2019/05/31 繁盛の黄金律

「強い店長」は、いちばん忙しい日のピーク時の客数を増やす

「強い店長」は客数を増やし、客単価も上げます。簡単なことではありませんが、どうすればそれを実現できるでしょうか。「強い店長」が日々心がけるべきこと、やるべきことのヒントを紹介します。

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Vol.93

まずは「満席率」を高めることに力を入れる

 複数の店を持つ経営者に、よくこういう質問をされます。「店長の実力を測るモノサシって、何ですか」。私はこう答えます。「客数を確実に増やしている店長が、実力のある店長です」と。

 もっと言うと、「もっとも忙しい日の、客数を増やした店長」です。さらに言ってしまうと、「もっとも忙しい日の、もっとも忙しい時間の客数を増やした店長」。それが強い店長ということになります。つまり、一週間の最ピーク時の客数増です。「そこはもう、目いっぱい売っているのですから、お客さんを増やすのは、無理でしょう」と、あなたが考えているとしたら、「甘い!」と言わないわけにはいきません。まだまだ、客数を増やす余地は残されているのです。最繁忙日のピーク時こそが、チャンスロスがもっとも多い時間なのですから。

 まず、満席とわかって帰ってしまうお客がいちばん多いのが、このピーク時間です。そのときに、客席稼働率(満席率)はどうなっているでしょうか。50席の店であるとしたら、お客の数はおそらく30~35人くらいで満席になっているはずです。50席に50人のお客がいることは、まずあり得ないからです。しかし、客席のご案内の仕方次第で、このピーク時にもう10人お客を座らせることは可能です(客席構成によって変わってきますが)。

 店の入口に絶えず目配りして、お客の入店をチェックしている店長と、目先の仕事に没頭している店長とでは、まずここで差が生まれます。お客も、「あと10分お待ちいただければ、(席を)ご用意できます」と言われれば、「そうか、待つか」となります。さらに、料理の提供時間が短縮されれば、滞席時間が短くなって、客席回転率が上がります。

「強い店長」は、1時間ごとの客数予測をしっかり持っている

 迅速にテーブル・バッシングを行い、できるだけ早くご案内をして適切な席に座っていただき、注文を受けるまでの時間が短くなれば、当然、滞席時間は短くなります。また、キッチンに客席の状況をしっかり的確に伝えることも大事です。キッチンとフロアのメンバーが一心同体になっていれば、注文を受けてから料理ができるまでの時間が短くなります。ダメな店長は、ディシャップへの注意がおろそかになります。繁忙時に、できあがった料理がディシャップに置きっぱなしにされる、という最悪の事態を引き起こしてしまいます。

 入口とディシャップ、この2つのポイントに、いつも店長の目が注がれていなければなりません。また、実力のある店長は、提供時間を早めるためにプレパレーション(準備)を大事にします。やるべき準備とやってはいけない準備をはっきりと分けて、やるべき準備をとことんやっておきます。しかし、料理の品質を落とすような準備は、絶対やってはいけません。ここも、知り尽くしています。

 強い店長は、客単価も上げます。訓練の行き届いたスタッフが、客席に足を運び、しっかりとリコメンド(おすすめ)すれば、客単価は上がるものです。チェーンレストランは、どの店も同じメニューで運営していますが、強い店長のいる店は、客単価が高くなるのですね。スタッフに対する店長の訓練力(育成力)の差が、ここではっきりと出ます。

 まとめてみますと、

  1. やるべき準備の徹底
  2. 迅速なバッシング
  3. 席への効率的な誘導
  4. 注文を受けるまでのスピードアップ
  5. 適切なリコメンド
  6. キッチンスタッフとの情報共有
  7. できた料理を一刻も早くお客のテーブルへ届けること

 この7つで、入店客数、滞席時間、客単価が変動するわけですから、差が出ないはずがありません。

 ピーク時の客数が、実力を測るバロメーターと言いましたが、これに客単価も加えなければいけませんね。結局、店長の実力は訓練力ということになります。さらに言うと、高い訓練力を発揮できるトレーナーを育てる能力、です。これに尽きます。

 実力のある店長は、時間ごとに店がどのような状態になっているか、そしてどう変化していくか、そのイメージをはっきり持っています。そして、時間帯別の客数を的確に予測しています。それに沿って、訓練された適正数の従業員を配置しているのです。それをベースに、確実に1人ひとり客数を増やしていきます。

 ちなみに「客数増」というのは、固定客の来店頻度アップのことです。単なる「お店のファン」が、ますます強力なファンになっていくこと。それこそが客数増のコア(核)の部分です。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。