2020/04/17 特集

飲食店の店舗ミーティングを成功させる6つの原則

飲食企業・飲食店の経営において必要な社内会議には、店長会議をはじめ、幹部会議、店舗ミーティングなどがある。開催の目的を明確化した戦略的会議の必要性やポイントを、経営コンサルタントの話と企業事例から考察する。

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更新日:2024.12.1

コンサルタントが語る戦略的会議のススメ

飲食企業・飲食店の経営において、さまざまな役割を果たす社内会議。経営コンサルタントの三ツ井創太郎氏は、多種多様な会議ごとに役割があり、PDCAサイクルを回しつつ、数値目標と成功事例の共有にあると指摘。また、会議を意味のあるものにするために必要なものとして、しっかりとした事前準備や、参加者が守るべきルールの設定などをあげた。

株式会社スリーウェルマネジメント 代表取締役社長 経営コンサルタント 三ツ井創太郎氏
大学卒業後、飲食企業に就職。最年少で飲食部門統括責任者に昇進。多店舗化に向けた組織構築や業態開発などを10年以上経験した後、株式会社船井総合研究所に入社。入社2年で飲食部門のチームリーダーとなり、多数の飲食企業の支援を行う。2016年、株式会社スリーウェルマネジメントを設立。海外を含む個人店から大手外食企業まで幅広くサポートする。著書に「飲食店経営“人の問題”を解決する33の法則」(同文舘出版)がある。
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コンサルタントが語る戦略的会議のススメ
会議の種類/店長会議、総括会議など多種多様
会議の目的/①メニュー、販促計画のPDCAサイクルを回す
会議の目的/②KPIの確認と事例共有
会議の進め方、戦略化の6つのポイント事前準備やルールの設定
【事例紹介】この会議がスゴイ!/株式会社こころ

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会議の種類

定例の店長会議のほかに総括会議や不定期の会議も

ひと口に「会議」と言っても、その形態や種類は多種多様だ。そこではじめに、飲食店や外食企業で一般的に行われる会議の種類を整理しておこう。飲食店専門のコンサルティング会社である株式会社スリーウェルマネジメント・代表取締役社長の三ツ井 創太郎 氏は、「企業の規模や店舗数などに応じて必要な会議の種類は異なります」と前置きした上で、「複数店舗を展開する企業において最も一般的なのが、各店の店長が一堂に会して行われる店長会議。これに加えて、経営層や部長クラスなどによる幹部会議、店舗単位で実施される店内ミーティングも、会議の代表例です」と説明する。

これら3種類の会議の位置付けは、上流から順に、幹部会議→店長会議→店内ミーティングとなる。「幹部会議で決定した大きな方針に沿って、店長会議で具体的な目標や販促方法などを話し合い、さらに各店長が自店にその内容を持ち帰り、店内ミーティングを通してスタッフと情報を共有し、実行レベルに落とし込む、というのが全体の大きな流れです」(三ツ井氏)。

このほかにも会議の種類として、年間の取り組みを振り返って表彰などを行う総括会議や、特定のテーマについて店舗を超えて横断的に実施されるプロジェクト(委員会)会議などがある。例えば、各店の料理長が集まって季節限定メニューを決める会議や、Web販促などテーマを絞った会議は、プロジェクト会議に分類される。また、不定期に行われる会議として、突発的に生じた問題や緊急の課題への対応を話し合う対策会議などがある。

このように、種類によって目的や性質が異なるため、会議では進行役はもちろん、参加メンバー全員が会議を開催する目的をきちんと認識しておくことが大切になる。「その点があいまいになっていると、なんとなく集まって近況を報告し合うだけといった、中身のない会議で終わりがちです。あるいは、会議を開いたこと自体に満足し、その後の行動につながらない無意味な会議になってしまうでしょう。会議の目的を明確化し、戦略的に進めることが求められます」と三ツ井氏は助言する。次の項からは、最も一般的な会議である店長会議に焦点を当てながら、会議の目的と戦略化のポイントを具体的に解説していく。

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会議の目的/①メニュー、販促計画のPDCAサイクルを回す

コンテンツ=商品の戦略をしっかり固めることが大切

店長会議の目的は、大きく分けて2つ。1つ目は「販促のPDCAサイクルを回すこと」、2つ目は「KPIの確認と事例共有」だ。この2つを話し合って決めていける場は会議しかなく、その点でも外食企業、飲食店において会議を開く意義は大きい。

まず、1つ目の「販促のPDCAサイクルを回す」を詳しく見ていこう。一般的に飲食店におけるPDCAとは、下の表のようになる。

P(=Plan)は、「誰に向けて」「何を」「どうやって」販促していくのか計画を立てること。「何を」はコンテンツを指しており、グランドメニューのほか、宴会コース、季節限定のおすすめメニューなどが挙げられる。「どうやって」は、どんな媒体や販促ツールを使い、いくらコストをかけるのかも決める。Planの中でも特にコンテンツ、つまり「商品戦略をしっかりと固めることが最優先」と三ツ井氏は指摘する。「ありがちな失敗例として、売り込むコンテンツを決めずに販促に取り組んでしまい、結局、PRするものが割引になるということがあります。そうなると商品販促ではなく、『販促のための販促』になってしまいます。また、コンテンツの開発が不十分で、クオリティーが低いものを販促してしまうと、わざわざお金をかけて“不満足”を宣伝することになってしまうので、注意が必要です」(三ツ井氏)。

次に、D(=Do)は、販促などの計画を、「いつから」「誰が」行うか会議で話し合って決め、実行すること。

続いてC(=Check)は、振り返りのステップだ。計画に沿って実際に行った販促について、その実績を集計し、結果を分析する。該当メニューの販売数や宣伝媒体ごとの効果など、どの数値をどのように測定するのかあらかじめ決めておき、漏れなく集計して次回の会議で活用することが重要だ。加えて、プランを実行する際のオペレーション上の問題点を検証するなど、数値以外のチェックも必要になる。

そしてA(=Action)は、ここまでの分析結果をもとに課題を明確にして改善策を会議で出し合い、企画のブラッシュアップや具体的なアクションプランの策定につなげること。以上のPDCAを毎回の会議で繰り返し、サイクルを構築していくことが店長会議の大きな目的の1つだ。

「ここでのポイントは、常に先を見通しながらPDCAサイクルを回すこと。最低でも翌月、できれば2~3カ月先を見ながら販促計画を話し合う必要があります。理想としては、あらかじめ年間を通じた商品戦略や販促戦略の大枠をきちんと決めておき、それに基づいて余裕を持って逆算しながら、具体的な商品企画を進めたいところです。例えば、歓送迎会シーズンの直前に慌てて販促計画を考え始める、あるいは『売上が悪いから、来月はチラシ販促をやろう』といった行き当たりばったりの販促では、成果を得ることはできません」 と三ツ井氏は注意を促す。販促を効果的に行い、売上アップにつなげていくためにも、店長会議を定期的に実施することと、その中でPDCAサイクルをしっかりと構築することが重要なのだ。

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会議の目的/②KPIの確認と事例共有

具体的な数値目標や事例が一歩を踏み出す後押しに

もう一つの会議の目的、「KPIの確認と事例共有」について見ていこう。KPIとは、「Key Performance Indicator」の略で、「重要業績評価指標」と訳される。目的に対してキーとなる重要なプロセスが適切に実行されているか、定量的に測定する指標で、飲食店経営においても有効なマネジメント手段だ。

店長会議における「KPIの確認」とは、KPIをあらかじめ設定し、その数値を店舗ごとにモニタリングして分析。各店の課題や成果を踏まえて改善策につなげる取り組みを指す。このとき、最初のKPIの設定で注意すべきポイントがあると三ツ井氏は言う。「例えば、得たい成果が『売上予算達成』である場合、KPIを『売上予算達成率』や『売上高』に設定しがちですが、実はこれではKPIとして機能しません。なぜなら、売上予算達成率や売上高は、結果であってプロセスではないから。『来月の売上予算達成率を○%に上げよう』と言われても、そのために具体的にどんな行動をすればいいのかがわかりません。大切なのは、店長が一歩を踏み出すきっかけとなるKPIを設定することです」(三ツ井氏)。

『売上予算達成』に向けたアプローチは、下の表にあるように、大きく4つに絞られる。客数アップのために①新規客を増やす、②リピーターを増やす、そして、客単価アップのために③一品単価を上げる、もしくは④オーダー数を増やす。これら①~④の中からどれか1つ、または複数の項目をKPIに設定し、目標を決めていく。

例えば、④をKPIに設定した場合に、単に「オーダー数を増やす」を目標にするだけでは、KPIとして不十分だ。具体的な行動と数値を目標に定めることがポイントで、「ドリンクのおすすめを徹底し、来店客1人当たりのドリンク注文数を現状の2.5杯から3.0杯に増やす」とすればわかりやすく、店長に行動を促しやすい。

「適切なKPIを設定するには、店の現状の課題や強みを正確に把握しておくことが必要不可欠です。これを怠ると、現状を正しく認識しないまま、見当違いの数値目標やアクションを設定することになりかねません。そうした“頑張り間違い”を起こさないためにも、店長会議の上流に位置する幹部会議や、店長会議の準備段階において数値を分析し、課題を明確化する作業が必須になります」(三ツ井氏)。

ただしここでも、会議の場で数値の分析に取りかかっていては、建設的な議論にたどりつく前に時間がオーバーしてしまう。会議は、数値を集計・分析した結果を持ち寄り、話し合う場であることを改めて念頭に置きたい。

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成功事例を「暗黙知」にせず、ノウハウとして資産化を

現状の分析を経て課題が明確になり、KPIの項目と具体的な目標が定まったら、次はその目標を達成する方法を考えていく。その際に効果的なのが、会議で成功事例を共有することだ。例えば、系列店の中でドリンクのオーダー数が多い店舗の店長が、普段から店で実践しているドリンクのすすめ方を発表し、共有することで、ほかの店長も一歩をより踏み出しやすくなる。「自店の成功事例やノウハウを、1人の店長だけが知っている“暗黙知”の状態にとどめず、会社の資産として活用していくことが重要です。これも、普段は異なる場所にいる店長が、一堂に集まって会議をする大きな意義と言えます」と三ツ井氏は話す。

今回は、KPIの例としてドリンクの注文数を挙げたが、このほかにも①の新規客獲得を目指すのであれば、「Webページの更新回数」などを、②のリピーター獲得なら「QSCレベル」や「会員登録数」を、③の商品単価アップなら「おすすめメニューの出数」などをKPIに設定してもよい。そのKPIに関して店長会議で成功事例を共有し、自店でどう取り組んでいくか、アルバイトを含むスタッフと店内ミーティングで話し合うと効果的だ。

ここで陥りやすいのが、店長会議の場では事例を共有して士気が上がったものの、いざ店に戻ると日々の営業や業務に追われ、取り組みが後回しになり、KPIが頭から抜けてしまうことだ。「だからこそ、店長会議終了後は、各店でのミーティングや取り組みを店長任せにせず、本部のマネジャーやSV(スーパーバイザー)が現場に一緒に入ってフォローをすることが大事になります」(三ツ井氏)。

加えて、店舗での取り組みの成果がKPIの変化に表れてきたら、本部はその事実をきちんと評価し、次の店長会議で成功事例として共有するようにしたい。こうした小さな成功体験の積み重ねが、店長の自信やモチベーションにつながっていくのだ。

まとめると、店長会議におけるKPIの設定・確認とは、やるべき内容(アクション)を決めることであり、具体的な目標と成功事例があれば、一歩が踏み出せるはず。そして、KPIに設定した項目を継続的にモニタリングし、その結果をもとに成功事例をみんなで共有して、店長たちの成功体験につなげる。会議では、こうした好循環を作り上げていくことが重要になる。

「店長会議が活性化しないのは、原因として、そもそものKPIの設定が間違っているか、もしくは成功事例をうまく拾えていない可能性が高い。これらのポイントを意識して改善することで、会議の質は格段に高まります」と三ツ井氏はアドバイスする。

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会議の進め方、戦略化の6つのポイント

より良い会議を常に模索し、変化させていく姿勢が大切

「会議は開いて終わりではなく、会議で決めたことをきちんと実行に移してこそ意味を持ちます」と三ツ井氏が指摘するように、会議は“運用する”意識が大切。「だからと言って、最初から完璧で精度の高い運用を目指す必要はなく、実際に取り組みながら、自社にとって“より良い会議”とは何かを考え、柔軟に在り方を変えていくことが大切です。それが会社としての個性やノウハウになっていきます」(三ツ井氏)。ではここで、会議を戦略的、かつスムーズに進め、しっかりと運用するために必要なポイントを押さえておこう。

1.事前にしっかり準備をする
会議のスムーズな進行には、発表資料などの事前準備が不可欠だ。ただし、資料の準備で店長などの日常業務が圧迫されては本末転倒になる。本部があらかじめフォーマットを用意しておくなど、作業の効率化に努めたい。

2.全員の発言を促す
参加者全員が主体的な姿勢で会議に臨み、発言することが理想。それを促す方法として、店舗での目標の達成状況を、全店長に順番に報告してもらう時間を設けるといい。「単に数字を読み上げるのではなく、目標に対してどのような取り組みを行い、結果がどうだったのか、数字だけでは見えない部分を報告・共有することに意味があります」(三ツ井氏)。ほかにも、店舗運営に関する各店長の悩みごとや困っていることを話し合う時間を作るのも、活発な意見交換につながりやすい。

3.ルールを決める
「集合時間厳守」「会議中は携帯電話を触らない」など、基本のルールを決めておくことも、限られた時間内で意味のある会議を行うために有効だ。

4.定期的に開催する
店長会議や幹部会議、店内ミーティングは、PDCAを構築する上でも月1回は開催したい。また、参加者の集中力を保つため、1回の会議時間は1時間程度に収めるのがベスト。それを超える場合は休憩を挟むといいだろう。

5.議事録を作成する
会議で決まった内容について、誰が、いつまでに、何を、どうするかを明文化し、記録に残そう。店長会議の議事録があることで、店長が自店に戻ってスタッフに決定事項を伝える際にも、的確な情報共有が可能だ。

6.店内ミーティングも実施
店内ミーティングは、店長会議で決めたアクションプランを現場でどう実行していくのかを話し合う場であり、「チームビルディング」が大きな目的となる。特に、ホールとキッチンの両方のスタッフにアクションの目的を明確に伝え、双方のコミュニケーションを図ることが重要だ。「例えばKPIに『おすすめメニューの出数』を設定したとき、キッチンのオペレーション上、調理に時間がかかる、器が足りないといった問題が発生するかもしれません。店内ミーティングは、そうした課題を先にあぶり出して対策を考える場。つまり、アクションプランを現場に合った形へ調節する機会でもあります」と三ツ井氏。そのため、店内ミーティングはアルバイトを含めた店舗スタッフ全員の参加が望ましい。もし参加できないスタッフがいる場合は、LINEなどのツールも活用しながら、確実な情報共有を図りたい。

働き方改革や人手不足、コロナ禍などの影響によって、飲食業界でもリモート会議の導入などが進んでいる。ただ、対面・オンラインを問わず、会議の目的を明確化して戦略的に進める大切さは変わらない。会議を戦略化することが店の成長、ひいては経営全体の戦略化にもつながることを心に留め、ぜひ直近の会議から実践してほしい。

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【事例紹介】この会議がスゴイ!/株式会社こころ

ここからは、実際に効果的な会議の運用で成果を上げている飲食企業の事例を紹介。静岡県にある株式会社こころでは、組織と会議の目的を明文化するほか、ITを活用して資料作成を効率化し、会議を通して“外食ビジネスマン”を育てることに注力。さらに、金銭的、時間的コストのムダを省いた開催方法を取り入れている。

この会議がスゴイ!/株式会社こころ
各会議の役割を明確にし、ムダなく話し合える場に
【ここがスゴイ!】組織と会議の目的を明文化して体系化
【ここがスゴイ!】ITを活用した資料作成の効率化と“外食ビジネスマン”を育てる会議内容
【ここがスゴイ!】金銭的&時間的コストのムダを省いた開催方法

DATA
株式会社こころ

●開業/2007年8月
●事務所所在地/静岡県浜松市中区砂山町350 浜松駅南ビルディング7F-A
●従業員数/社員40名 パート・アルバイト約300名
●店舗/「居酒屋てんくう」「てんぷらとぶり UOTEN」など計21店舗(FC含む)

各会議の役割を明確にし、ムダなく話し合える場に

静岡県浜松市に本社を置き、“外食IT企業”を掲げる株式会社こころ。主力ブランドの居酒屋「てんくう」をはじめ、天ぷらとブリ料理が売りの「UOTEN(うおてん)」、焼鳥がメインで280円均一の「てらきん」など、FCやグループ会社を含めて、現在、静岡県内を中心に21店舗を展開する。

2007年8月の開業以来、順調に店舗数を伸ばしてきたが、10店舗目を出店した頃、現場から問題点が上がってくるようになったという。「当時は出店で忙しく、エリアマネージャーの職務などもはっきりしていませんでした。本来、マネージャーが数値責任を持ち、各店舗の問題点を改善していかなければなりませんが、数字を分析し、共有する場もなかったんです。そこで、外食チェーン出身の社員の話を聞いたり、コンサルタントのサポートを受けながら、“会議体”を定義することから始めました」と、代表取締役社長の渡邉一博氏は振り返る。そこから組織や会議の体制整備に努め、現在は各会議の目的や参加者、開催日程などを明確に定め、体系化している。

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【ここがスゴイ!】
組織と会議の目的を明文化して体系化

  • 会議の体制を整備するにあたり、まずは「会議体」を定義することからスタート。その目的は意思決定であるとした
  • 各会議の名称とオーナー、メンバー、オブザーバー、開催曜日と時間を一覧にし、周知を徹底。どの会議がいつ行われるのか一目でわかる
会議を行う上で大前提となる項目を明文化。目的を明確にし、参加者が同じ目的意識を持つことで、意義のある会議を生み出している

そのうちの1つである店長会議は月1回、全店の店長と全エリアマネージャーが浜松の「てんくう モール街店」に集まり、10~17時に実施。社長・副社長、人事部長、営業部長、IT事業の責任者も参加し、午前は渡邉氏による理念の共有や副社長からの全社的な数字の報告、新たに導入するITツールの説明などが行われる。そして、午後は外部講師を迎えて店長教育セミナーを開催。この店長会議の最大の目的は一致団結することで、「各店の売上といった細かい数字の話はせず、目標達成店舗を表彰するなど、ポジティブな場にすることを心がけています。本部から距離的に離れていて、孤独になりがちな店長にも一体感を持ってもらえるよう、移動コストがかかっても全員が顔を合わせることが重要と考えています」と渡邉氏は狙いを語る。

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【ここがスゴイ!】
ITを活用した資料作成の効率化と“外食ビジネスマン”を育てる会議内容

全店長が一堂に会する店長会議。社長による時事に絡めた会社の理念共有や、全社的な売上など俯瞰的な数字の報告、外部講師によるセミナーなどが行われる
  • 「業態マイスター制」を設け、業態ごとに営業マイスターと開発マイスターを配置。各マイスターがミーティングを重ね、メニューなどを決定する
  • ITを活用し、POSデータなどをもとに各店舗の週の売上、客数、客単価などが自動的にGoogleスプレッドシートに集計される
店長会議の後は飲み会で交流を図る。店長会議後は、宴会シーズンに向けての決起集会を行うことも。客の視点で宴会コースを食べ、ここで出た意見を反映するなどしている

一方、各店舗の売上動向や着地予想など、具体的な数字をもとに話し合うのが、週1回のマネージャー会議だ。営業部長と全エリアマネージャーが参加し、約1時間行われる。各店舗の数字は、独自に構築したITシステムにより本部が一括管理。自動的に決算書に近い形で集計することができ、資料作成の効率化、ひいては会議の生産性の向上につながっている。また、各店の店長はこの数値を週ごとに分析し、リポートを提出。エリアマネージャーがそれぞれの状況を把握し、会議で報告・共有する。こうした作業を通じ、「社員には様々なスキルを身につけてもらい、精神論ではなく、数字で語れる“外食ビジネスマン”になってほしい」(渡邉氏)と考えている。

そのほか、毎週月曜日は社長・副社長と各部門のトップが参加し、制度改正やトラブルなどに対する全社的な対応を話し合う幹部会議を開催。さらに、経営幹部と営業・開発・販促・デザインの各部門の担当者が参加する週1回のプロモーション会議なども行っている。プロモーション会議では大まかな年間販促予定を組みながら、業態別のフェアの担当とスケジュールを決定。店舗からプロモーションのアイデアが出れば、この会議で検討・精査して、実施につなげている。

また、業態開発や新規出店の際は特別プロジェクトを発足し、各部門を横断したメンバーが週1回会議を行う。メニュー開発においても“業態マイスター制”を設け、ブランドごとに営業マイスター、開発マイスターという責任者を置き、各責任者のミーティングを経てメニューを決定している。

これら会議に関連するコストを削減するため、月1回の店長会議以外は、遠隔地エリアの参加者がいる場合、テレビ会議を行っている。昨年までエリアごとに別日程で行っていた年始の社長挨拶も、今年はYouTubeのライブ配信機能で一斉に発信し、時間的なムダを省いた。渡邉氏は、「会議の目的と参加者の役割をはっきりさせているので、リモートでも支障なく、円滑に会議を進められています」と話す。

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金銭的&時間的コストのムダを省いた開催方法

会議の種類によっては、本社から離れた場所にいる社員とはテレビ会議を行い、移動コストを削減。資料もGoogleスプレッドシートなどで共有する
年始の社長挨拶もYouTubeを利用したライブ配信で実施。移動に伴う時間のムダやコスト削減につながっている

今後は、特に「UOTEN」の店舗展開に力を入れ、「東京や名古屋など都市部にモデル店を出店し、FC展開を進めていきたい」と渡邉氏。合わせて、現在は各店の自主性に任せている店舗ミーティングの開催についても、将来的には全店舗で行う仕組みを構築し、店舗力の強化を図る考えだ。

代表取締役社長 渡邉一博氏
大手IT企業勤務を経て32歳のときに現副社長と共に起業し、飲食業界へ。ITを最大限に活用して店舗を展開するほか、静岡の食に特化したECモールの運営なども行う。
居酒屋ダイニング てんくう 有楽街店
静岡県浜松市中区田町316-30
有楽街ブルーノアビル1F
JR浜松駅から徒歩約10分の有楽街商店街に立地。「てんくう大橋出し巻き玉子」などを名物に、ビジネス層を中心に集客する。
てんぷらとぶり UOTEN
静岡県浜松市中区田町329-12
https://r.gnavi.co.jp/n47kx4a30000/
遠州鉄道第一通り駅から徒歩3分。全136席の居酒屋。1個から注文可能な天ぷらと、宮崎の黒瀬ぶりを使った豊富なメニューが売り。

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