2021/05/10 繁盛の法則

ビールの楽しさを訴求するカジュアルレストランとは

東京・北千住にあるブルワリーレストラン「さかづきBrewing」は、店内で個性的なビールを醸造して提供。1階は立ち飲みができるタップルーム、2階はビアレストランで営業しており、地元に愛される店となっている。

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さかづきBrewing(ブルーイング)

Key Point

  1. 店内醸造の個性的なクラフトビールを提供
  2. 素材や旬にこだわった多彩な料理をそろえる
  3. 活気ある商店街に出店し常連客を獲得

大手ビール会社勤務中に、生産や商品・技術開発を経験

 店内で醸造する個性的なビールを、旬や素材にこだわった料理とともにカジュアルに楽しめる「さかづきBrewing」。コロナ禍での休業要請、時短要請等を遵守しながら、地元で愛されるブルワリーレストランとして奮闘している。

 オープンは2016年3月で、東京・北千住駅東口から徒歩3分ほどの場所にある21坪30席の店舗だった。寸胴型のタンク3本を備え、1度に200L弱を仕込める醸造所を併設した。創業後ほどなく軌道に乗り、昼から営業する土・日曜日は、1日120人以上が来店する人気店となった。ビールの醸造が追いつかないほどになり、より大きな物件を探していたところ、見つかったのが北千住駅西口から徒歩4分ほどの、元は民家だった3階建ての建物だった。1、2階が約26坪で、1階は500Lのタンク8本を備えた醸造室と、ビールが立ち飲みできるタップルームとし、2階を40席のビアレストラン、15坪の3階は麦芽の保管庫とオフィスに改装し、2020年8月にオープン。当初は2店舗体制とする予定だったが、昨年春からのコロナの影響により、1店舗目は同10月に一旦閉め、当面は新店舗での営業に集中することにした。

 経営元は合同会社さかづきで、代表の金山尚子氏は1980年大阪生まれ。東北大学農学部に進み、大学院では牛の胃の中の細菌を研究する研究室に入り、微生物を専攻した。在学中に居酒屋でアルバイトをしたのをきっかけに、ビジネスマンがビールで乾杯し、おいしそうに飲む姿を見てビールに興味を持つようになった金山氏は、2006年にアサヒビール株式会社に新卒で入社し、9年間勤務した。前半は醸造部門、後半は研究所に配属され、商品開発、技術開発に携わった。また、在職中にアメリカ・ウィスコンシン州で約1カ月間研修を受け、醸造学コースを受講しながら、クラフトビール市場の調査も担当した。醸造所が併設された現地のビアパブの自由で楽しそうな雰囲気に引かれ、日本ではまだあまりないスタイルとして印象に残り、「いつしかこういうお店を自分の仕事にできたら」という思いを強めた。独立開業に向けて動き始めると、普段使いができる身近な存在にしたいと、住宅街を控え、活気ある商店街があり、在職中からよく来る機会があった北千住を選んだ。

店内で醸造するビールは、 手前がラズベリーをたっぷりと漬け込んだベルギースタイルのフルーツエール「赤い月」(760円)、奥が定番の人気商品「風月ペールエール」(550円)で、オーソドックスなイングリッシュスタイル。料理は手前から、「本格ドイツソーセージの炭火焼(3種類)」(1,600円)、「彩り野菜のピクルス~シェリー風味」(480円)、「ビールパブの定番フィッシュ&チップス~和風タルタル(2~3人前)」(1,100円)

多彩なビールと料理を気軽に楽しむスタイルを提案

 現在、2階のレストランでは、店内醸造のクラフトビールを常時9種提供するとともに、「アサヒスーパードライ」もラインナップに加えている。金山氏自身も製造に携わったビールであり、小規模な醸造設備では難しいラガータイプもバリエーションの一つとして入れたかったためだ。個性が強いクラフトビールの合間に飲まれることもあり、特に盛夏にはオーダーが増える。ビールは1杯300 ml、550〜770円とし、いろいろな味わいを楽しんでもらえるようにしている。金山氏は約300のビールのレシピを考案しているが、まずは定番であるオーソドックスなイングリッシュスタイルの「風月ペールエール」(550円)から始まり、より個性的なブラウンエール、フルーツエール、スモークビールなどに進み、3杯ほど飲んでいくお客が多い。1階のタップルームでは、他の醸造所から仕入れるゲストビールも加わり、最大19種の提供が可能だ。
 
 また、創業時から料理も充実させたいと、料理人に入店してもらい、幅広いフードメニューを提供しているのも特徴。新店舗では炭火焼きのグリルをメニューに加え、さらにパワーアップした。定番メニュー約30品のほか、旬の素材を使った料理約10品を「本日のおすすめ」として加え、毎日のように来店するリピーターを飽きさせないように工夫している。また、お1人様限定で、好みのビール1杯と「おまかせ前菜盛り合わせプレート」「メイン炭火焼きプレート」をセットにした「ほろ酔いセット」(1400円)を用意し、好評を得ている。現在の客単価は、2階のレストランが3000円強、1階のタップルームが約1500円となっている。

 同店が自家醸造のクラフトビールをメインとするカジュアルなレストランとして、地元のリピーターを増やしている要因は、以下のようになるだろう。

  1. 店内で醸造する個性的なクラフトビールを提供している。
  2. 素材や旬にこだわったフードメニューを充実させている。
  3. 周辺の人口が多く、エネルギッシュな商店街のある北千住に出店している。

 以前の店舗は、いつでも醸造・営業が再開できるようにしている。「最初の店舗は規模が小さいので、実験的なビールを造れます。他の飲食店のオリジナルビールを参考に造ったり、変わったビールの試験醸造などもやってみたいと思っています。現店舗とは料理のコンセプトを変えて北千住らしい居酒屋風にし、例えば煮込みとクラフトビール、といった組み合せもやってみたい」と、金山氏はコロナ後の構想も膨らませている。

さかづき Brewing
住所
東京都足立区千住1-20-11
TEL 03-5284-7676
営業時間
16:00~22:30(LO. フード21:30、ドリンク22:00、1階は15:00~、土・日曜日は1、2階とも13:00~。変更の場合あり)
定休日
月曜日、火曜日