2018/01/18 繁盛の法則

独特の柔らかいハンバーグで行列ができる専門店とは

老若男女に支持される「AOI」(東京・東銀座)に学ぶ-箸でも切れるほど柔らかい独特のハンバーグで人気の「AOI」は老若男女の幅広い顧客を獲得。わずか21席の店舗で、月商650~700万円を上げている。

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AOI

Key Point

  1. ふわふわした食感のハンバーグを開発
  2. 専門店として店の個性を明確化
  3. 機器類の導入で回転率アップを実現

弁当店の1アイテムとしてハンバーグを独自に開発

箸でもスッと切れるほど柔らかい独特のハンバーグで、東京・銀座の「AOI(エーオーアイ)」は老若男女の幅広い顧客を獲得している。昭和通り沿いのビルの1階、わずか11.48坪21席の店舗で、2017年7月からは月商650~700万円を上げている。

同店のハンバーグは、国産牛スネ肉100%の挽き肉3に対し、8時間ほど黒褐色になるまで炒めたタマネギ2を合わせ、卵、ごく少量のパン粉を加え、塩、コショウでシンプルに味付けしている。牛肉本来の旨みに、タマネギの甘みと柔らかさが加わり、ホロリとほぐれるような食感を持つ。

運営する有限会社AOIの岩井浩二代表取締役は、1967年、千葉・稲毛生まれで、銀座や六本木などの高級フランス料理店で修業後、1996年に地元の稲毛で小さな弁当店を創業した。フレンチをベースにした500~1200円の弁当の中に、ハンバーグも加えることにしたが、修業先のメニューにハンバーグはなく、賄いで作った経験しかなかった。そこで、精肉店から比較的安価に仕入れられる牛スネ肉を使いながら、どうしたらおいしいハンバーグが作れるかを考えた。煮込み料理などに使われる牛スネ肉は、噛んだときの旨みは強いが、硬いという難がある。ハンバーグにするのであれば、炒めたタマネギを大量に加えたらどうかと試作してみると、想像したような味に仕上がった。「後で比べてみたら、他店のハンバーグとは全然違っていたのです」と岩井氏。その大量に炒めたタマネギがポイントとなり、他店や大手メーカーが容易に真似できない商品となった。弁当店として2年経営した後、岩井氏は5万円の費用で6席の客席を手作りするなど改装し、「ブラッスリーラ・ロッシュ」と店名も変えた。夜ともなると40人ほどを集客するようになったため、さらに1年後の1999年に、銀座2丁目の現在地に移転拡大を果たした。

一番の人気商品の「ハンバーグライス」(890円)。ハンバーグは1個120gで、牛スネ肉の挽き肉に、もともとの糖度の高いタマネギを仕入れてフードプロセッサーでみじん切りにし、さらに糖度が40%以上になるまで炒めてから加えている。ニンニクやショウガなどを使った和風ソースは、ハンバーグにもごはんにもよく合う

庶民的な価格の専門店に転換。機器類の導入が客数増に貢献

ブラッスリーの頃の客単価は昼1000円、夜3000円で、月商200万円ほどからの地道なスタートだった。その中で岩井氏は、将来的にこの価格帯の業態でやっていけるのかと不安を覚えるようになった。高級店指向でないのなら、より庶民的な価格で勝負したほうがいいと考え、裾野を広げるために、銀座でも圧倒的な人気商品となってきたハンバーグに特化することにした。2005年にハンバーグ専門店に転換し、店名もフランス語の固い印象を払拭し、「A(愛する人)O(おなか)I(いっぱい)」に変更した。

転換後は終日の客単価1000円のハンバーグ専門店として、平均月商350万円を上げるようになった。ハンバーグ自体は1種類だが、ニンニクやショウガなど18種類の素材を使った和風ソース、デミグラスソース、ポン酢おろし、アボカドわさび醤油、ハンバーグカレーなどのバリエーションをそろえ、テイクアウトにも対応している。

飲食業での人手不足が顕在化してきた2015年に、業務の効率を図るため、最新式の券売機とライスの盛り付けマシンを導入した。券売機により、お客1人につきオーダー取りや会計の時間が約2分短縮され、手作業だと約30秒かかるライスの盛り付けを、ボタン操作で5秒で盛れるマシンにすれば、計2分30秒の余裕が生まれると計算した。また、テーブル上にセットしていたナイフやフォーク、箸などを、テーブル板の下部に引き出し式のボックスをつけて収納し、補充も楽にできるようにした。この効率化が店の回転率を飛躍的に上げ、導入翌月から月商450万円に跳ね上がった。

その時点で、これまで店内で岩井氏がほぼ1人で行ってきたタマネギ炒めが間に合わなくなり、ハンバーグの売り切れにより早めに閉店する日が続いた。これではだめだと、タマネギ炒めを別の場所に移して機械で行おうと、東京・浅草橋にタマネギ炒め工場兼店舗として30坪の物件を借りた。2017年6月から工場として稼働し始め、7月に新業態の豚肉のしょうが焼き専門店「生姜キング」をオープンした。しょうが焼きは、「AOI」でも一番人気の和風ソースを活かし、ライス付き580円~という手頃な価格で、約2分で提供できる商品として開発した。また、炒めたタマネギは、岩井氏が自転車で「AOI」へ運んでいる。「タマネギが足りずに早く閉めることがなければ、銀座店の月商はあと30~40万円上がるかなと思ったら、一気に200万円上がってしまい、今も伸びています」と、岩井氏自身も驚くほどの成果を上げている。

同店が数回の契機に効率化を図りながら、地道に売上を伸ばしてきた要因は、以下のようになるだろう。

  1. 独特の味わいと柔らかい食感を持つハンバーグを開発している。
  2. 専門店としてハンバーグに特化し、店の個性を明確にしている。
  3. 機器類の導入で効率化を図り、回転率を上げている。

当面は「AOI」の好調さを維持しながら、「生姜キング」を地元に定着させることが課題という。

AOI
住所

東京都中央区銀座2-11-9 三和産工ビル1F
TEL 03-3541-1819
営業時間
11:00~23:00(土・日曜日・祝日~22:00)
定休日
無休(年末年始に休業日あり)
https://r.gnavi.co.jp/g361600/