2019/05/23 挑戦者たち

カイザーキッチン株式会社 創設者&最高経営責任者 クリストファー・アックス氏 創設者&最高経営責任者/チーフハピネスオフィサー マーク・リュッテン氏

ドイツ料理とクラフトドイツビールを提供する「SCHMATZ(シュマッツ)」が快進撃を続けている。創業からの歩みや、組織運営の考え方についてドイツ出身の若き共同経営者2人に話を聞いた。

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何より大切に考えているのはチームを幸せにすること

――ドイツ出身のお二人が日本で事業を始めた経緯を教えてください。

クリストファー・アックス氏(以下、クリス) ドイツの大学を卒業後、ファイナンス分野の仕事に就いていました。もともと自分でビジネスを立ち上げたいという夢があり、それが具体化したのは転勤先のニューヨークで、古くからの友人であるマークと再会したのがきっかけです。私自身、オーガニックファームを営む父や、ホテルの経営者だった祖母の影響で、幼い頃から食やホスピタリティに触れてきた背景があり、そのことも未経験のフードビジネスでの起業につながりました。

マーク・リュッテン氏(以下、マーク) クリスと同じく、早くから起業に関心があり、そのためにはなるべく早く学業を終わらせようと、17歳で高校を、19歳で大学を卒業し、インターネットビジネスに携わりました。私は料理を作るのも食べるのも大好きで、人生の一番の楽しみは食。クリスと起業について語り合うようになったとき、互いのビジネスの経験と食を組み合わせて何かできないかと考えたんです。

クリス 日本で数週間過ごした経験があり、マークも名古屋に留学していたことから日本に親しみがありました。それに、高品質なものを好む日本の人たちなら、モダンなドイツ料理やドイツビールのよさを理解してくれるはずと考え、2013年に来日。その後、東京・中目黒でフードトラックでのソーセージとビールの販売を始めました。

――レストランではなく、移動販売からフードビジネスを始めた理由は?

クリス なるべく小さな規模から始めることが私たちの戦略でした。そのほうが、お客様の反応を見ながら柔軟に軌道修正できるからです。フードトラックで各地のイベントなどを回るなかで、現場に立つ大変さややりがいを感じ、お客様との関わりがどれだけモチベーションにつながるのかを実感できたことは、大きな学びでした。

マーク 「いただきます」「ごちそうさま」と声をかけてもらえるのが新鮮でうれしかったです。より多くの日本の人に受け入れてもらえるよう、ビールの種類を変えたり、ソーセージを食べやすいサイズにしてみたり、メニュー内容や提供の仕方を工夫しました。

クリス 実は、フードトラックの名前も途中で変えました。最初は現在の社名の「カイザーキッチン(皇帝の厨房)」という男性的な名前で、客層も男性を想定。ところが、実際は女性や家族連れが多く、親しみやすさを出すため、ドイツ語で“幸せの音”を意味する「SCHMATZ(シュマッツ)」に変更し、自分たちで車体も塗り直しました。スモールスタートだったからできたことです。そして2015年、赤坂に初のレストランを出店しました。

(右)Christopher Ax 1987年、ドイツ生まれ。大学卒業後、投資ファンドでファイナンスやマーケティグ分野の経験を積む。ニューヨーク勤務時に幼なじみのマーク氏と再会し、起業の夢を語り合ったことが現在につながっている。(左)Marc Luetten 1991年、ドイツ生まれ。19歳で名門ビジネススクールを飛び級で卒業後、ベンチャーキャピタルが所有するeコマースの事業で最高執行責任者を務める。食と旅が好きで、世界の様々な都市のグルメ情報に詳しい。

――レストランを立ち上げるにあたって意識したことは何ですか?

マーク 日本のおもてなしレベルは世界随一ですが、一方で、スタッフとゲストの間に距離があるとも感じていました。そこでシュマッツでは、ドイツ語の「Gastfreundschaft(ガストフロインドシャフト)」を大切にしています。「ガスト」はお客様(ゲスト)、「フロインドシャフト」は友情(フレンドシップ)を意味し、その名の通り、友だちを家に迎え入れるような、温かいもてなしや対話を心がけています。それにより、お客様に店への愛着が生まれ、スタッフにとっても、お客様とのつながりを感じられることが働きがいに結びついています。

クリス フードトラックのときと同様に、店舗でもお客様のニーズを探りながら、その都度、メニューを変えました。また、グループで料理をシェアする日本のスタイルに合わせて、提供の仕方も変更。シェアする習慣はドイツにはなく、最初は戸惑いましたが、複数の料理を楽しんでもらえ、ドイツの食文化に幅広く触れてもらえるメリットを感じています。ビールは、神奈川県のブルワリーとタッグを組み、ドイツのレシピとドイツ産の原料を用いて複数のオリジナル銘柄を醸造。フレッシュな味わいを手頃な価格で気軽に楽しめる、ドイツのビール文化を日本に伝えたくて、この方法を選びました。

――マークさんの肩書きにある「チーフハピネスオフィサー」とは?

マーク
 我々は1つのチームであり、メンバーみんなが高いモチベーションを持って働ける環境を整え、チーム全員をハッピーにしていくことが私の仕事です。お客様に楽しい時間と空間を提供するには、チームが幸せであることが不可欠で、それはビジネスの成長にもつながります。きちんと休みを取れる体制を敷いているほか、面談などを通してそれぞれの目指す将来像を把握し、そのために必要なチャレンジの場を用意しようと努めています。

クリス 面談の場ではプライベートな話や他愛のない話もたくさんします。スタッフは私たちをファーストネームで呼び、互いの関係性はフラット。本音で話せる間柄だからこそ、必要な場面で相談や助言ができ、改善策を見つけやすくなる。オープンな雰囲気づくりを大切にしている理由です。

マーク 店舗数が増え、組織が大きくなってきた今、いかにチームのモチベーションを高く保ちながら、お客様の満足度も向上させていけるかが課題。私たち2人だけで組織の端々まで伝えていくのは難しいので、長く一緒に働いてきて、シュマッツのDNAを受け継ぐメンバーたちにも、その役割を担ってもらいたいと考えています。

チームイベントでの集合写真。メンバーとのコミュニケーションを重視して、チームワークを高めている

――今年もすでに4店舗をオープンし、拡大路線です。背景や今後の展望は?

クリス 多店舗展開は、フードトラックを始めたころから念頭にありました。経済的な成功だけでなく、何か世の中に意味のあることを実現したいと思っていたからです。今年中に10店舗以上出すことが目標ですが、そのタイミングはあくまでもチームの準備次第。むやみに拡大するつもりはありません。現在展開している15店舗は、それぞれの街の個性や雰囲気に調和するよう、異なるデザイナーを起用して外観も内装デザインもすべて変えています。

マーク 出店場所は毎回、その街の象徴的なロケーションを慎重に選定します。働くスタッフにとっても、お客様にとっても、そこに通うこと自体に楽しさを見出せる場所であることが重要だと思うからです。レストランビジネスは、人と人とのつながりが大きな要素を占めます。理想は、チームがもっとハッピーになり、その家族や友達も含めて明るい気持ちが伝播していくこと。それが大きく広がっていき、東京全体、やがては日本中に幸せな空気が満ちていけば、素晴らしいですよね。

クリス 私たちの取り組みを通して、ゆとりを持って働くライフスタイルが広く知られ、定着していけば、外食産業全体の働き方の改善や、持続可能性の向上にもつながっていくはず。社内外の人たちと力を合わせ、少しずつでもそれを実現していくことが夢です。そしてもう1つ。「今日はドイツ料理を食べに行こう!」と、当たり前に外食の選択肢の1つになるくらいに、ドイツ料理を身近なものにしたいですね。

Company Data

会社名
カイザーキッチン株式会社

所在地
東京都目黒区上目黒1-22-4 中目黒駅前ビル3F

Company History

2013年 クリス氏26歳、マーク氏21歳で来日
2014年 フードトラックで移動販売を開始
2015年 「SCHMATZ赤坂」「SCHMATZビア・スタンド表参道」オープン
2017年 「SCHMATZ神田」などをオープン
2018年 「SCHMATZアークヒルズ」「SCHMATZ日本橋髙島屋S.C.」などをオープン
2019年 旗艦店「SCHMATZ中目黒」などをオープン。4月末現在で15店舗を展開。首都圏以外で初となる名古屋店を8月にオープン予定

クラフトビールダイニング SCHMATZ -シュマッツ- 赤坂(東京・赤坂)
https://r.gnavi.co.jp/9j26atp30000/

初のレストラン店舗で、店内はログハウス風のデザイン。立食で最大60名が収容でき、結婚式二次会などの貸切利用も多い。
クラフトビールダイニング SCHMATZ -シュマッツ- 中目黒(東京・中目黒)
https://r.gnavi.co.jp/dp11g2gd0000/
創業の地・中目黒に今年3 月にオープンした旗艦店。1 階は気軽に立ち寄れるビアバー、2 階はダイニングと、幅広い用途に対応する。