2021/12/03 繁盛の法則

厳選素材と店内製造の強さを発揮するハンバーガー店とは

東京・代々木駅近くの「JB's TOKYO(ジェイビーズ トウキョウ)」は、本場アメリカの味を再現したハンバーガーを提供。バンズから手作りすることで、リーズナブルながら高品質なハンバーガーで人気を集めている。

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JB's TOKYO(ジェイビーズ トウキョウ)

Key Point

  1. 手作りの高品質なハンバーガーを提供
  2. パンを店内で焼き、原価率と販売価格を低減
  3. コロナ禍でも堅調なテイクアウトに注力

3階建て9坪の狭小物件を巧みに活用して出店

 東京・JR代々木駅から徒歩10秒の場所にある3階建ての建物を利用し、2021年6月にオープンした「JB's TOKYO(ジェイビーズ トウキョウ)」は、「ベーカリー&バーガー」と謳うとおり、自家製パンを使った個性的なハンバーガー専門店である。3階建てとはいえ、ワンフロアは約3坪、計9坪の狭小物件で、以前はタピオカドリンク店が入っていた。飲食店として営業するには制約が多い中で、工夫を重ねて生まれたのが、店内で焼き上げた小さめの食パンで牛肉100%のパティを挟んだ独特のハンバーガーで、ランチタイムにはテイクアウトを利用する人が連日長蛇の列を成している。

 同店を出店した佐藤卓(たかし)氏は、2007年3月に「野菜を食べるカレーcamp(キャンプ)」を、2017年3月にとん汁専門店「ごちそうとん汁(ごちとん)」を、それぞれ代々木で創業。その後、2017年7月に、両店の経営母体で自身が代表取締役を務めていた株式会社バックパッカーズの株式の66%をアークランドサービスホールディングス株式会社に売却し、2020年12月末に退任した。

 当面はのんびりするつもりだった佐藤氏だが、早々に飲食店の新業態開発に携わることに。2021年3月、バックパッカーズで佐藤氏の片腕的な存在だった西岡仁(じん)氏が、「佐藤さん、一緒に飲食店をやりましょう」と突然会社を辞めてきたのである。驚いた佐藤氏だったが、これを機に新たな事業をやってみようと決意。「camp」「ごちとん」からほど近い場所にある現物件が空いていると知ると、即座に契約した。6月にはオープンしようと決め、「それで、何をやろうか?」という話からスタートし、佐藤氏が以前から関心を持っていたハンバーガー店の開発に着手。出店に向け、西岡氏を取締役社長とする株式会社ブルース&ブラザーズを2021年6月1日付けで設立した。

牛肉100%、約113gのパティ2枚、チーズ2枚、レタス、トマトを挟んだ「JB'sスペシャル」(890円)のサラダセット(440円)で、ドリンクは「アイスクリームシェイク」(セット150円、単品390円)を選んだもの(計1,480円)。ドレッシングも自家製で、豆乳、塩麹、オリーブオイルを合わせている。店内で焼く食パンは、北海道産小麦粉100%、バターを使用し、1本(1斤弱)を「おすそ分け食パン」(240円)として一部販売もしている

温もりのある「ソウルフード」としてのハンバーガーを開発

 佐藤氏は1967年、埼玉・浦和市生まれで、大学卒業後の1991~2005年は日産自動車株式会社に勤務し、そのうち1998年から5年間はアメリカ・ロサンゼルスに駐在した。その際、本場アメリカのハンバーガーのおいしさに触れ、アメリカ人にとってハンバーガーとは、日本人にとってのおにぎりのような、温もりのあるソウルフードであり、徹底したこだわりがあることを体感した。

 この経験から、ハンバーガーの方向性を決めるにあたり、本場アメリカの味を再現すべく、アメリカの料理人が公開している膨大な数のレシピを参考に、パティの肉の配合、挽き方、焼き方などを追究。研究の結果、パティはアメリカ産牛肉の赤身肉85%と和牛の牛脂15%という配合にたどり着き、これを7~8mmの粗挽きにして1/4ポンド(約113g)に軽く丸めておく。調理方法もアメリカ流を踏襲し、鉄板で焼き始めるときにつぶし、こんがりと焼き色を付け、ドーム型のカバーをかぶせて蒸し焼きにすることで、ジューシーさと口の中でホロリとほどける食感に仕上げている。

 並行して、日本でのハンバーガー市場を分析し、1個500円以下のハンバーガー商品をメインとするチェーン店と、1個1,500~2,000円の個人経営のグルメバーガー店に二分され、その中間が抜けていることに気付いた。さらに、バンズは店内で小麦粉から作ると劇的に原価率が下がることに着目し、「バンズを仕入れずに店内でスクラッチ方式(粉から生地を仕込み、成形して焼き上げるまでの全工程を一貫して行うスタイル)で製造することで原価を圧縮し、グルメバーガー店の品質をチェーン店の価格で提供するハンバーガーショップ」という業態コンセプトを固めた。このコンセプトを実現するために、物件の限られたスペースや100ボルトの家庭用電源しかないという設備面の制約の中で、設置可能な最小サイズの製パン用オーブンを選び、生地を練るミキサー、発酵時に使うホイロなどを厨房に配置。1階は厨房と販売カウンター、2階を貯蔵スペースにすることで、3階に8席の客席を作ることができた。

 ハンバーガーというとバンズで挟むイメージが強いが、焼成効率を考えて食パンで試作を重ねた。その結果、鉄板で片面だけ焼いてパティを挟むと、バタートーストのような香ばしさと、食パン特有のしっとりした食感が楽しめるという、副次的効果が得られることも分かってきた。

 加えて調理効率を上げるために、徹底的にメニュー数を絞り込み、ベースの「ハンバーガー」(390円)に、パティやチーズ、レタス、トマトなどを追加していくメニュー構成とした。一番の人気商品としてパティ2枚、チーズ2枚を挟んだ「ダブル★ダブル」(690円)をアピールしている。そこにレタス(100円)、トマト(100円)を加えた「JB’sスペシャル」(890円)はボリューム満点。客単価は950~1,000円で、平日は平均日商15万円、土・日曜日・祝日は20万円を売り上げ、月商平均520万円で推移している。売上の85~90%がテイクアウトおよびデリバリーで、その内訳はテイクアウト85%、デリバリー15%。また、原価率32%、人件費率29%と、収益性も確保できている。

 同店が「まじめに手作りしているホームメイドハンバーガー店」と認知され、開店以来、好調さを維持している要因は以下のようになるだろう。

  1. 店内製造にこだわった高品質のハンバーガーを作り出している。
  2. 食パンを生地から作り、店内で焼くことで原価率と販売価格を押さえている。
  3. コロナ禍でも堅調だったテイクアウトをメインにスタートしている。

 今後について佐藤氏は、「もちろん多店舗化も考えています。実際に売上も収益も非常に良く、何よりもお客様が『おいしい』『感動した』と喜んでくださっているので、FC展開も含め、多店舗化しない理由がないです。ハンバーガー業態とベーカリー業態の両立は難易度が高いですが、私たちがゼロから実績を積み上げたノウハウを使えば、誰でもできるはずです」と、確かな手ごたえと自信をのぞかせている。

(Text and Photo by Food Biz

JB’s TOKYO(ジェイビーズ トウキョウ)
住所
東京都渋谷区代々木1-33-3
TEL 03-6300-0913
営業時間
11:00~22:00
定休日
無休
https://r.gnavi.co.jp/bpr4ddgk0000/

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