2018/03/15 繁盛の法則

ホテル出身者の料理と接客で差別化する中国料理店とは

シニア層に支持される「中国料理 天華」(東京・下北沢) に学ぶ-多彩で繊細な料理と心地よいサービス、リーズナブルな価格帯というスタンスで、地元の中高年層を中心とする常連客を増やしている。

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中国料理 天華

Key Point

  1. 本格的な料理と親しみあるサービスを提供
  2. サプライズの演出で常連客を獲得
  3. 宴会では様々な要望に柔軟に対応

下北沢では珍しい広々した心地よい空間を創出

ホテル出身者4人で出店した東京・下北沢の「中国料理 天華」は、多彩で繊細な料理と心地よいサービス、リーズナブルな価格帯というスタンスを取りながら、地元の中高年層を中心とする常連客を増やしている。

オープンは2013年3月13日で、下北沢駅西口から徒歩1分のビルの1階に、38坪48席を設けている。京王井の頭線と小田急線が交差する下北沢駅周辺は、細い路地に小規模店が並び、若年層に人気がある南口界隈と、閑静な高級住宅街が広がる西口や北口のエリアでは、ガラリと異なる様相を見せる。

「下北沢には今までなかったような、オーセンティックな中国料理店として差別化を図りました。地元の40代以上のお客様にターゲットを絞り、ゆっくりと食事を楽しんでいただけるように努めています」と、経営者である株式会社AMIKA取締役社長の長尾翔大氏は語る。長尾氏は、ホテルの中華部門に7年勤務し、在職中から休暇を利用しては中国・四川省成都に毎年通い、本場の料理を学んだ。独立を目指してホテルを退職し、さらに4カ月ほど成都で修業した後、ホテル勤務時代の先輩がオープンした街場のレストランの手伝いなどを経て、同店をオープンした。

開業に向け、下北沢を狙って物件を探しながら、南口周辺でアンケート調査を行った。「今度、下北沢で飲食店をやろうと思っているのですが、下北沢にあるお店の弱いところ、もっとこうしてほしいことはありますか?」と聞いてみたところ、「ごちゃごちゃしている」「席が狭い」といった意見が多かった。そこで、以前はブティックなどが入っていた現物件を改装するときには、ガス、水道、電気、排水、ダクトなどの基礎工事をしっかりと行うとともに、シンプルでモダンな空間、広々とした客席配置にもこだわった。またオープンから2年間は、同じホテルに勤務していた仲間4人だけで営業し、料理や接客のクオリティを保持してきた。

メニューは、長尾氏の修業経験を活かした四川料理が約3割を占めるが、上海、広東、北京、湖南、重慶など、中国各地の料理も提供している。特に人気が高いのは麻婆豆腐で、日本風の「麻婆豆腐」(小皿1100円、中皿1500円)と、四川産の香辛料を活かした「陳麻婆豆腐」(小皿1300円、中皿1700円)の2種類をそろえているのも特徴である。

「陳麻婆豆腐」(本場四川の激辛マーボー豆腐小皿1,300円)は、四川省産の香辛料を駆使した刺激的な味わい。ランチタイムは、前菜3品、スープ、ご飯、デザートがついた「本場四川の陳麻婆セット」(1,350円)として提供している

あらゆる販促に取り組み、徐々に認知度を上げる

下北沢駅周辺はここ数年、小田急線の地下化と駅舎の改良工事により、人の流れが大きく変わる変動期にあり、同店も少なからず影響を受けてきた。井の頭線のホームからすぐに見える場所にありながら、工事の影響で生活動線となっていた通路が塞がれたり、工事用の宿舎や防音壁で店舗が見えにくくなったりと、オープン直後の認知度を上げたい時期に、多大な苦労を強いられた。そのため当初は、店周辺でチラシを配布したり、10%引きのサービス券のポスティングなども行った。「工事の影響は死活問題で、極力お金はかけずに、ありとあらゆる販促に取り組みました。軌道に乗るまでに2年以上かかりましたね。店の経営についても何も知らなかったですから、すべて手探りで、こうしたらいいのではないかということをとにかく実践しました。1度来店していただければきっと気に入ってもらえると、自分たちを信じていました」と長尾氏は振り返る。

契機となったのは、サプライズの演出と、宴会の際にお客と密にコミュニケーションを取りながら料理内容を決めるようにしたことである。例えば、乾杯の際に「誕生日おめでとう」という声が聞こえたら、バースデープレートを作って提供するといった具合である。「自分の身内や友達のお祝いの場では、何かびっくりするような演出を考えるじゃないですか。それをお客様にやってみたら、とても喜んでもらえ、週に2回、3回と来店される常連客がだんだんと増えていったのです」と長尾氏。また、宴会では「飲み放題付きで1人5000円で」という要望が多く、料理内容はそれぞれのグループの好みに応じて調整。これにより大人数の宴会がコンスタントに入るようになり、さらには口コミで新規客も増えた。現在の客単価は昼1500円、夜5000円で、1日の平均客数は約100人。下北沢の飲食店で行われる「カレー」や「激辛」がテーマのイベントに参加すると、その期間はイベントの来場者だけで1日150人が来店する。

同店が落ち着いて利用できる中国料理店として、地元での評判を高めている要因は、以下のようになるだろう。

  1. ホテル出身者による繊細な料理とサービスを提供している。
  2. サプライズの演出で常連客を増やしている。
  3. 宴会の際はお客と密にコミュニケーションを取り、様々な要望に柔軟に対応している。

「下北沢の中華といったら『天華』だよね、という評価を確立していきたいですね」と、長尾氏は抱負を語っている。

中国料理 天華
住所

東京都世田谷区北沢2-23-10 ウエストフロント1F
TEL 03-5779-7878
営業時間
11:30~15:00(L.O. 14:30)17:30~22:00(L.O. 21:30)
定休日
火曜日