花山うどん 銀座店
Key Point
- 創業以来、品質重視の製麺を継承
- 幅広麺「鬼ひも川」が差別化に貢献
- 平日夜は宴会需要にも対応
本社のある館林から毎日配送される生麺を使用
良質な小麦の産地である群馬県館林市を拠点に、うどんの乾麺の製造・販売で業績を伸ばしてきた株式会社花山うどんが、東京・東銀座にうどん専門店「花山うどん銀座店」を2016年10月9日に出店した。東武伊勢崎線館林駅前で「本社直売所」と、併設の「本店お食事処」を経営しているが、店内での飲食を主体とする単独の店舗としては、銀座店が初出店。同店では、毎日館林から配送される生麺を使用し、その日のうちに売り切るとともに、乾麺やギフトセットなどの販売も行っている。
同社は明治27年(1894年)に東京・日本橋で乾物屋として創業し、その後、館林市に拠点を移し、うどんの製造に注力するようになった。そのため、東京への出店は、同社にとって創業地に帰るという格別な想いがあり、ブランドの情報発信拠点としても重要な意味を持つ。3年ほど前から日本橋周辺で出店場所を探していたが、なかなか希望に沿う物件が見つからず、たまたま東銀座の歌舞伎座のすぐ裏手の、以前はハンバーグ店だった現物件を紹介され、契約後は約2カ月という短期間でオープンにこぎつけた。
20坪34席の店舗は、外観、店内ともに、高級感のある和の雰囲気。店内に入ってまず目に入る正面の壁は、館林で有名なツツジの花をモチーフにデザインした。オープン後、すぐに周辺のビジネスマンやOL、歌舞伎座の観劇客などの目に留まり、ランチタイムは早々に軌道に乗った。
特に人気を集めているのは、茹で上がりで5cmもの幅がある「鬼ひも川」という幅広な平打ち麺である。北関東では「ひもかわ」と呼ばれる麺で、同店では鬼ひも川か普通のうどんを選べるメニューと、鬼ひも川のみのメニューがあるが、都心部では珍しさもあり、来店客の約8割が鬼ひも川を選んでいる。
この鬼ひも川は、同社で大正時代から昭和30年代まで製造していた幅広麺を、5代目である現社長の橋田高明氏が改良を重ねながら復刻したものだ。その契機となったのは、東京・代々木公園などで開催されてきた食のイベント「うどん日本一決定選手選U-1グランプリ」への参戦で、出場するなら特徴のあるうどんを提供しようと、大会に向けて開発。その結果、2013年から3年連続で評価部門1位を獲得した。提供商品の開発中に、橋田氏がテレビ取材に対し、「優勝したら定番メニューに加える」と宣言していたため、レギュラーメニューに入れた。
3年連続評価部門1位に貢献した「鬼釡」(980円)は、銀座店でも一番の人気商品となっている。甘辛く煮付けた上州麦豚、温泉玉子などをトッピングしたボリューム感のある一品で、館林を舞台とする民話「分福茶釡」にちなんだ、愛らしいタヌキ型の器で提供する。この鬼釡は、ミニサイズの丼ものとセットにしたランチの「鬼御膳」(3種、各1350円)も含めると、1日に100食ほどが出ている。鬼ひも川をカルボナーラ風に仕上げた大会での提供商品のひとつ「鬼ボナーラ」は、調理工程が多く、ソースを絡めるタイミングなどが難しいため、現在は夜限定メニュー(1250円)として販売している。上州麦豚のほかにも、赤城牛、赤城鶏、キノコ類、コンニャクなど、群馬県産の良質な素材を積極的に使用し、郷土色を強調した商品開発を行っている。
創業地の日本橋への出店や、東京五輪に向けた展開を模索
同社では、国産小麦を使ったていねいな麺作りにこだわり、初代から代々、大量生産よりも品質を優先する方針を貫いてきた。銀座店でも、1日約200食を用意しているが、日によっては麺切れで早めに閉店する日もある。また、年中無休で営業しており、夜は居酒屋風のメニューも加えるため、仕込みに時間がかかることから、土・日曜日、祝日は昼のみの営業としている。昼は、うどん単品(750円~)や、うどんと丼ものなどをセットにしたご膳メニュー(1250円~)を提供しており、客単価は1500円。夜は、酒と酒肴を1~2品つまみ、うどんで締めるという利用が多く、客単価は1800~2000円になる。また、夜のコース料理(4000円~)も用意し、最近は月に1~2回はコース料理の予約が入るようになっている。「これから年末年始の繁忙期に向け、夜の宴会の利用を強化していきたいです」と、マネージャーの福地悠太氏は意気込みを見せる。
同店が群馬発のうどん専門店として、都心の一等立地で健闘している要因は、以下のようになるだろう。
- 明治27年の創業以来、品質重視のうどん製造を継承している。
- 独自の幅広麺「鬼ひも川」が都内での差別化に貢献している。
- 平日の夜は居酒屋メニューを加え、宴会需要にも対応している。
銀座店での好反応を受けて、今後も飲食店の展開に注力していく意向である。まずは、やはり創業地である日本橋への出店を目指して、引き続き物件を探すほか、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けての施策も模索中という。
住所
東京都中央区銀座3-14-13
TEL 03-6264-7336
営業時間
11:30~16:00(L.O. 15:30)、18:00~22:30(L.O. 22:00、土・日曜日、祝日は昼のみ営業)
定休日
無休