2018/06/06 繁盛の法則

幅広い客層が終日来店する、健康を意識した定食店とは

三浦半島直送の食材を活かした「いまがわ食堂」(東京・町田) に学ぶ-生産者と直接取り引きし、卸、物流、調理、提供まで一貫して行う定食店。魚をメインとしたメニューを提供し、堅実に集客する。

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いまがわ食堂

Key Point

  1. 漁業から商品提供まで一貫体制を構築
  2. 素材を活かしたシンプルな料理を提供
  3. 女性を意識した雰囲気づくりが奏功

自身の病気をきっかけに健康的な外食を目指す

神奈川・三浦半島産の旬の食材をストレートに活かした東京・町田の「いまがわ食堂」は、まさに直球で勝負している定食店である。小田急線町田駅から徒歩1分という場所だが、ビルの2階にあり、入口も狭くてわかりづらいという不利な条件を抱えつつも、徐々に客数を伸ばしている。

「生産者と直接取り引きし、卸、物流、調理、提供まで一貫して行っています。最近よくいわれる、一次×二次×三次の六次産業化ですね」と、経営元である株式会社今川商店の代表取締役を務める林虎山(りんほさん)氏は述べる。林氏は1982年中国生まれで、「先進国で経営を学びたい」と、2001年に来日した。最初に住んだのが神奈川・横須賀だったため、三浦半島は第二の故郷のような場所でもある。その後、神奈川・相模原に移り、そこで新進の飲食企業の2号店のオープニングスタッフとなった。将来的に自分でビジネスを手がけたいという夢を抱いていた林氏は、ノウハウを実践的に学べる場として飲食業に専念するように。次第に社内でも重用されていき、料理長を任されるとともに、食材の開拓や調達のために全国を飛び回るようになった。

そのなかで林氏は、江戸時代末期の安政4年(1857年)からの歴史を持つ、三浦の一本釣り漁師の5代目で、1958年生まれの今川吉保(よしやす)氏と出会った。今川氏は、漁業のほか、神奈川と都心部の飲食店向けに鮮魚の卸し売りを行っている。一方で、30代となった林氏は痛風を発症し、医師から食生活の改善を指導されるようになった。自身がそのような状況に直面したことから、健康にいい食事が摂れる飲食店をいざ探してみると、なかなか見つからないことに気づいた。そこで林氏は今川氏と共同で、三浦半島の新鮮な食材に特化し、化学調味料や添加物を使わない健康的な料理を提供する飲食店を出店したいと計画。2013年に今川商店を設立し、今川氏と林氏が共同代表に就任した。

「なめろう丼」(単品680円)の定食(プラス300円)。まずは南高梅の食前酢(手前右から2番目)をひと口飲んで食欲を増進させ、ゴマをすって丼ぶりにかけ、途中まで食べた後、鉄瓶に入った出汁をかけて出汁茶漬けにする。なめろうは、その日に獲れた魚介類を、今川家秘伝のゴマだれで和えた漁師料理。日替わりの小鉢と三浦野菜の漬物が付く

浜辺の食堂をイメージした親しみやすい店舗が好評

同店は、2016年6月1日のオープンで、27坪45席の規模がある。店内は、「漁師の奥さんたちが手作り料理を提供する浜辺の食堂」というイメージで、店内には魚型のオブジェやブイ、裸電球の照明、漁網などを飾り、親しみやすい雰囲気にしている。カウンター席や大テーブル、ボックス席など多彩な客席を設け、1人客から、グループ客、ファミリーまで、様々な来店に対応できるようにしている。特に、女性に気軽に来店してほしいという狙いから、明るく、清潔感を感じられるようにした。実際に、学生、サラリーマン、OL、ファミリー、年配者と、幅広い層を集客しているが、うち女性が6割強を占めている。

終日同一メニュー、同一価格で、昼夜通し営業とし、年末年始以外は無休で営業している。主力商品は、魚をメインとする定食6品目880~1280円と、丼もの4品目680~980円である。丼ものは、プラス300円で定食にでき、南高梅の梅酢を使った食前酢、三浦野菜の漬物、味噌汁が付き、途中からだし茶漬けにできるように出汁も提供する。すべての定食に添えている南高梅の食前酢は、食事の前にひと口飲むことにより、食欲を増進させ、消化を助ける働きがあるという。ほか、酒肴や一品料理などの居酒屋メニューや、ドリンク類をそろえ、“昼呑み”や“ちょい呑み”にも対応している。夜は、定食とともにワイン1杯を楽しんでいく女性の1人客もいる。

なかでも一番の人気商品は、脂がのったとろサバを炙って仕上げる「大トロ炙りさば定食」(980円)で、多い日は1日30~40食が出る。また、今川家秘伝のゴマだれで和えた魚介類をのせた「なめろう丼」(680円)も、他店では味わえない商品である。客単価は昼970円、夜2500円になる。

同店が三浦半島直送の素材を使った定食店として認知度を上げてきた要因は、以下のようになるだろう。

  1. 漁業、流通、調理、提供まで一貫して行う体制を構築している。
  2. 化学調味料や添加物を使わず、素材を活かしたシンプルな料理を提供している。
  3. 女性を意識した雰囲気づくりが奏功している。

オープンから数カ月は、時間さえあればチラシ配りやポスティングを行い、まずは来店してもらえるように地道な努力を続けた。その効果や口コミにより、少しずつ客数が増えていったが、経営的に安定するまでには約1年半を要した。現在は、平日で1日100人強をコンスタントに集客し、週末には200人以上が来店する日もある。

「まずは来年までに2号店を出店したいですね。大量に出店したいわけではなく、三浦半島のよさ、三浦産の素材のおいしさを知ってもらえるような店づくりを続けていきたいです」と語る林氏。“三浦ありきの店舗”として、堅実な展開を目指している。

いまがわ食堂
住所

東京都町田市森野1-39-5 第二モリビル 2F
TEL 042-732-3671
営業時間
11:00~23:00(L.O. 22:00)
定休日
無休(年末年始は休業日あり)
https://r.gnavi.co.jp/2ufmw8740000/