2019/10/08 特集

“従業員満足”向上は顧客満足&生産性アップにつながる! 飲食店のESを考える(2ページ目)

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ESを把握する

始めの一歩は、自社のESの現状を正確につかむこと

ESの「5因子10要素」に基づき、組織の健康診断を

 ESの向上を図るためには、「まず、現状を正確に把握することが欠かせません」と志田氏。前ページで紹介した、従業員の会社に対する信頼残高を増やすためには何が必要で、減らさないためにはどうすればよいのかを、自社・自店の現状に沿って具体的に明らかにすることから始めよう。

 そのために提案するのが、下図「ESロジックツリー」に基づいて、自社・自店の「ES診断」を実施すること。志田氏は、現代日本のビジネスパーソンの状況や価値観、これまでのES診断結果などを分析し、ESの構成要素を「5つの因子」と「10の要素」に分類。これをまとめたのが、「ESロジックツリー」だ。この構成要素に沿って、自社の実態に即した従業員向けESアンケートを作成し、調査分析することで、ESの実態が浮き彫りになる。

 まず、志田氏がES診断でもっとも重要と位置付けるのが、「ビジョンへの共感」。ここで、自社の「経営理念・方針」が従業員にどれだけ浸透しているか、「事業戦略・運営」をどれだけ認識しているのかを診断する。「ビジョンへの共感が高いほど、ESも高いというデータが出ています」(志田氏)。

 次に「マネジメントの適切さ」では、従業員に対するマネジメントについて「上司のマネジメント」と「人事評価」の2つの側面から調査する。特に、「上司のマネジメント」は重要で、ESの大きな課題になることもあれば、逆に上司から認めてもらう“承認感”が非金銭報酬として機能するケースもある。

 「参画への充実度」では、自社で働くことに、従業員がどのくらいポジティブな感情を持っているかを診断する。仕事そのものへのやりがいの度合い(仕事内容)とともに、仕事によって成長できているか、今後も成長することができると思うか(自己成長)、あるいは将来のキャリアデザインをイメージできるかなどが含まれる。

 続く「企業風土の最適さ」では、社風がESにどのような影響を与えているのかを把握する。組織の文化や風土はいい影響を与えることもあれば、その逆もある。そこで、適切なコミュニケーションが取れているかどうか、また、会社内で常識となっていることが、社会や世間の考え方と乖離していないか、組織風土を従業員はどう捉えているのかを明らかにする必要がある。

 「就業環境の快適さ」には、職場環境と労働条件の2つの観点がある。職場環境とは主にハード面で、仕事に必要な機器の整備、オフィスの収納や動線、空調や衛生状況などが対象。飲食店ではバックヤードの快適さも含まれる。労働条件は、就業時間や休日、業務負担の適切さなどを把握する。

 こうして、抽象的な概念のESを体系的に整理したうえで、自社に即した項目で診断を実施するよう、志田氏は推奨する。また、この診断は「全従業員を対象に年1回は実施するべき」(志田氏)。定期的に行うことで、ESの改善状況が確認できるからだ。

 ただし、ES診断をより的確にするためには、アンケートの設計と運用においてポイントがある。

 その1つが「設問への重要度も聞くこと」。例えば、「上司マネジメント」について満足度を聞くと同時に、この設問内容を、従業員がどのくらい重要だと考えているかも併せて聞くようにする。満足度と重要度をクロス分析することで、ES上の緊急性や優先順位のほか、会社の強みや弱みが明らかになるからだ。満足度が低いものがすべてすぐに対処しなければいけない問題ではなく、満足度が低く、重要度が高いものが現状、従業員のESに大きく関わる領域と考えられるので、優先的に改善策を講じる必要がある。一方、満足度も重要度も高いものは現状、非常にうまくいっており、会社の強みになっていると考えられる。この強みを認識し、さらに伸ばすことで従業員の信頼残高を増やことができる。

 また、10要素のアンケート項目に対して、それぞれフリーコメントの欄を設け、従業員の生の声を収集することもポイント。満足度と重要度の数値化だけでは、その背景や原因を知ることは難しい。フリーコメントを集めて具体的な状態を知ることで、必要なアクションや改善策が打てるのだ。

 加えて、アンケート調査の結果と診断の内容を、必ず従業員にフィードバックすることも大切。「アンケートを通じて、様々なボールが従業員から会社側へ投げられたわけですから、それを会社から従業員へ投げ返さないと、返って信頼残高を減らすことにつながります」と志田氏。そもそも、ES向上は会社側だけの取り組みでは実現しない。フィードバックを通じて従業員にも行動提起を行い、会社と従業員がともにES向上に取り組むことを勧めたい。

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