更新日:2024.9.17
《行楽・お祝い事・家飲み》こだわりのテイクアウト
行楽やお祝い事のシーズンには、オードブルなどホームパーティ用の特別なテイクアウト需要がある。具体的にどんな打ち出し方で売れる商品を生み出しているのか、5つの事例から考える。
目次
1.看板食材を使ったバーガーが広告塔となり、認知度アップ!
2.記念日から普段使いまで! フレンチらしさにこだわった無化学調味料のオードブル
3.30年以上愛され続ける「蒸し豚セット」。贈答品としても好評!
4.店の名物を少しずつ詰めた弁当で、家飲み需要に応える
5.「店の味」を自宅でも忠実に再現! 一度で2回おいしい特別セット
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看板食材を使ったバーガーが広告塔となり、認知度アップ!
魚丸ごと原始焼き×あしたか牛の炭火焼 やまだい 本厚木【神奈川・本厚木】
SNSで拡散され利用増加。夜の集客にもつなげる
神奈川・本厚木駅から徒歩5分の居酒屋「やまだい 本厚木」は、オーナー・大川英利氏の地元である、静岡・沼津の魅力発信と食材の流通を目指して創業。畜産家の父が育てたブランド牛「あしたか牛」の炭火焼きと、沼津港に水揚げされる魚介を串に刺して炭火で焼き上げる「原子焼き」を中心に提供する。メインターゲットは、「素材の価値が分かる30~60代のややアッパーな層」と大川氏。主に地元に住む人々や近隣企業に勤めるビジネス層などを集客し、特に40、50代の常連客を多く獲得している。
テイクアウトを始めたのは、昨年4月。当初はランチ用の弁当を多種類用意したが、「弁当は競合が多く、価格勝負になりがちでした」と大川氏は話す。また、弁当は手間がかかり、人員を絞って運営しなければならない状況下では負荷が大きかった。
そこで1月より始めたのが、ハンバーガーを昼のテイクアウトのメインに据えること。大川氏は「ハンバーガーであれば、親しみのある商品なので、お客様に付加価値や質の良さを分かってもらいやすい。『あしたか牛』や『沼津産』など、素材の特色を出したハンバーガーで差別化すれば、高単価でも勝負できると思いました。また、弁当よりもオペレーションが軽減できるとともに、あしたか牛の認知向上にもつながると考えました」と語る。
早速、あしたか牛でパティを開発。つなぎを使わず、肉の食感を生かし、うま味を凝縮して焼き上げた。価格やボリュームは、ファミリーレストランのハンバーグやチェーン店のハンバーガーを参考に決定し、「おやじが育てた牛 あしたか牛のてりやきハンバーガー」として810円に設定した。そのほか、沼津産のアジを2枚使用した「沼津あじフライバーガー」(756円)、ノルウェー産のサバを使った「脂のったサババーガー」(同)をラインナップし、目玉焼きやアボカド、チーズなどのトッピング(108~162円)も用意。「多様な楽しみ方を提案することで、何度も利用してもらいたい」(大川氏)と考えたという。
そして「昼だけハンバーガー屋やまだい」と銘打ち、店頭の看板やSNSで発信すると、徐々に売れ行きがアップ。利用客の1人が地元の人たちが集まるLINEグループに投稿したことで、一気に認知が拡大した。「ハンバーガーで店とあしたか牛を知ったというお客様が夜に来店するなど、店内の集客にもつながっています」と大川氏。1日に3種合わせて平均約20個販売しており、近隣企業に勤めるビジネス層のほか、自宅でリモートワークをする人や主婦、ファミリーなどが購入しており、週1~3回利用するコアなファンも生まれている。「利益率は高くないですが、店の広告塔として十分な効果を感じています。片手で食べられる気軽さは、仕事の合間のランチに向いている。屋外でも食べやすいので、気分転換や子どもと一緒に公園に訪れる際に購入するお客様も増えています」と大川氏は手応えを語る。今後も来店客のニーズや状況に合わせ、柔軟に対応していく考えだ。
神奈川県厚木市寿町3-1-1 ルリエ本厚木1F
https://r.gnavi.co.jp/ncfu7vkc0000/
記念日から普段使いまで! フレンチらしさにこだわった無化学調味料のオードブル
La・miroir(ラ・ミロワール)【沖縄・浦添】
昨春からニーズが急増! 平日の注文数も増加
2003年に沖縄・浦添にオープンしたフランス料理店「La・miroir」。“人生の1ページを彩る店”をコンセプトに、誕生日やプロポーズといった記念日利用に注力し、カップルや夫婦、女性グループを中心に集客している。料理には化学調味料を一切使用せず、ブイヨンやフォンドボーも手作り。1年を24の暦で分ける「二十四節気」を意識し、生産者の顔が見える旬の食材を多く取り入れ、県南部の糸満の市場から毎朝仕入れる野菜など、沖縄産食材にもこだわっている。
テイクアウトは、コースのメインとなる肉・魚料理や、フレンチの技を生かしたカレー(980円)、「大正レトロ玉子サンド」(1200円)をはじめとするサンドイッチ類など種類豊富。中でも、1号店が那覇に店を構えていた20年以上前から提供する「フレンチオードブル」は現在、5400円(料理11種)、8640円(同13種)、1万800円(同15種)の3タイプをそろえる。副料理長の屋部海斗氏は「3種類とも全て5人用を想定しており、価格ごとに食材が異なります。一番人気は8640円のもの。オードブルの定番である揚げ物は入れず、フォアグラなどをメインに使い、あくまでフレンチであることを前面に出して差別化しています」と話す。他店で購入した違うジャンルの料理に合わせて注文する人も多く、「お寿司のほかに、当店でフレンチオードブルを頼まれるケースなどもよくあります」と屋部氏。そのため、以前各オードブルに入れていたサーモンの手毬寿司」は「日替わりキッシュ」に変更。利用客の要望に合わせ、料理の内容は随時ブラッシュアップしている。また、「沖縄は正月におせちではなくオードブルを食べるなど、独特の文化があります。老若男女さまざまな人が集う場所で食べられることが多いので、誰が食べても安心なものを心掛けており、コロナ禍でより意識するようになりました」(屋部氏)と、予約時には利用シーンに加え、年齢構成やアレルギーについても必ずヒアリング。鮮度や安全性にも留意することで、店への信頼感も高まっている。
そのほか、旧正月や清シーミー明祭(墓参りをして先祖を敬う行事)といった沖縄特有の慣習に合わせたスペシャルオードブルのほか、バレンタインにはカップル向けに2人用のオードブルを用意するなど、イベントごとにアレンジを加えた限定メニューも展開。こうした内容を店内外の看板や、Facebook、Instagramなどでアピールすることで、常連を中心に認知を高め、リピートにつなげている。
昨春以降はこれまで以上にニーズが高まり、この1年間で500個以上のオードブルを販売するなど、予想を超える反響があった。「今までは年末年始など特別な時期に売上が伸びましたが、最近はイベントでもない平日に注文が複数入ることも。若いカップルやファミリーの利用も多く、お客様の広がりを実感しています」(屋部氏)。テイクアウトでの初来店がその後のイートイン利用にもつながっており、今後もより多様なシーンに対応するアレンジを加えながら、ファンを増やしていきたいと考えている。
沖縄県浦添市伊祖2-30-2 201
https://www.instagram.com/la.miroir/
30年以上愛され続ける「蒸し豚セット」。贈答品としても好評!
田無羅(たむら)【福岡・春吉】
テイクアウトは常連客とつながりを感じられる場
福岡市内で個店が多く集まる中央区・春吉エリアの韓国料理店「田無羅」。焼き肉店を営んでいた先代が1967年に焼肉店を創業したのが始まりだ。2001年、同市東区から現在地に移転オープンし、2代目であるオーナーシェフの田村嘉彦氏が切り盛りしている。料理は「医食同源」をテーマに、来店客の好みや体調に合わせた“オーダーメイド” の「おまかせコース」(1万6500円~)で提供。「韓国料理といえば、焼き肉や辛いというイメージが強いですが、それだけではありません。料理とお客様との会話を通して韓国料理の奥深さを伝えています」と田村氏は話す。客層は、平日はビジネス層の接待、週末はファミリーやカップルを中心に記念日などの利用が多い。
テイクアウトは移転前から手掛けており、30年以上愛されているのが、「韓国の蒸し豚セット」(500g5000円~)。豚の塊肉を丁寧に蒸したもので、薄切りにして特製タレを付けて自家製のキムチを巻いて食べるという人気メニューだ。「コースの中で提供していましたが、お客様の『自宅でも食べたい』というリクエスに応えて販売し始めました。当初は、年末年始に販売していましたが、年間を通して需要が高く、今は通年で販売しています」と田村氏。豚肉は、鹿児島産黒豚の肩ロースを使用。適度な弾力があり、ジューシーでバランスのとれた食感と味わいに仕上がるという。塊肉のまま真空パックにして渡すため、見た目も食べ応えもインパクト大。自宅用として購入されるほか、お祝い事や歓送迎会、お花見など、イベントや手土産としても喜ばれている。また、企業の御中元や御歳暮として購入されるケースも多く、年末だけで約100本を売り上げることも。自家製キムチと蒸し豚を一緒に炒めれば本格豚キムチが楽しめることなど、アレンジ方法を記したシートも同封して渡しており、さまざまな料理に使えるのも喜ばれるポイントだ。
さらに、昨年6月よりテイクアウトの新商品として「参鶏湯」(2500円)、「ユッケジャンスープ」「テールスープ」「チゲスープ」(各1600円)のスープ4種を販売。店内で提供するスープをそのままを真空冷凍しており、「コロナ禍で来店したくてもできないお客様に喜んでいただくとともに、“おうち時間”が増えた中で、自宅での食事の一品として重宝しているという声をいただいています」(田村氏)。テイクアウトは売上のプラスアルファになっているが、それだけではなく「商品の問い合わせや販売を通じて、お客様とつながりが持てるのが良いですね」と田村氏は語る。
今後は、商品を拡充し、ネット通販の展開も視野に入れている。ネット上でも「田無羅」ブランドの確立を図るとともに、実店舗へ足を運ぶきっかけにしたい考えだ。
福岡県福岡市中央区春吉3-22-29
https://r.gnavi.co.jp/9nt0f9t70000/
店の名物を少しずつ詰めた弁当で、家飲み需要に応える
炉端 居酒屋 博多香家(こうばしや)【福岡・祗園】
利用客の半数がリピート。オードブルの注文も増加
2014年、福岡・博多駅から1駅先の祇園駅から徒歩6分。オフィスが多いエリアにある創作居酒屋「炉端 居酒屋 博多香家」。4階建てのビルを一棟使い、1階はカウンター、2階は半個室、3・4階は団体用の個室を備える。シーンに応じて使い分けができるため、近隣に勤める20代後半~50代のビジネス層に支持されている。
5年前から仕出し弁当を手掛けており、慶事・法事や企業の会議用として注文を多数獲得。さらに、昨年3月からはテイクアウトも開始した。「仕出しなどでノウハウはありましたが、自宅用の購入が多いテイクアウトとなると単価を抑えなくてはならないため、どうしても定番料理が中心になります。その分、色合いや見栄えが良くなるよう工夫しました」と店長の森元啓輔氏は話す。テイクアウトで一番人気の「晩酌弁当」(1200円)は、名物である「カニ爪クリームコロッケ」「自家製豆乳豆腐」など、9種の料理を少しずつ詰め合わせたもので、家飲み需要を狙って開発。「店内で提供している料理を入れているので、注文にすぐ対応できます」(森元氏)。告知は店頭に設置した黒板とInstagramで行い、これまで来店したことのない新規客が多く購入。テイクアウトは半数以上がリピーターだ。そのほか、最近は「特製オードブル」(5400円)の注文が多く、ホームパーティーや会社の集まりなどで利用が増えているという。
昨年11月からはWebで注文できるようネットショップを開設し、販路を拡大。3月末には近隣に新店も出店し、攻めの姿勢を続けていく。
福岡県福岡市博多区冷泉町8-19
https://r.gnavi.co.jp/6pyrshv20000/
「店の味」を自宅でも忠実に再現! 一度で2回おいしい特別セット
はまぐり庵 - 吉祥別邸 -【大阪・梅田】
しゃぶしゃぶも持ち帰り! 店内より安い価格も好評
阪急梅田駅直結の商業施設・阪急三番街の南館地下2階に、2014年にオープンした「はまぐり庵 - 吉祥別邸-」は、はまぐり料理の専門店。「焼きはまぐり」(3個550円)、「はまぐり出汁巻たまご」(980円)、「はまぐりラーメン」(820円)、はまぐりのしゃぶしゃぶ「はましゃぶ」(はまぐり約30個3500円)が4大看板料理だ。「この業態を選んだのは、当社の代表が三重県桑名で食べたはまぐりに感動し、大阪でもその味を広めたいと思ったからです。関西では、はまぐりはなじみの薄い食材。オープン時は苦戦しましたが、徐々に認知が広がりました」と店長の松生晃洋氏は語る。平日はランチ・ディナーともに30代以上の女性が多いが、最近は20代も増加傾向にあるという。
特に売りの「はましゃぶ」は、自宅でも気軽に楽しんでもらいたいと、テイクアウト専用セット(2700円)を考案。昨年2月ごろから準備し、翌3月から販売をスタートした。当初は自社ECサイトで販売を始め、現在は店頭でも販売。セット内容は、3年物の活はまぐり約30個と京都の製麺業者から仕入れる中華麺に、濃縮だしが付く。「店内では薄めのカツオだしで『はましゃぶ』を楽しんでもらっています。自宅でも手間をかけずに召し上がっていただくために、お湯で薄めるタイプの持ち帰りに便利な濃縮だしを開発しました」と松生氏。
また、店内で食べる際はシメに雑炊かうどんを選べるが、テイクアウトセットのシメは中華麺に。そこには、同じく看板の「はまぐりラーメン」を楽しんでもらう狙いがある。一度に2つの看板料理を味わえる満足感と、イートインより安い価格設定によるお得感でアピールしている。
情報発信にはSNSを活用。一度に5セット買う人もいるなど反響は大きく、テイクアウトのリピーターも増加中だ。冷凍や真空パックではない活はまぐりのおいしさで、新たなファンを獲得。今後は日持ちのする商品の開発も予定している。
大阪府大阪市北区芝田1-1-3 阪急三番街南館B2
https://r.gnavi.co.jp/pket94ey0000/
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