出合えば自宅で再現してみるほど研究熱心で、「いずれは自分で飲食店をやってみたい」と、漠然とした夢を持ち続けていた。

様々な飲食店を訪ねたなかでも、小島氏は「港屋」のそばに強い衝撃を受けた。「港屋」は2002年のオープンで、ボリュームたっぷりの太めの田舎そばを使い、つけ汁にラー油を入れた温かい鶏そば、豚肉を使った冷たい肉そばといった豪快なつけ麺を打ち出し、そばの新潮流を創り出した。

「あれだけがっしりと食べ応えのあるそばは初めてでした。そばはこういうふうに食べてもおいしいのだと感動し、通って2、3回目くらいに、私もこういうそば店を始めてみたいと強く思いました。そばはまだまだ可能性がある業態だと感じたのです。最近でこそ港屋さんに触発された“港屋インスパイア系”と呼ばれる店が増えていますが、まだまだ港屋さんを凌駕するほどではないので、自分でやるなら、さらにおいしいものでないと意味がない。だったらまったく違う方向から考えたおいしさを追求していこうと思ったのです」と小島氏は説明する。そこで、港屋系の特徴でもある、そばつゆにラー油を入れることはやめ、卓上にタマネギベースの自家製辛味調味料を置き、好みで加えてもらうようにした。「港屋」で人気の鶏そば、肉そばからも離れ、牛と豚の合挽き肉や牛スジ、さらにバジルを使うなど、独自の商品を考案した。

人気商品の「スタミナ牛スジ冷そば(生卵付)」(写真手前/900円)と、彩りも鮮やかな「バジル冷そば」(写真奥/850円)。ほか、通常のもりそば感覚の「海苔胡麻冷そば」(600円)、スタミナ系の「スタミナそば」(温・冷各750円)、「スタミナ担担そば」(温・冷各850円)、「スタミナ冷まぜそば」(850円)を提供している

ランチタイムには180~200人を集客

麺は、協力を快諾してくれた製麺所との出合いが契機となり、小島氏が目指す味わいやのど越しを実現するため、何度も試作を繰り返した。そばの甘皮部分をかなり細かく挽き、そば粉、そばの中心部分のさらしな粉、小麦粉などをブレンドし、味や香りとともに、ツルッとしたのど越しを持つ独自の麺を製麺してもらっている。また、立ち食い店であるため、茹で時間は2分以内になるように調整してもらった。ボリューム感も重視し、普通盛りで茹で上がり360g、100円増しの大盛りは520gを提供しており、男性の3人に1人は大盛りをオーダーする。

オープン後、客数が少なかったのは当初の2週間程度で、ほどなくリピーターや口コミで客数が増えていった。営業のメインであるランチタイムは、客単価860円で、最近は180~200人を集客する。食券式でセルフサービスだが、昼は小島氏、妻の美和子氏に加え、アルバイト2人の計4人で稼働している。夜は、夫妻で仕込みをしながら営業しており、酒類や酒肴も多少増やしてきたが、客単価は1000円弱で、30~60人が来店している。また当初の狙い通り、女性も気兼ねなく利用しており、客層の35~40%を占めている。

同店が個性的な立ち食いそば店として、ビジネス立地で健闘している要因は、以下のようになるだろう。

  1. ターゲットとする女性に合った立地を選んでいる。
  2. 製麺所の協力を得て、独自のそばを開発している。
  3. スタミナそばやバジルそばといった、オリジナリティの高い商品を提供している。

「今は、もっと当店のそばを知っていただきたいという想いが強いですね。もともと、同じそば店を何店も展開したいという気持ちはなく、長い目で見たら、そば店以外のこともできたらいいなとは思っています」と語る小島氏。店の着実な成長に確かな手応えを感じているようだ。

そばうさ
住所

東京都千代田区麹町2-5-2 金森共同ビル 1-B
TEL 03-6380-9912
営業時間
11:00~15:00(月~土)、17:00~21:00(月~金)
定休日
日・祝(土は昼のみ営業)