更新日:2023.10.23
食材原価が高騰している現在、利益と顧客満足につながる価格設定は飲食店の喫緊の課題。人気店はどんな価格設定とメニュー構成で集客につなげているのでしょうか。
今回は、メニュー表を料理のジャンルではなく5つの価格帯に分けているのが特徴である福岡の大衆酒場「酒場 角のうぐいす 博多店」と、原価率を定番メニューは20~30%に、本日のオススメを40~50%に設定することで顧客満足度を高めているのが特徴の東京の居酒屋「キンクラ 大山店」の事例を紹介します。
※本記事の情報は記事作成時点のものであり、現時点での情報の正確性を保証するものではございませんので、ご注意ください。
目次
・絶対的名物で集客し、5つの価格帯に「顧客満足」「利益アップ」「情報拡散」につながるメニューをちりばめて繁盛店に!
「酒場 角のうぐいす 博多店」(福岡・博多)
・仕入れや仕込みの工夫で原価率を抑え、地鶏の焼き鳥を高コスパで提供しつつ、安定した収益構造を実現!
「キンクラ 大山店」(東京・大山)
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絶対的名物で集客し、5つの価格帯に「顧客満足」「利益アップ」「情報拡散」につながるメニューをちりばめて繁盛店に!
福岡県福岡市博多区博多駅南1-4-10 アイビースクエア1F
https://r.gnavi.co.jp/jza0cxnc0000/
福岡・博多駅至近のビル1階に、2019年6月にオープンした「酒場 角のうぐいす 博多店」。博多・春吉に本店を構える大衆酒場の3号店で、店内はカウンター、テーブル席、小上がりの座敷席のある全66席の空間。30~50代のビジネス層を中心に、土・日曜日は観光客なども集客。オープン当初は大人数の宴会も多かったですが、コロナ禍以降は一人客や少人数グループの利用が中心です。
オープンから1年経たずにコロナ禍に突入しましたが、着実にファンを獲得し、2022年5月には最高月商1,000万円を記録するなど好調。その要因の一つとして、しっかり利益を生みつつ、満足度を高めるメニュー構成があります。メニュー全体の価格設定に共通している考え方が、来店客の期待を少しでも上回るということ。「お客様が料理を食べる前に抱く期待値は、店内の雰囲気や価格、ネーミングなどで決まります。その期待値に対して、提供スピードや盛り付け、見た目の鮮やかさ、調理法、ボリューム感などで工夫を重ねて、そのハードルを少しでも超えたい。そうすれば、自然とファンが増えて、リピーターが新規のお客様を連れてきてくれると考えています」と語るのは、全5店舗のメニュー開発を手掛けてきた取締役営業本部長の鈴木義徳氏。
フードのグランドメニューを見ると、
「食べるべき名物!」=3品
「199円(税込み219円)」=8品
「299円(税込み329円)」=23品
「399円(税込み439円)」=15品
「499円(税込み549円)」=7品
「699円(税込み769円)」=7品
「茶漬け」=4品
の全67品で、料理のジャンルではなく5つの価格帯に分けているのが特徴です。「狙いは、全体的に安い店だと感じてもらうことと、お客様が予算に合わせてメニューを選びやすくするためです」と鈴木氏。これらのメニューの平均原価率は28%に設定されています。
この中で、圧倒的な人気を誇る名物が「牛すじどろ炊き」と「角の豚串」(ともに税抜き249円)。「牛すじどろ炊き」は、黒毛和牛のすじ肉を串に刺してみそベースのタレで煮込んでおり、生ビールよりも出る注文率7割の“超”看板メニュー。しょうゆベースのタレで煮込んだ「角の豚串」も来店客の約半数がオーダーする名物だ。「どちらも柔らかくて誰もが好きな味。店に入ると目の前のカウンターで煮ているのでシズル感も伝わりやすく、約3秒で提供できるスピード感もポイントです」と鈴木氏。どちらも、原価率40%で単価も安いため利益になるメニューではないですが、「安く、早く、おいしく食べられる店」を象徴するメニューとして、来店の目的になっています。
もう一つ名物に据えているのが、「本日の色箱」(税抜き899円)。長浜鮮魚市場から仕入れた魚介を使った、日替わりの刺身6種盛り。色箱(市場にある魚が入っている箱)をイメージした見た目の楽しさが特徴で、若い層を中心に写真を撮る人が多く、SNSで拡散されており、広告塔の役割を果たしています。
次に「199円」「299円」のメニューを見てみましょう。この価格帯は早く提供できる料理が半数以上を占め、酒のあてはもちろん、サラダや揚げ物、ご飯もの、デザートなどバリエーションも多彩。短時間&安価で飲みたい人はこのゾーンだけでも十分に楽しむことができます。
「199円」の中で注文率が高いのは「串カツ豚バラ」(原価率30%)で、「299円」では100種類以上のスパイスを使って手羽元、手羽中、手羽先をまるごと揚げた「大手羽Z」(原価率40%)や「ちくわ磯辺揚げ」(原価率19%)が人気。「同じ価格帯の中でも原価率はまちまちです。味や量、見た目などを含めて、お客様が高く感じないかどうかを重視しています。ただ、『安すぎる』と思われるのもマイナス。お客様が『どんな安物の食材を使っているんだろう』と疑念を抱くような値決めはしないようにしています」(鈴木氏)。
一方で、「399円」「499円」「599円」の価格帯には、早く提供できる料理は少なく、価格に見合った満足度や納得感を追求した料理が並びます。と同時に、店の売上、利益に貢献する料理が多いのもこのゾーンです。
特に「399円」の中で高い人気を誇る「ポテサラうぐいす」は、立体感と見た目の鮮やかさを付加価値にすることで原価率を10%以下に抑えた高利益率メニュー。ポテトサラダは大衆酒場の定番でニーズも高く、調理オペレーションも軽いので、「顧客満足度」「作業効率」「利益率」のいずれも高いメニューといえます。
「499円」「699円」のメニューに関しては「粗利額」を重視しており、「お客様に満足いただきつつ、単品で粗利額が200円以上になるように、ポーションを調整したり、盛り付けで付加価値を感じてもらえるように工夫しています。また、ネーミングによって“料理の格”を判断されることもあるので、『伊万里牛ロースの焼きしゃぶ』(税抜き699円)のように、使用している食材を料理名に入れるなど、売価に対して説得力が出るようなネーミングも意識しています」と鈴木氏。
「499円」で好評なのが、「うぐいすの卵」。味はもちろん、ネーミングや見た目の楽しさも人気のポイント。原価率は55%と高いが、前述した通り粗利額は200円以上(225円)を確保できる値付けをしている。「699円」の中では、牛レバーを低温調理した「ギリレバ」が好評。注文率は7%と高くはないが、熱烈なファンを獲得しており、原価率15%(粗利額594円)ということもあり、顧客満足度はもちろん、客単価や利益アップにもつながっています。
一方、ドリンクメニューも多彩なニーズに対応すべく、ビール、ハイボール、サワー、ワイン、日本酒、焼酎、酎ハイ、ソフトドリンクと幅広く用意。「生ビール(中)」(税抜き490円、原価率30%)の注文率が最も高く、次いで「角ハイボール(大)」(税抜き460円、原価率15%)と「はちみつレモンサワー」(税抜き490円、原価率37%)が注文率の上位を占める。「ドリンクの値決めの基準は原価率。焼酎の水割りなど、10%を切るものもありますが、原価率20%前後を目安に設定しています」と鈴木氏。
このほか、レモンサワー約3杯分をお得に楽しめる「レモンサワーセット」(税抜き890円、原価率22%)や、当たりが出たらもう1杯が無料になる「ガリガリ君ソーダ」(税抜き490円、原価率26%)は、お得感や見た目のインパクトが人気のポイントになっています。
ドリンクは平均で一人3杯くらいのオーダーがあり、ビールで乾杯した後、ハイボールやレモンサワーなどをオーダーする人が多いといいます。
現在の平均客単価は3,100円で平均原価率は28%なので、一人当たりの平均粗利額は2,232円。オーソドックスな注文スタイルとしては、名物の「牛すじどろ炊き」と「角の豚串」を人数分と、199~399円のゾーンからサラダやおつまみ、揚げ物、煮物などを、499円、699円のゾーンからメインや〆のメニューをオーダーする人が多いようです。
集客の目的になる明確な看板メニュー、見た目の楽しさでSNSで拡散され広告塔になるメニュー、顧客満足度を高めつつ利益にもつながるメニューを軸にファンづくりと売上アップを両立。今後も既存メニューのブラッシュアップや、新メニューとの入れ替えなどを定期的に行いながら、さらに満足度を高められるメニュー構成を追求されています。
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仕入れや仕込みの工夫で原価率を抑え、地鶏の焼き鳥を高コスパで提供しつつ、安定した収益構造を実現!
東京都板橋区大山東町18-3
https://r.gnavi.co.jp/a50zw7440000/
東京・赤羽の1号店を皮切りに、備長炭を使った炭火焼き料理の店を展開している株式会社きんの蔵。その4号店が板橋にある「キンクラ 大山店」だ。1階にカウンターとソファの個室、2階にテーブル席と掘りごたつ席を配置した41席の店内は、シンプルで明るく居心地のいい空間。20~50代の幅広い層を獲得し、来店客の7割を女性が占めています。
コンセプトは「地鶏とワイン」。1~3号店では銘柄鶏「紅ふじ鳥」を使った鶏料理が売りでしたが、大山店ではワンランク上の地鶏「大和軍鶏(大和肉鶏)」を主力食材に据えており、焼き鳥をはじめとする地鶏料理のほかにワインと合うフレンチやイタリアンも用意。食事ニーズを取り込むため、ご飯ものとデザートも充実させており、「2軒目に行かず、最後まで当店で楽しんでいただけるようにメニュー構成を考えました」と店長の木下洋平氏は語ります。
フードのカテゴリーは8つ。
「焼き鳥」=30品(串焼き単品を含む)
「前菜/サラダ」=7品
「低温調理/蒸し料理」=7品
「オーブン」=7品
「揚げ物」=7品
「炭火焼」=8品
「ご飯/デザート」=16品
「おつまみ」=15品
で、日替わりの「本日のオススメ」(8品前後)も加えると、メニュー総数は100を超える。
最大の売りである「焼き鳥」は、大和軍鶏と紅ふじ鳥の2種類。このうち、大和軍鶏は高原価なので、丸鶏で仕入れて店内でさばき、ガラをスープに活用するほか、成形過程で出る端肉もほかの料理ですべて使い切るようにし、リーズナブルな価格で提供できるようにしています。「『モモ』(310円)など一部の部位は原価率40%を超えますが、丸鶏で仕入れて余すところなく使い切ることで、大和軍鶏の焼き鳥の平均原価率は30%程度に抑えられています」と、木下氏。
大和軍鶏の焼き鳥は、希少部位も含めて単品18種、盛り合わせ3種を用意。一番人気は「特選大和軍鶏串焼き6本盛り」(1,620円、原価率28%)で、オーダー率は約60%。盛り合わせの内容は店が決めるスタイルで、人気部位を盛り込みつつ、そのときに食べてもらいたい部位も入れている。単品は「270円」「290円」「310円」の3つの価格帯で提供しており、「ネギマ」や「レバー」(ともに290円)、「ササミ」(310円)が人気です。
一方、紅ふじ鳥の焼き鳥は、「フリソデ」「ヤゲン軟骨」「ネギマ」「モモ」「ソリレス」を150~220円(平均原価率18%)で提供。こちらは、やわらかく食べやすいことから子ども連れに人気が高いといいます。
「前菜/サラダ」のカテゴリーでは、旬の野菜を盛り込んだ「野菜たっぷりの十品目のサラダ」(750円)が女性に人気で、注文率は40~50%。原価率22%とやや低めで、利益にも貢献しているメニューといえます。
また、「低温調理/蒸し料理」では「A5黒毛和牛のローストビーフ」(1,510円、原価率30%)が人気。「『焼き鳥の店でローストビーフ?』と思うかもしれませんが、常連のお客様を中心にワイン好きの方がオーダーされます」と木下氏。このほか、宮崎の地鶏料理「じとっこ」を大和軍鶏でアレンジした「地鶏の黒炭火焼き」(1,510円、原価率28%)は、「炭火焼」カテゴリーで人気のメニュー。複数人数で少しずつ食べられるので、グループ客に好評で、大和軍鶏の端肉を使うことで地鶏のおいしさを楽しんでもらいつつ、ロス削減への貢献度も高いメニューです。
さらに、女性に圧倒的な人気を誇るのが、「オーブン」カテゴリーの「ズワイガニ入りふんわりチーズスフレ」(750円、原価率23%)と、「ご飯/デザート」の「ポルチーニ茸のリゾット」(860円、原価率27%)。メレンゲで膨らんだチーズスフレは見た目も楽しく、リゾットは「1,000円以上の価格設定でも満足していただけるはず」と木下氏が自信をのぞかせる一品だけあって、来店客の約半数がオーダー。また、創業以来、全店舗で提供している「本場宮崎の味 チキン南蛮」(750円、原価率22%)は「揚げ物」の一番人気で注文率は50%、テイクアウトやデリバリーでも高い人気を誇る“裏の看板メニュー”になっています。
メニュー表では、各カテゴリーごとにページを分けており、それぞれのおすすめメニューをページ上部に写真付きで掲載。「当店はモバイルオーダーの利用率が9割以上ですが、メニューブックを見て選ぶお客様が多いため、写真付きで紹介しているメニューのオーダー率が比較的高いです」と木下氏。
これらのメニューの価格設定の特徴は、ほぼすべての原価率が20~30%に設定されていることです。これは、どの料理をどんな順番で何品食べても、顧客満足を上げつつ、利益も確保することを意識しているからにほかなりません。
他方で、「おつまみ」カテゴリーはやや傾向が異なる。530円(「レバーペースト バケット3枚」など9品)と、420円(「おしんこ」など6品)の2つの価格帯を設定しており、どちらも平均原価率は12%。1グループあたり2~3品オーダーすることが多いため、利益にもつながるメニューだ。「酒の肴としてオーダーしてもらうことで、アルコールのオーダーにつなげることが狙いです」と木下氏は語ります。
逆に、原価率を40~50%くらいに設定して顧客満足度を高めているのが「本日のオススメ」。旬の食材を使った料理が並んでおり、常連客がオーダーすることが多いそう。新規の来店客には「焼き鳥」などの店の売りをオーダーしてもらいつつ利益も確保して、「本日のオススメ」に原価率の高い商品を置くことで、常連客に還元するメニュー構成になっています。
一方、ドリンクは注文率7割の「生ビール」(550円、原価率38%)が一番人気。また、「地鶏とワイン」をコンセプトに据えていることから、ワインは赤白それぞれ12本ずつ(ボトル2,500~6,500円)をそろえ、注文率も35~40%と高い。仕入れ価格に一律2,000円を乗せて提供しているため、2,500円のボトルであれば原価率20%、6,500円のボトルであれば同69%という価格設定にしています。
そのほか、クラフトビール(710円、原価率33%)を2種類そろえるほか、日本酒、焼酎、カクテルなども幅広く取りそろえ、「飲みたいお酒がない状況を作らないこと」(木下氏)を心掛けているそうです。
現在、平均客単価は4,000円。フードとドリンクの売上比率は3:7で平均原価率はフードが30%でドリンクは25%。よくあるオーダーとしては、「特選大和軍鶏串焼き6本盛り」と「野菜たっぷりの十品目のサラダ」、「おつまみ」2~3品に、「低温調理/蒸し料理」「炭火焼」「オーブン」「揚げ物」「ご飯/デザート」から1品ずつで、ドリンクを1人3杯前後オーダーするパターンが多いといいます。
地鶏の焼き鳥という明確な売りと、イタリアンやフレンチのメニューを含めたバリエーション、さまざまなニーズに応えるドリンクの種類でファンを獲得し、コロナ禍で約20%売上を落としているものの月商420万円を記録。「今後は地鶏の焼き鳥とは別の看板を開発して、店としての個性を際立たせたい」(木下氏)と、さらなるメニューのブラッシュアップを考えています。
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