2022/05/24 特集

飲食店の集客・売上を落とさず、メニューの値上げをするには?~食材高騰を乗り越える!~

精肉、野菜、加工品などさまざまな品目が値上げされており、メニューの値上げに踏み切る飲食店も多い。そこで、飲食コンサルタントに集客や売上を落とさずにメニューを値上げする方法やノウハウを聞いた。

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目次
食品の値上げ状況と消費者の動向
メニュー値上げ後の客数・売上への影響は?
影響を最小限に抑えてメニューの値上げを行うには?
客数維持・増加に向け注力すべきことは?
コスト圧縮のために取り組みたいことは?
これからの飲食業界、どう立ち向かう?

 昨年来、食品の値上げラッシュが続いている。食肉に関しては昨年「ミートショック」と呼ばれる世界的な牛肉の価格高騰が起ったほか、原材料や資材、輸送コストの値上げが、さまざまな食品価格に影響を与え、飲食店にとっては大きな打撃となっており、ぐるなびの調査結果によると約5割の店でメニューを値上げをしたという。

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 そこで、飲食コンサルタントである伊藤隆光氏に、集客や売上を下げずにメニューを値上げするノウハウをうかがった。伊藤氏は食品の値上げや消費者の動向を鑑みて「メニューを値上げするなら今」と語る。また、その際には「メニュー全体を改定し、値上げの前後で価格を比べにくくする」ことをポイントにあげ、「利用シーンの拡大」を図ることで来店・利用頻度を高める取り組みが有効とアドバイス。これを機に、さらに強い店づくりを提案している。

株式会社ローカルカンパニー 代表取締役 伊藤 隆光 氏
大学時代に飲食店でアルバイトを経験し、卒業後、飲食店向けの酒販店に就職。約10年間勤務した後、飲食店経営のサポートを志して経営コンサルタントに転身し、2018年に株式会社ローカルカンパニーを設立。現在、100社以上の経営計画策定を支援するとともに、従来の値付け手法と消費者心理、飲食店の取り組み事例を組み合わせた“価格見直しコンサルティング”を行っている。

食品の値上げ状況と消費者の動向

生鮮から加工品まで値上げラッシュ!値上げを許容する消費者マインドもあり

 昨年より精肉、野菜、加工品など、さまざまな食品が値上げされている。農林水産省の「農林水産統計」(2022年3月30日)によると、2月の「農業物価指数」は111.0(100=2015年が基準値)で1割以上の上昇。中でも野菜は117.8、果実は135.8と上昇幅が大きい。さらに、農業生産の資材では飼料は119.5、光熱動力は123.7と上昇しており、今後の農産物価格の高騰が懸念される。

農産物のこの半年の価格動向。2021年12月より徐々に上がっており、2022年2月には野菜が117.8、果物は135.8に

 一方、帝国データバンクの「食品主要105社価格改定動向調査」(2022年4月)によると、すでに4,000品目余が値上げされ、年内の値上げは合わせて6,000品目を超える見込みだ。値上げ率の平均はおよそ10%だが、原材料の高騰などで加工食品は12%、円安や物流コストの増加を受け、輸入ワインなど酒類は15%の値上げ率で厳しさを増している。

 伊藤氏は、飲食店にとって特に影響の大きいものとして「食肉」をあげる。「焼き肉など肉を主体とする業態は、もともと素材の原価率が大きいため、値上げ幅をメニューの価格で吸収しづらい」と話す。

株式会社ローカルカンパニーの伊藤隆光氏は、外部状況や消費者の動向を踏まえ「飲食店は値上げして利益をしっかり確保してほしい」と語り、メニュー値上げのノウハウを紹介

 一方で、「多くの外食チェーンが値上げを発表したり、日々のニュースで値上げについて取り上げられているため、世情的に値上げを許容する空気感もあります」と指摘。“食品値上げは10%までなら許容”が6割に及ぶという調査結果(日本政策金融公庫「消費者動向調査」2022年2月)もあるため、「値上げを考えているなら、踏み切ってよいのでは」と伊藤氏はアドバイスする。

メニュー値上げ後の客数・売上への影響は?

値上げ後に売上・客数減少した店は1割程度。健全な経営には「粗利益の確保」が重要!

 飲食店にとってメニューの値上げは、客数減や売上減に直結するリスクがある。ぐるなびが3月末~4月に実施したアンケート結果でも、値上げをしない理由のトップは「客数が減り、売上に影響するから」(39.7%)だ。

 だが、伊藤氏は「客数・売上減を恐れるあまり、価格を据え置いて粗利益が減る事態を避けるべき」と述べる。特に個店は、メニューの値上げをすることで粗利益の確保や増加につながりやすく、経営にはプラスに働くという。「そもそも粗利益が確保できなければ食材費も人件費も削らざるを得なくなり、結果的には店の価値を下げることにつながってしまいます」(伊藤氏)。

 実際、前述したぐるなびのアンケートでは、値上げの後「売上が下がった」店は7.9%、「客数が減った」店は11.4%にとどまる。伊藤氏は「4割が売上減を心配して値上げを避ける一方、値上げが売上減に直結した店は8%以下とわずか」と分析。値上げ後に売上がアップした店が3割を超えていることからも、値上げを過度に恐れる必要はなさそうだ。

値上げして売上が下がったとしても、利益を確保することが健全な店舗経営では大切

 「大切なのは、感覚だけで値上げの良し悪しを決めないこと」と伊藤氏。「感覚だけで判断すると、不安要素ばかりが目立ち、経営判断が合理的にできなくなる危険があります」と指摘する。メニューを値上げする場合としない場合の売上や客数、客単価、利益をきちんと予測し、それぞれどこまで増減が許容できるのかをしっかり計算して、作戦を練ることが肝心だ。

影響を最小限に抑えてメニューの値上げを行うには?

値上げとメニュー改定をセットに。ニーズに応えて店の価値を高める

 では、メニューを値上げをして粗利益を確保しつつ、客数と売上への影響を最小限にするにはどうしたらよいだろうか。伊藤氏は「値上げとメニュー改定をセットにするとよいでしょう」と言う。ポイントは「値上げの前後で価格を比べにくくする」ことだ。

 例えば、牛肉を使ったメニューであれば、原価の高い部位単体のメニューをやめ、比較的安価な部位や豚や鶏といった違う肉とミックスさせ、提供価格を調整する。利用客にとっては「一皿で複数の部位や種類が楽しめる」というベネフィットになり、たとえ価格が上がってもオーダーにつながりやすい。

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 「こうした新メニューは、来店客の“潜在的なニーズ”をいかに的確に捉えるかが大事」と伊藤氏。仮に利用者アンケートを行ってもこういった意見は出にくく、「あればオーダーする」という隠れたニーズを探る必要がある。「ニーズはつかみにくいですが、いろいろな提案をして、効果があれば続け、なければ提案し直すなど柔軟に行うとよいでしょう」と伊藤氏は語る。

値上げしても以前のメニューと価格を比べにくくしたり、選択肢を増やせば、来店客は受け入れやすく、注文にもつながる

 一方、同じ価格でポーションを減らす、質を落とすなどで実質的な値上げをする「ステルス値上げ」は、「基本的にはおすすめできない」と伊藤氏。来店客がそれに気付けば、店の印象を下げることにつながるためだ。そこで伊藤氏は「従来のメニューに、異なる量や価格を設ける工夫」を提案する。例えば、肉のメニューで100g=500円としていたものを80g=500円にせざる得ないとき、800円のレギュラーサイズと、400円のハーフサイズのメニューを設ける。選択肢を増やすことで、価値を下げずに実質値上げが可能だ。もちろん、刷新したメニューが魅力的であることが前提。「質を落とすのではなく、メニューの価値を上げる視点が重要です」と伊藤氏は力説する。

 そのほか、居酒屋なら割烹や懐石などで提供されるメニュー、バルならフレンチレストランで提供されるようなメニューなど、ワンランク上の業態の料理を安価に楽しめるようにすることも、来店動機の喚起につながる。また、「クロスセル」(=一緒に買う、注文点数を増やす)、「アップセル」(=上位の商品を選ぶ)を意識してメニュー構成を考えると、満足度を上げながら客単価アップを図ることができるだろう。

 「ただし、店の価値を損なわないことが前提」と伊藤氏。安価でお腹いっぱいになることが店の価値なら、いくら質が良くても高単価なメニューばかりを提供しては支持されない。「コロナ禍以降、外食の機会が減り、1回の外食に対する期待値は確実に増しています。その期待を裏切らないことが重要です」(伊藤氏)。

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客数維持・増加に向け注力すべきことは?

利用シーンの拡大と満足度の向上がカギ。QSCの見直しも大切!

 飲食店にとってメニューを値上げする際に気になるのが、客数の減少。そこで、客数の維持・増加を図るために伊藤氏が提案するのが「利用シーンの拡大」だ。コロナ禍以前まで都心部では専門店化が進んでいた。だが、現在はディナーだけでなく、ランチ、カフェ、夜食、テイクアウトなど利用シーンを広げている店が目立つ。既存客に対して複数の利用動機を喚起することで来店や利用頻度を上げるとともに、新たな客層にもリーチして集客を図る作戦だ。「テイクアウトや小売りを手掛ける店も増えています。利用シーンを拡大することは、利用頻度や客数の向上につながるでしょう」と伊藤氏は語る。

テイクアウトやECなど、利用シーンを増やすことが利用頻度の向上につながる

 同時に「満足度の向上」も意識したい。満足度が下がるとリピート率が下がるだけでなく、口コミの評価も下がるので、新規集客にも悪影響が出る可能性がある。「特にコロナによる時短営業や休業、客数減にスタッフに慣れてしまい、QSCが落ちていることに頭を悩ます経営者は少なくありません」と伊藤氏。「値上げは仕方ないが、サービスまで落としてほしくない」と来店客が思うのも当然だ。「ちょっと高くなったけど、やっぱりこの店はいいね」と思ってもらえる店づくりをすることは、喫緊の課題といえるだろう。

 そのほか、週替わりのメニューや季節の期間限定メニューなどは、来店のフックとなりやすい。また、「集客には口コミが欠かせないため、SNSの活用も必須」と伊藤氏。旬の食材情報などを、エピソードとともにSNSで発信して来店を促進する販促なども検討するといいだろう。

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コスト圧縮のために取り組みたいことは?

発注を適正化して、食材ロスを削減。仕入れ業者との関係強化も有効

 メニュー改定のほかに、コストの圧縮にも取り組みたい。伊藤氏は「発注業務の適正化」を呼びかける。通常、ベーカリーなど見込み生産の業種は、製造数と廃棄数をセットで記録し、食材の発注もそれに基づいて行うことで食材ロスを最小限に抑えているという。ところが、飲食店のようなオーダー生産の場合は、製造と廃棄の記録がなされていない場合が多く、食材の発注も一部のスタッフの経験と勘に頼るケースが多い。伊藤氏は、「メニューの出数や発注の種類と数を把握していけば、余計な発注は抑えられ、コスト圧縮が可能です」と語る。

 もちろん、ある程度のロスは避けられない。「ロスが出やすい食品はサイドメニューへの応用を準備しておく、あるいは出数を決め“限定メニュー”にして使い切るなどするとよいでしょう」(伊藤氏)。

 また、この機会に仕入れ業者との関係にも目を向けよう。「基本的には絆を深める方向がベスト」(伊藤氏)。業者からの値上げ要請には応えつつ、店が抱えている問題を相談して力になってもらうとよいだろう。これなら、お互いに存在意義を高め合い、いい関係を築くことができる。

 さらに、業務の効率化も重要。スタッフ一人一人がさまざまな業務を行って多能工を目指し、生産性を高めることにも取り組みたい。

これからの飲食業界、どう立ち向かう?

キーワードは「分散化」。客足の戻りが早い利用シーンへ注力

 飲食業界はこの2年間、コロナによる逆風を一身に受けた感がある。だが、振り返ってみれば、2001年のBSEの発生やその後の鳥インフルエンザ、リーマンショック、東日本大震災など、数年ごとに大きな出来事に見舞われてきたのも事実。

 伊藤氏は「今後も、数年から10年単位で逆風が起こる前提で経営計画を考えるべき」と提案。キーワードとして「分散化」をあげる。例えば、業種や業態を分散させる、利用シーンの幅を広げる、店内飲食とテイクアウトやデリバリーといった店外飲食の両方を手がけるといった戦略だ。「大規模な宴会が戻るのは、まだ先でしょう。今は戻りの早いランチや少人数の宴会などへ売上の比重を移すことも有効です」と語る。

 また、「FLRの比率をトータルで捉えることが大切」と伊藤氏。食材費(F)ばかりを見るのではなく、人件費(L)や家賃(R)との比率を柔軟に考えることで、店づくりが豊かになるはずだ。食材高騰は飲食店にとって逆風の1つだが、それを乗り越えられれば、さらに強い店になれるだろう。

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