2020/04/08 繁盛の法則

4種の独創的な麻婆豆腐で多店舗化を目指す専門店とは

東京・淡路町にある麻婆豆腐専門店「麻婆豆腐TOKYO 神田本店」。中国料理以外の食材や技法も取り入れ、オリジナリティのある4種類の麻婆豆腐を提供。連日ウエイティングが出るほど人気を呼んでいる。

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麻婆豆腐TOKYO

Key Point

  1. 中国料理の定番の麻婆豆腐で専門店化
  2. 調理経験や技術を生かし独自の商品を開発
  3. 少品目でも選べる楽しさを訴求

中華をはじめ多彩な業態での勤務経験を経て独立開業

 2019年12月、東京・淡路町にオープンした「麻婆豆腐TOKYO 神田本店」は、個性的な麻婆豆腐4種をそろえ、15坪20席の小規模店ながら、ビジネス街でのランチ需要をしっかりとつかんでいる。

 経営元は株式会社ワールドインフィニティで、代表取締役の大久保俊祐氏にとって、同店が独立創業店になる。大久保氏は1979年東京・葛飾区生まれで、東京・鶯谷の調理師学校を卒業後、千葉の中国料理店に7年間勤務し、うち5年は調理長を務めていた。その後、多業態を展開する外食企業に転職し、イタリアン、フレンチ、カフェ、ラーメン、居酒屋、立ち飲み、バーなど、多様な業態を経験した。

 麻婆豆腐専門店の構想は10年ほど前から持ち始め、20種ほどのレシピを考案していた。「麻婆豆腐に着目したのは、専門店としての目新しさと、自分が今まで中国料理以外の料理にも携わった中で学んだ、様々な調理技術や食材を扱うテクニックを、すべて麻婆豆腐に生かせるのではないかと考えたからです」と語る大久保氏。豆腐を使った中国料理という基本は押さえながらも、中国料理以外の食材や技法も取り入れている。現在は、香り、味、色合い、食感という料理の4つの主要な要素において、それぞれの違いを明確に出せ、バランスが良く、オリジナリティのある4種類の麻婆豆腐を提供し、夜のみ激辛メニュー1品を加えている。

 看板商品の「東京麻婆豆腐」(1210円)は、鶏ガラ、豚ガラに、香味野菜を加えて取ったスープをベースに、3種の豆板醤、甜面醤(てんめんじゃん)、数種のサンショウやトウガラシなどを独自に調合し、辛さの中に旨味や深みを感じさせる味わいに仕上げている。辛さは、お客の好みに応じて、小辛、中辛、大辛の3段階で調整する。主な具材は、豚の粗挽き肉と木綿豆腐の角切り。この「東京麻婆豆腐」をベースに、中国で最も辛いトウガラシの「満天星辣椒」を追加し、さらにはホールのまま素揚げしてトッピングにも使用してインパクトを強めたのが、夜のみ提供している激辛の「炎魔(えんま)」(1628円)。「自己責任でご注文ください」という注意書きを添えている。

 特に女性に人気を得ているのが「チーズカレー麻婆豆腐」(1320円)で、クミンやガラムマサラなどのカレー用のスパイスを加え、とろけるチーズでまろやかさを出した、黄色っぽい色合いの小辛の商品である。

 「酸辣(スーラー)麻婆豆腐」(1210円)は、しょうゆベースの味付けに酸味とニンニクの風味、トウガラシの辛さを加え、中辛に仕上げている。具材は豚挽き肉、ニラ、崩した木綿豆腐、ふわっと炒めた卵で、なめらかな食感を強調している。

 このほか、トウガラシを使わずに、まったく辛くない「無辛(むから)」の麻婆豆腐も開発した。塩味で白っぽい色合いの「うま塩麻婆豆腐」(1100円)は、鶏モモ肉のブツ切り、キノコなどゴロゴロした具材と、崩した木綿豆腐を加え、青サンショウの爽やかな香りで中華風の味わいを出している。

ハーフサイズで2種を選べる「W麻婆豆腐定食」(昼1200円、夜1500円)の一例で、定番の「東京麻婆豆腐」(写真右)と、辛くない「うま塩麻婆豆腐」(同左)の組み合せ。定食ではお替り自由のごはん、スープ、ザーサイが付く。デザートの「白ごまの濃厚杏仁豆腐」(単品418円、定食とのセットはプラス100円)は、白ゴマのコクと香りがユニークで、優しい食感が辛さを和らげてくれる

麺の導入で商品力を高め、300店舗の展開を目指す

 それぞれ特徴のあるこれらの麻婆豆腐は、単品やテイクアウトでも販売しているが、メインはお替り自由のごはん、セルフサービスのスープ、ザーサイが付く定食である。好みの麻婆豆腐の普通サイズ1種を選ぶ「麻婆豆腐定食」(昼950円、夜1200円)と、ハーフサイズで2種を選べる「W麻婆豆腐定食」(昼1200円、夜1500円)がある。昼の客単価は1000円で、1日平均80~100人を集客している。13時ごろまでのピークの時間帯は男性が8割を占めるが、それ以降は女性が多くなる。夜は酒や中華の酒肴も提供し、客単価は2500円。1日に30~40人を誘引している。

 同店が麻婆豆腐専門店として、連日ウエイティングが出るほどお客を惹き付けている要因は、以下のようになるだろう。

  1. 中国料理の定番メニューである麻婆豆腐で専門店化を図っている。
  2. 自身の調理経験や技術を生かし、独創的な商品を開発している。
  3. 少品目でも選べる楽しさを打ち出している。

 また、今春からは麻婆豆腐と麺を合わせた麻婆豆腐麺を導入する予定で、これによりさらに商品力を高めていきたいという。「麺は、麻婆豆腐の種類に合わせて変えていく予定で、汁あり、汁なしなど、いろいろ考えています。麻婆豆腐だけで4種類あって、ご飯や麺と合わせられる店は、ほかにはないですし、非常に面白いと思います」と大久保氏は自負する。

 この神田本店で様々な実験を重ねながら、多店舗化に着手する意向で、「将来的には300店舗を目指したい」と、大久保氏は「有言実行」で邁進していく考えだ。

麻婆豆腐TOKYO 神田本店
住所
東京都千代田区神田司町2-4-2 ME神田司町ビル1階
TEL 03-6811-6890
営業時間
11:00~15:00(L.O. 14:30)、17:00~22:00(L.O. 21:30)
定休日
日曜日