ヨーホーズ カフェ ラナイ
Key Point
- ハワイ直伝のレシピで現地の味を提供
- 原材料の安定的な入手ルートを確保
- テレビ番組の後押しを受け認知度を上げる
ハワイ勤務中に出合ったスープをメインに独立開業
ハワイの料理というと、ご飯の上にハンバーグや目玉焼きなどをのせた「ロコモコ」や、フルーツやホイップクリームをこんもりと盛った「ハワイアンパンケーキ」が人気だが、東京・阿佐ヶ谷の「ヨーホーズ カフェ ラナイ」の看板商品は、牛の尾の部分をじっくり煮込んだ「オックステールスープ」(スモール1,500円~)である。これは、ハワイで地元の人々にこよなく愛されているローカルフード。ホロリとほぐれるほど柔らかくなった肉と滋味深いスープが体中に染みわたり、活力がみなぎってくるような一品だ。臭み消しと風味付けにたっぷりと加えるショウガとの相性も抜群で、最後はスープにご飯を入れてしょうゆで調味し、おじやにして食べる。肉は、しょう油を加えたショウガをまぶして手づかみでかぶりつくのがおすすめ。決して上品な料理ではなく、見た目が華やかではないが、やみつきになるような魅力がある。
オーナーは堀川陽造氏、瞳さん夫妻。1955年大阪出身の堀川氏は、大学進学を機に東京に移り、海外ブランドの飲食店を日本で展開する大手外食企業に約30年勤め、店舗のマネージャーとして活躍した経験を持つ。入社早々の1980年に、ハワイ進出1号店のオープニングスタッフとして派遣されたが、開店直後にトラブルが発生し、数週間で帰国する予定が2年ほど現地に滞在することになった。その時によく食べに行っていたのが、ボウリング場の中にある人気カフェのオックステールスープだった。レシピは門外不出だったが、キッチンで働いていたフィリピン人女性と顔なじみとなった堀川氏は、作り方をこっそり教えてもらうことができた。双方とも、その約20年後に堀川氏が東京でハワイ料理店を出店するとは、夢にも思わなかった中でのやり取りだった。
50代となった堀川氏は、そのまま定年まで勤め上げるよりも、まだ体力があるうちに独立開業し、ずっと温めていた本場のオックステールスープのレシピで勝負しようと考えた。2010年に55歳で退職すると、翌年に東京・神田の繁華街にカウンター7席のオックステールスープ専門店を出店した。在職中にはキッチンでの調理経験がなかった堀川氏は、日本人向けにアレンジを加えるのではなく、本場のレシピを忠実に再現することに徹し、前職で知り合った業者から牛の尾の肉を安定的に仕入れるルートを確保した。
しかし、いざ神田で開業してみると、周辺では500円以内で食べられるそば店やカレー店のランチには長蛇の列ができるが、1人前1,500円のオックステールスープは見向きもされなかった。夜も、グループが来店してもカウンターだけの店舗では対応しきれず、早々に移転を考えるようになった。ランチは女性、週末は家族連れの利用が期待できる中央線沿線を探し、JR阿佐ヶ谷駅から徒歩4分ほどの10坪の現物件を見つけ、テーブル席を中心に14席を設けて、2013年5月に移転オープンした。
テレビ番組を機にブレーク。コロナ禍では地元客が支えに
「移転後に、地元のハワイ好きの方、近隣のフラダンス教室の生徒さんなどが来てくれるようになり、口コミで緩やかにお客様が増えていきました」と、瞳氏は振り返る。突如として火が付いたのは、2014年8月にグルメ系のテレビ番組で取り上げられたのがきっかけ。オックステールスープの食べ方やおいしさがドラマ仕立てで紹介されたことで、一気に遠方から来店する人が増え、連日長蛇の列ができるようになった。その後も何度となく再放送され、国際線の機内で上映されることもあり、その度に新規客が増えている。同時に、「ガーリックシュリンプ」(1,550円)、餅粉の衣を付けた鶏の唐揚げ「モチコチキン」(3個900円)、グレービーソースをたっぷりかけた「ロコモコ」(1,500円)などの人気も高まっていった。昼夜同じメニューで営業しており、客単価は3,000円になる。
同店がオックステールスープをメインとするハワイ料理店として知名度を上げてきた要因は、以下のようになるだろう。
- ハワイの人気店直伝のレシピを基に現地の味を再現している。
- 原材料の安定的な入手ルートを確保し、手間暇を惜しまずに調理している。
- テレビ番組の後押しを受けて新規客を増やしながら、地元の常連客の期待に応えている。
コロナ禍においては、客席への飛沫防止用アクリル板の設置、1グループ4人までの人数制限、時短要請やアルコール提供の規制の遵守など、感染拡大防止に努めてきた。デリバリーは行っていないが、一時はほとんどがテイクアウト利用だった。「コロナ禍では、近隣に住むご家族に支えられていると感じています。『子供がオックステールスープが好きなので』と、わざわざ買いに来てくれたり、スプーンを放さなくなるほどこのスープが好きという8カ月くらいの赤ちゃんもいます。この子たちが大人になったときに食べに来てもらえるように、これからも地元に根付いた店として続けていきたいです」と、堀川夫妻は願っている。
(Text and Photo by Food Biz)
住所
東京都杉並区阿佐ヶ谷南2-20-4 ハウスポート阿佐ヶ谷ビル 1F
TEL 03-6383-1298
営業時間
11:30~14:30(土・日曜日・祝日13:00~15:00)、17:30~21:00
定休日
月曜日(祝日の場合は営業、翌日休業)、第3火曜日
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