2019/01/18 繁盛の法則

商品と接客の改善で繁盛店に成長したラーメン店とは

辛さの中にも旨みやコクのある旨辛スープと、独特の弾力のある麺をベースに、様々なアレンジが可能な「旨辛ラーメン表裏(ひょうり)」は、学生など若い世代を中心に、固定ファンを増やしている。

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旨辛ラーメン表裏 水道橋店

Key Point

  1. 辛さと旨みを持つ旨辛スープを開発
  2. 麺や唐揚げでも独自性を強調
  3. きめ細かな接客でお客の好みに対応

低迷していた店舗を買い取り、ラーメン事業で独立・開業

 辛さの中にも旨みやコクのある旨辛スープと、独特の弾力のある麺をベースに、様々なアレンジが可能な「旨辛ラーメン表裏(ひょうり)」は、学生など若い世代を中心に、固定ファンを増やしている。トッピングの唐揚げも好評で、特製のしょうゆベースのタレに浸け込み、片栗粉の衣を付け、揚げたてを提供している。スープの辛さは、「旨辛」(3辛)を中心に、「ピリ辛」(1辛)から「激辛」(5辛)まで用意し、お客の希望に応じて対応している。麺の量は、普通盛り(生麺)で160gあるが、中盛り240gへの増量は追加料金なしとしており、さらに野菜類の増量、ニンニクの増減も無料で対応する。食券式の販売だが、食券を受け取る際にスタッフがお客の好みをていねいに聞き、接客面でも差別化を図っている。

 経営元は株式会社M&Kで、同社は2019年1月現在、「表裏」の市ヶ谷本店、水道橋店、浦安万華郷店と、常磐自動車道守谷サービスエリア内で「茨城大勝軒」を経営している。代表取締役の浦田淳二氏、代表取締役会長の藍川眞司氏は、ともに1983年生まれの元同級生で、千葉・柏の有名ラーメン店「麺屋こうじ」で約半年修業した後、当時、JR水道橋駅の高架下にあった「表裏」水道橋本店の経営を2011年9月に引き継いだ。「表裏」は麺屋こうじグループとして2年ほど営業してきたが、店長が3人代わっても売上の低迷が続いており、そのテコ入れを兼ねての事業継承だった。

 「『表裏』を買い取る前に、来店して味をみてみたのですが、そのとき、これは私たちが独自に改良できる部分がたくさんある、必ずいい結果を出せると思ったのです」と藍川氏は説明する。

オーダーの約8割を占める人気商品は、「あんでら」こと旨辛スープの「あんかけDX(メガ唐付き)」(写真手前/980円)で、写真は麺を中盛に増量したもの。スープの一部にとろみをつけたあんをのせており、麺や野菜とからめて味の変化を楽しむことができる。夏は「旨辛つけ麺DX」(同奥/1,100円)などのつけ麺類の出数が増える

いったん本店を移転した後、創業地の近くに新店舗を出店

 事業継承後、同社ではそれまでの「表裏」の商品構成、価格はそのまま受け継ぎながら、麺、スープ、唐揚げなど、1つひとつを見直し、改良に取り組んだ。麺は、製麺業者からのアドバイスを受けながら半年ほど試行錯誤し、開発。小麦の種皮やタピオカ粉を入れているため、やや黄色く、ツルツルしていて、独特の風味と弾力を持つ。スープは、豚骨、鶏ガラ、香味野菜をたっぷり使い、15時間炊き上げて取っている。

 ラーメンにチャーシューではなく、鶏の唐揚げをのせるという発想もユニークだが、以前は揚げ置きしていたため、それほどインパクトの強い商品ではなかった。そこで同社では、味付けから見直し、タレに使うベースのしょうゆを濃口から淡口に変え、若鶏のモモ肉を1日半浸け込むようにした。以前は半日浸けるだけだったが、浸ける時間をいろいろ変えてベストな状態を選択。180℃の油で2分揚げてスタンバイしておき、オーダーごとにもう1度揚げて、外はカリッとし、中はジューシーな状態で提供するようにしたところ、今では「唐揚げがおいしい」という定評を得るまでになった。

 さらに、お客に対する感謝、誠意をスタッフ全員が持ち、1人ひとりのお客を大事にしながら、好みのラーメンの味を聞き出していくコミュニケーション力を高める努力を続けた。このような取り組みにより、売上も次第に上がっていくと、雑誌の取材が相次ぐようになった。さらに、テレビでも取り上げられたことから一気に火がつき、売上も買収当時の5倍以上に跳ね上がった。

 しかし、当時のJR高架下の13坪16席の物件は、5年間の定期借家契約で延長ができなかったため、2016年9月30日に閉店し、10月17日に17坪25席の市ヶ谷本店をオープンさせた。その後も水道橋周辺の常連客から「戻ってきてほしい」という声が根強かったため、水道橋で物件探しを続け、2018年12月3日に、駅から徒歩1分の角地に立つビルの1階に、10坪17席の水道橋店を新たにオープンした。2年以上のブランクがあったものの、待ちわびていたファンの大歓迎を受け、連日20回転以上する好スタートを切っている。客単価は880円で、学生客が約6割を占め、男女比は6対4となっている。

 同店が特徴のある旨辛ラーメンでリピーターを増やしている要因は、以下のようになるだろう。

  1. 調節可能な辛さと、旨みやコクを合わせ持つ、独自の旨辛スープを作り出している。
  2. 弾力のある麺や揚げたての唐揚げで、オリジナリティを強調している。
  3. 1人ひとりのお客の好みに対応する、きめ細かな接客を心がけている。

 「表裏」としてはもう1店、藍川氏の知人が2013年にオープンしたフランチャイズ店の高田馬場店がある。「『表裏』の出店は首都圏に絞るつもりはなく、地方にも出して、ファミリーなど幅広いお客様に楽しんでもらえたらと考えています。1店舗1店舗、着実に出店していきたいですね」と藍川氏は述べる。また、2019年は東京・吉祥寺での新業態の開発、さらには初の海外進出としてベトナムへの出店を計画している。

旨辛ラーメン表裏 水道橋店
住所
東京都千代田区神田三崎町2-10-1
TEL 03-6272-4074
営業時間
11:00~23:00(スープがなくなり次第終了)
定休日
無休