「フードダイバーシティ」のポイント
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飲食店のインバウンド対策で、これからのポイントの1つとなるのが、海外の様々な食文化(食習慣)へのアプローチだ。世界には「ハラール(ハラル)」「ベジタリアン」「ヴィーガン(ビーガン)」をはじめ、多様な食の主義がある。今年9~11月上旬にかけて開催されたラグビーのワールドカップでは、多くのベジタリアンが来日したと言われており、いよいよ目前に迫った2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、訪日外国人の食に対する要求が、これまで以上に多彩・多様になることは間違いないだろう。
フードダイバーシティ株式会社代表取締役の守護彰浩氏は、「“食”は最初のコミュニケーションツール。日本のグローバル化にとって、世界の食の多様性にどう対応するかは、避けて通れない課題です」と語る。その最前線にいるのが飲食店だ。「しっかり取り組めば、必ず成果につながります」と守護氏。では、世界の食についてどう理解し、料理やメニューブックなどに反映させればよいだろうか。守護氏に具体例とともに教えていただいた。
KEYWORD7「フードダイバーシティ」
世界の食の多様性を理解して、対応できる環境整備を進めよう
「フードダイバーシティ」とは、直訳すると“食の多様性”。宗教や主義、健康上の理由などを背景に、食に対して様々なタブーを持つ人が、世界には数多く存在する。訪日外国人にも日本在住の外国人にも、こうした人々が増えており、今後も増加することは確実だ。守護氏は「世界に存在する食の多様性を理解し、彼らが日本で安心して食を楽しめる環境を整備して、みんなが同じテーブルを違和感なく囲めるようになることが“フードダイバーシティ”のコンセプト」と説明。さらに「フードダイバーシティには、訪日外国人(インバウンド)も含めた4つの軸と流れがある」と解説する。
「4つの軸」(上図参照)とは、①外国人在住者、②訪日外国人、③外国人労働者、④輸出。例えば、ハラール(イスラム教徒=ムスリムの食の主義)対応の飲食店ができると、まず①外国人在住者が反応し、来店して情報を世界に発信する。それを見た②訪日外国人が来店し、さらに情報を拡散すると、その店で働きたい③外国人労働者が集まって人材の確保につながる。さらに、店の商品を海外へ④輸出できる可能性が高まる、という新たなフェーズへの流れが生まれる。「実際、ハラールのメニューに魅力を感じた留学生たちが、ハラール対応食のある飲食店でアルバイトを希望する例は珍しくありません」と守護氏。飲食店にとってフードダイバーシティに対応することは、集客以外の効果も期待できそうだ。
では、食の多様性をどのように分類し、理解するとよいだろうか。上図のように「ベジタリアン(肉と魚を食べない)」をベースに、食べられる(プラス)・食べられない(マイナス)で整理するとわかりやすい。例えば、ベジタリアンに「ハラールの肉」(特定の方法で屠畜(とちく)された肉)と魚介をプラスし、アルコール成分の入った調味料をマイナスするとハラール。同様に、ベジタリアンから卵・乳製品・はちみつなど、動物由来の食品をマイナスするとヴィーガンだ。ただし、「個人差はあります。魚などは食べるベジタリアンもいれば、旅先では自国にいるときほどルールに厳しくないムスリムもいます」と守護氏。そのほか、健康上の理由などからグルテンやMSG(グルタミン酸ナトリウム)が食べられない人がいることも知っておきたい。