2019/11/19 特集

【PART1】外国人客 受け入れキーワード10-インバウンドの現状と集客&応対の秘訣(2ページ目)

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「接客」「販促」「体験」のポイントは?

KEYWORD1「接客」

挨拶は日本語でOK。必要最小限のフレーズを覚えよう

 まず、外国人客への接客で気をつけたいことの1つが「最初の挨拶」。村山氏は「来店客に対しては、まずは日本語で第一声を」と語る。大半の訪日外国人は、挨拶程度の日本語は理解しているし、そもそも日本に来たのだから、多少の日本語は使ってみたいはず。また、第一声を日本語で発すれば、日本人とアジア系の外国人を間違えるミスを防ぐこともできる。

 同時に「トラブルになりそうなことには、あらかじめ対応しておきましょう」と村山氏。外国人客で多いトラブルは「お通し」とドリンクなどの「持ち込み」関連。店頭のポスターなどで入店前に絵で示したり、店内でも最初に説明するとよい。ぐるなびの「おもてなしツール」のような、英語をはじめ多言語で、それらの内容を明記したシートを用意しておくと、スマートに案内できるはずだ。

 また、メニューに写真をつけたり、番号を振ってオーダーしやすいようにすることも大切。食材と調理法を明記した外国語メニューがあれば、外国人は安心して利用でき、店にとっても説明する負担が軽減される。

 こうしたツールを用意すれば、語学力がなくても一通りの接客は可能。だが、「飲食店で必須の会話は多くないので、必要最小限の外国語のフレーズは、ぜひ学んでほしい」と村山氏は言う。英語はもちろん、中国人客が多いエリアや店なら中国語のフレーズを最小限でも覚えておくと、選ばれる可能性はぐっと高くなる。「できれば、ネイティブを講師にロールプレイングをしておくと、外国人客の接客に自信がつき、苦手意識の克服にもつながります」(村山氏)。一方、例えばフランス語など、比較的使用頻度が少ない言語は自動翻訳機などを使ってもよいだろう。

 さらに、外国人にとって座り慣れない座敷席は敬遠されがち。掘りごたつやイス席を用意したい。カトラリーは、和食であれば箸を基本にし、リクエストに応じてフォークなどを渡せる用意をしておこう。

 そのほか、外国人に喜ばれるサービスの1つが写真の撮影。特に料理長など日本の職人との記念写真が好評だ。

KEYWORD2「販促」

店頭販促で入店のハードルを下げ、Webで店舗情報を発信する

 インバウンドに向けた販促で、村山氏が勧めるのが「店頭販促」。ホテルや観光施設、交通手段は訪日前に検討し、決定・予約することが一般的なのに対し、飲食店は訪日後に現地で探すケースが少なくない。訪問先を歩きながら、食べたいものや店を探すのは、日本人も外国人も共通する行動パターンだ。

 「まずは、店の前を歩いている外国人の目に留まるように、ポスターや看板を工夫しましょう」と村山氏。例えば、「WELCOME」と英語や中国語などで書いたポスターや看板を店頭に置くだけで、外国人の入店への心理的なハードルはぐっと下がる。それに加えて、多言語メニューを用意していることを知らせたり、キャッシュレス決済に対応していること、世界最大級の旅行に関する口コミサイト「トリップアドバイザー」などのグローバルサイトに情報を掲載していることなどがわかるように、それぞれのロゴやステッカーを貼っておくと、さらに安心感が増し、入店しやすくなる。しかも、こうした店頭販促は、ほとんど費用をかけずに、今すぐ取り組むことができることばかり。効果も高いので、チャレンジする価値は十分にある。

 また、「Web販促」ももちろん重要。自店のホームページを多言語化したり、外国人がチェックしているWebサイトに情報を掲載すれば、効果が期待できる。例えば、先ほど紹介した「トリップアドバイザー」、店舗の情報や写真をGoogle の検索結果やGoogle Map 上に表示できる「Google マイビジネス」、訪日外国人向けの観光情報サービス「LIVE JAPAN PERFECT GUIDE」なども利用したい。「トリップアドバイザー」と「Google マイビジネス」は、経費をかけずに情報を掲載でき、「LIVE JAPAN」では空席情報などを発信することもできるため、ぜひ活用しよう。

 そのほかにも様々なプラットフォームがあるので、自店のエリアに来る外国人がよく利用しているサイトを調査し、利用を検討してほしい。

KEYWORD3「体験」

和食は世界的ブーム。“日本ならでは”の食体験が重要!

 訪日外国人の目的は“モノ”から“コト”へと本格的に移行し、定着した感がある。なかでも「世界的な和食ブームを背景に、日本での食体験は外国人に非常に人気のあるコンテンツの1つ」と村山氏は指摘する。純粋な食体験でもキーワードは「日本ならでは」。寿司や天ぷらなど定番の日本料理だけでなく、その地域ならではの食材を使ったり、特に地方では、その土地だからこそ楽しめる食体験が喜ばれている。

 例えば、居酒屋では地元産の食材を使った料理や、その土地の歴史や文化が反映された郷土料理が好まれており、フレンチでも日本人シェフが日本の旬の食材を活かした料理を提供する店に、季節ごとに通う外国人客もいるという。

 もちろん、握り寿司体験や豪快な職人の技が体感できるマグロの解体ショーなどは根強い人気があるが、「トリップアドバイザー」がまとめた「外国人に人気の日本の体験・ツアーランキング」(2019年7月発表)によると、料理教室や大阪の繁華街の裏通りにある飲食店を食べ飲み歩き、大阪ならではの食べ物と雰囲気が楽しめる街歩きナイトツアーなどもトップ10にランクインしており、プラン作成のヒントにしたい。

 そのほか、ラーメンや焼鳥、お好み焼き、たこ焼きといった日本人の日常食や肉じゃが、味噌汁など家庭料理への関心も高まっており、「きれいに作り込む日本の弁当も注目のコンテンツ」(村山氏)という。外国人が体験したい料理の幅は予想以上に広がっており、例えばアイドルタイムに料理教室や弁当作り体験を行うなど、工夫次第でどんな業態の飲食店にも大きなチャンスがあると言えそうだ。

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