ごちそうとん汁
Key Point
- ポピュラーなとん汁を独自にアレンジ
- たっぷりの野菜でヘルシーさを強調
- オーダーごとに仕上げ、ライブ感を演出
スペアリブの肉とスープで、ごちそう感のあるとん汁を開発
「野菜をたっぷり使いながら、日本の国民食を、まずヘルシーにし、次におもしろいものにし、まったく新しい商品としてお客様に提供するというのが、私たちのポリシーです」と、株式会社バックパッカーズの代表 佐藤卓氏は端的に表現する。2007年3月14日に東京・代々木に創業したカレー店「camp(キャンプ)」が30店舗のチェーンに成長し、ちょうど10年後の2017年3月14日に、新業態「ごちそうとん汁」を同じく代々木にオープンした。
とん汁は、親しみのあるメニューだが、とん汁専門店となると全国でも数店舗に限られている。しかも同店のとん汁は、ゴロゴロとしたスペアリブをトッピングし、そのスペアリブを下茹でしたときのスープを出汁として使うという、一般的なとん汁とは一線を画すユニークなメニューだ。
また、あらかじめ下準備は整えておくものの、オーダーごとに1杯ずつ仕上げていくのも特徴。その手順は、大きめに切ったダイコン、ニンジン、ジャガイモ、ゴボウ、サツマイモなどの根菜類を蒸しておき、オーダーを受けてから1人前ずつゴマ油で素揚げして一気に芯温まで上げる。余分な油を切って鍋に野菜類を戻し、残った少量の油を利用しながら、信州味噌ベースのタレを入れて炒め、香ばしい風味と下味をつける。そこにスペアリブの煮汁を入れ、最後に西京味噌や江戸甘味噌などを注文に応じて加え、ひと煮立ちする寸前に火を止める。スペアリブは、下茹でした後にしょうゆ、酒、みりん、味噌、八角などのスパイス類を加えたタレに漬け込んでおき、オーダーが入ると焼き網の上で炙ってトッピング。さらに自家製の豆腐を加え、みつばなどをあしらって完成する。
「バラバラに仕込んでおいた具材を、オーダーから一気に火入れし、合体させるのです。これは『camp』のオペレーションと同じです」と佐藤氏。「camp」の代名詞的なメニューである「1日分の野菜カレー」は、350gもの野菜を使う具だくさんのカレーだが、その手法を基に和風の汁ものにアレンジしたのが、このとん汁である。とん汁は味噌や具材のバリエーションで8品目(840~1440円)をそろえ、1人前に約200gの野菜類を使う。単品での注文も可能だが、ごはん(小100g、中150g、大250g)、香の物がつく「豚汁定食セット」(各プラス100円)にすると、ボリューム感のある食事としても楽しめる。客単価は1050円で、現在は14坪22席の店舗に1日あたり130~180人が来店し、月商450万~500万円を上げている。30代以上の幅広い層に支持されており、うち女性が約6割を占めている。
脱サラから飲食業に挑戦。カレーに続き、とん汁に着目
佐藤氏は1967年、埼玉・浦和生まれで、大学卒業後の1991年~2005年は日産自動車株式会社に勤務していた。40歳を前に、自分が好きなことにチャレンジしたいと飲食業に転身し、カレーショップで2年間修業した後、「camp」を創業した。しかし、最初の2年ほどは客数が伸びず、厳しい状況を経験した。そんななかでも足繁く来店してくれていた常連客に、あるとき、農家から入手したありったけの野菜類を使ってカレーを作って食べてもらったところ、「これは絶対に看板メニューになる」と褒めてくれ、それが起死回生の「1日分の野菜カレー」の誕生につながった。この看板メニューの大ヒットにより、2010年からはJR、私鉄、メガフランチャイジーなどと提携し、エリアフランチャイズという仕組みで多店舗化を図ってきた。
「創業10年が見えた時点で、次の10年、20年に向けてどう戦っていくかを考え、campのフォーマットから商材を変えて、違う切り口で始めたのが『ごちそうとん汁』です」と佐藤氏。「camp 代々木本店」から徒歩2分ほどの場所に出店したことも奏功し、「ごちそうとん汁」はオープン前から注目され、早々に軌道に乗った。
同店が新感覚のとん汁専門店として幅広い層を誘引している要因は、以下のようになるだろう。
- とん汁というポピュラーな商材に独自のアレンジを加えている。
- 野菜をたっぷり使い、ヘルシーさを強調している。
- オーダーごとに1品ずつ仕上げ、ライブ感を演出している。
なお同社は、将来を見据えた展開の一環として、2017年7月にとんかつ店「かつや」などを展開するアークランドサービスホールディングス株式会社に自社株の66%を売却し、同グループの傘下に入った。これにより、業態開発、物件開発、商品開発などで相互の連携、協力が図られる体制が整った。2018年2月28日には、「camp」の直営2店目が東京・新橋にオープンする予定で、今後は「camp」「ごちそうとん汁」、さらには新業態の展開も加速させていく考えだ。
住所
東京都渋谷区代々木1-33-2
TEL 03-6883-9181
営業時間
11:30~24:00(L.O. 23:30)
定休日
無休