屋台安兵衛
Key Point
- 皮が薄くパリパリした独特の餃子で差別化
- 絞り込んだメニューの専門店として営業
- 屋台餃子ならではの気軽な利用を推進
屋台で創業して40年。高知名物の餃子で東京進出
四国・高知で1970年から愛され続けている「屋台安兵衛」の餃子は、皮が薄くてパリパリしており、野菜がたっぷり入ったあっさりした味わいだ。特注の皮がデリケートであるがゆえに、あんを包んで長時間置くことができず、注文を受けてからひとつずつ手で包むのが基本。焼餃子は鉄のフライパンを使い、まず鶏のスープを加えて蒸し、続いてたっぷりのサラダ油の中で揚げるように焼いていく。独自の技を要するオリジナル餃子が評判を呼び、屋台では今も1日500~600皿(1皿7個)を販売しており、高知名物として知名度が高い。
高知市の繁華街のはずれに夜になると登場する屋台安兵衛のメニューは、焼餃子とラーメンとおでんのみ。2004年に株式会社エムエフシー(臼井勝社長)を設立してから、高知市内のはりまや町に「いまどき安兵衛」、ひろめ市場内のフードコートのような飲食店の集合施設に「ひろめで安兵衛」を出店し、店舗営業も開始した。また、昼から営業するひろめで安兵衛では、お客に配慮してニンニクを入れない餃子を開発し、さらにいまどき安兵衛では同じ餃子を蒸して、スープとともに提供する水餃子も販売するようになった。
この餃子を武器に、日本の中心である東京でも展開していこうと、2010年10月10日、恵比寿に「えびすの安兵衛」を出店した。JR恵比寿駅東口から徒歩5分ほど、路地をやや入ったところにある15坪30席の店舗で、店内もカウンターや小さいテーブルに赤いスツールを並べ、屋台風の雰囲気を演出している。また恵比寿店では、高知を積極的に紹介しようと、高知の地酒の「菊水」「土佐鶴」「酔鯨」、栗焼酎の「ダバダ火振」などを各500円で提供している。
恵比寿店の客単価は1,800~1,900円で、フードとドリンクの売上比はほぼ半々。フードの中では、餃子が約7割を占めており、焼餃子と水餃子では7~8割が焼餃子、ニンニクありとなしでは、8~9割がニンニクありという比率になっている。
餃子のあんの素材は、豚肉、キャベツ、ニラ、ショウガなどで、ニンニクは入るものと入らないものがあるが、野菜類が半分以上を占め、ニンニク入りでも比較的さっぱりしている。焼餃子、水餃子とも1皿7個420円で、1個約18gと小ぶりなため、女性でも1人で2~3皿食べていくお客が少なくない。
食事利用から最後の締めまで、多様な利用動機に対応
「当店の餃子は、中華料理ではなく、あくまでも高知の屋台餃子なのです」と、恵比寿店の徳弘栄作店長は語る。同店は徳弘店長を含め高知出身の社員3人を中心に、アルバイトが加わって運営している。また、メニューのアイテム数は絞り込まれているが、多様な利用ができるのも屋台餃子の特徴である。恵比寿店でも、週末や夕方の早い時間は食事利用も多く、また待ち合わせの時間までの軽い一杯、二次会や三次会、あるいはそれらのつなぎ、さらには最後の締めとして、気軽に立ち寄ってもらうことを目指している。また昨年12月からは、深夜0時以降に入店したお客には生ビール500円を半額の250円で提供するサービスを開始した。現在は平日は平均80人、金曜には100人ほどを集客し、着実に基盤を固めている。
同店が高知の屋台餃子での伝統と実績を基に、東京進出1号店も軌道に乗せている要因は、以下のようになるだろう。
1注文を受けてからひとつずつ手で包む、薄くパリパリした独特の皮の餃子で差別化している。
2絞り込んだメニューで専門店としての認知度を高めている。
3屋台餃子ならではの気軽で多様な利用を推進している。
現在、餃子のあんは、高知の「いまどき安兵衛」の厨房で、仕込みの専任スタッフが4店分を一括して仕込んでいる。豚肉にしても、昔からの地元の馴染みの精肉業者から、同店の仕様で配合したミンチを届けてもらっているため、品質の安定や効率の面でも有利だからだ。
「特注の薄い皮であんを包んだり、餃子を焼いたりする技術が必要ですから、すぐに多店舗化できるわけではありません。当店をきっかけに、東京の方が高知を訪ねてくれたり、逆に高知に行ったときに屋台で餃子を食べて、東京でもここに食べに来てくれるなど、当店から情報発信していけるといいですね」という徳弘店長。恵比寿店では女性客が3~4割を占め、外国人客も訪れており、都心で多様な客層に高知をアピールする一役を担っている。
東京都渋谷区恵比寿4-9-15 萩原ビル1F
TEL
03-3445-3008
営業時間
17:30~翌3:00(日~翌1:00)
定休日
月曜