2019/08/14 繁盛の法則

土鍋炊きごはんと発酵調味料で差別化する定食店とは

米メーカー直営の定食店「GOHANYA' GOHAN」。希少なブランド米を土鍋で炊き、白米・玄米で提供する。東北地方の発酵調味料「三五八(さごはち)」を使ったメニューも開発し、オフィス街のランチ需要に応えている。

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GOHANYA' GOHAN

Key Point

  1. 本業の調達力により高品質なお米を使用
  2. 土鍋でこまめに炊き上げてごはんを提供
  3. 発酵調味料で食味を高めた副菜を開発

各地の希少なブランド米をお替り自由で提供

 「お米の素晴らしさ、ごはんのおいしさを再発見してもらいたい」という、米メーカーの強い想いでオープンした「GOHANYA' GOHAN(ごはんや ごはん)」が、オフィス街のランチ需要に応え、幅広い客層に支持されている。

 その米メーカーとは、神奈川・横浜に本社を置く株式会社ミツハシで、同社は産地と結びついた米の仕入れ、精米、炊飯、加工、販売を一貫して行っている。主な商圏である南関東エリアでは、「ミツハシライス」のブランド名でも知られるが、いわゆる「BtoB」の業務用卸が主体であり、「BtoC」の消費者向け事業である飲食店の経営は、同社初の試みである。

 オープンは2017年8月で、新しいオフィスビルが次々と誕生している横浜・みなとみらい地区のビルの1階にあり、店舗規模は23坪37席。「チェーン店ではなく、特徴のある飲食店に入ってほしい」というビルのオーナーの意向もあり、同店の出店が実現した。既存の定食店のイメージとは異なる、カフェ風の明るい店内で、女性の一人客も気軽に入りやすい雰囲気だ。

 メインは、4合炊きの土鍋で炊くごはんで、厨房には8口のガスコンロを装備し、1日平均15釡ほどを炊いている。ミツハシが仕入れている各地の希少なブランド米の中から、白米と玄米各1種を選び、2カ月ほどの周期で入れ替えるほか、10~12月には新米を提供する。約20分で炊き上がり、10分蒸らすと提供できる。水や火加減は、お米ごとに微調整しており、特に火加減はガスコンロでプログラミングできるようになっている。このごはんを、追加料金なしで何杯でもおかわりできるのが、最大の特徴である。

 また玄米は、表面に独自の加工をした「美食玄米」を使用している。ひたしたときに水分を吸いやすく、通常の炊飯器の白米モードでも炊くことができ、食感が柔らかく、冷めてもおいしい。1杯目は白飯、2杯目は玄米、あるいはその逆のおかわりも可能で、追加料金もないため、6対4で玄米のほうがよく出ているという。

ごはんをたっぷり、おかわり自由で味わえる「ごはん堪能おひつ膳」(平日1,000円、土・日曜日・祝日1,180円)。おひつごはん(白米もしくは玄米)、(中央左から時計回りに)銀鮭の三五八漬け焼き、自家製牛そぼろの生姜煮、昆布の佃煮、(左上)季節の小鉢、(右下)具だくさんの味噌汁のほか、(右上)奥久慈卵もしくは長いもとろろが選択可能。2019年7月は、写真の白米はふわりとした食感の岩手県産の「金色(こんじき)の風」、玄米は岩手県産「ひとめぼれ」を柔らかく食べやすく加工した「美食玄米」を提供

平日はビジネス層、週末はファミリー中心に集客

 同社初の飲食店を出店するにあたり、商品開発を女性の専門家に依頼し、ごはんに合う各種のおかずを考案してもらった。その際、東北地方に伝わる発酵調味料「三五八(さごはち)」を導入した。これは、塩3、糀5、蒸し米8の割合の漬け床で、野菜、肉、魚などを漬け込むと、発酵の力により柔らかく、旨みが凝縮され、糀による自然な甘みが加わる。同店では鶏肉、豚肉、鮭などを漬け込んだり、ソースに加えるなど、三五八を駆使することで他店との差別化につなげている。

 ごはんをじっくり味わってもらう代表的なメニューが「ごはん堪能おひつ膳」(平日1000円、土・日曜日・祝日1180円)で、牛そぼろ、銀鮭の三五八漬け焼き、具だくさんの味噌汁などが付く。ごはんは白米か玄米かを選べ、種類を変えてのおかわりも可能なのはほかの定食と同様だが、特にこのメニューをオーダーする人は、おかわりをして両方のごはんをじっくり味わっていくことが多い。

 さらに、平日のランチタイムは、店頭で弁当(600~700円)の販売も行っている。弁当用のごはんも含め、炊飯作業は9時から開始する。弁当も、店内と同じおかずを使い、白米か玄米を選ぶことが可能。やはり玄米を選ぶ人が約6割を占める。

 11~21時の通し営業で、基本的に昼夜同じメニューを提供している。土・日曜日・祝日は弁当販売を休む代わりに、休日用の限定メニューが加わる。平日は近隣のオフィスに勤務するビジネスマンやOLを中心に集客し、客単価は1050円、イートインだけで110~120人を誘引している。土・日曜日・祝日の客単価は1100円と若干高く、近隣の住民やイベント等でみなとみらい地区を訪れるファミリーが多く訪れ、平均100人が来店している。

 同店が米メーカーの直営店として、ごはんのおいしさで定評を得ている要因は以下のようになるだろう。

  1. 本業での調達力を活かし、各地の高品質なお米を使用している。
  2. お米に合わせて炊飯方法を微調整し、土鍋でこまめに炊き上げている。
  3. 発酵調味料「三五八」を使用し、おかず類の食味を高めている。

 「まずはごはんの素晴らしさを再認識していただくために、おいしいごはんをいっぱい食べて満足してもらおうというのがファーストステップでした。そのため、当初は社名やブランド名を一切出していませんでした。その後、ようやく常連のお客様が増えてきた2018年秋から、メニュー表やポスターなどにミツハシライスと入れるようにしたのです」と、同社コンシューマー開発部次長の原元東光氏は説明する。着実に常連客をつかんできた手応えを感じながら、当面は同店をしっかりと運営し、将来的には多店舗化も検討したいという。

GOHANYA' GOHAN
住所
神奈川県横浜市西区みなとみらい4-6-2 グランドセントラルテラス1F
TEL 045-228-8998
営業時間
11:00~21:00
定休日
無休(年末年始、ビル休館日の6月第1日曜日など、年数回休業日あり)
https://r.gnavi.co.jp/30fp2cfm0000/