Vol.8
「シェア」も「オプション」も立派なサブアイテム
中華チェーンが好調です。具体的に言うと、「幸楽苑」「餃子の王将」「バーミヤン」「日高屋」「五味八珍」「餃子の満洲」といったチェーンです。好調な理由はいくつかあるのですが、共通していることは、「餃子に力を入れている」ことにあります。どのチェーンも、餃子の注文率を高めることに努力してきました。つい注文してしまう価格、そしてクセになる味。これを餃子で実現するために各チェーンとも企業努力を惜しみませんでした。
今回のテーマは、「強いサブアイテムを持とう」です。中華料理店の餃子がまさに典型的なサブアイテムですが、ハンバーガーチェーンのフライドポテト、ファミリーレストランのスープ、サラダ、デザートもそうです。
また、本来サブではないのに、サブアイテムとして機能しているメニュー例として、ピザが挙げられます。パスタ&ピザ専門店などを見ると、それがわかりますね。パスタは各人が好みで注文し、ピザをシェアメニューとして注文している光景をよく見かけます。
それから、いま急速に客数を伸ばして500店目前にまで迫っているコメダ珈琲店。あの店の名物メニュー「シロノワール」もまさに強力なサブアイテムと言えます。シロノワールをひとつ注文して、シェアしているカップルも多いですね。変形版として、CoCo壱番屋のサブアイテムは、あの多様なオプションメニューです。ひとつは辛さ、もうひとつがトッピングです。このオプションこそがサブアイテムなのです。ちなみに、CoCo壱番屋は客単価が800円を超えます。この客単価を実現している屋台骨がまさに、オプションなのです。
目的は客単価を引き上げ、原価率を下げること
強いサブアイテムを持つ目的は、もうおわかりですね。ひとつは、客単価を引き上げること。もうひとつは、粗利益を稼ぐこと。この2つです。
まず、前述したように「つい注文してしまう」価格を実現していること。これを専門用語で「アフォーダブル(手が届く範囲の/手頃な)プライス」と言うのですが、中華チェーン全般の餃子、マクドナルドのフライドポテト、サイゼリヤのスープ、サラダ、デザート。これらは、アフォーダブルを徹底的に追求したメニューです。
サブアイテムのおかげで客単価が上がります。飲食店関係者であるプロの皆さまは、日々の営業でひしひしと感じているはずですが、客単価が例えば500円、800円、1,000円、1,200円と違うとことで、まったく商売が変わってしまうのです。もちろん高くなった方がいいに決まっていますが、ここで大事なことは、ほんの少々上げることです。それがサブアイテムの役目です。無理な引き上げを狙うと、お客様は一気に引いてしまいます。
サブアイテムのもうひとつの役割が、原価率の引き下げです。フライドポテトにしても、餃子にしても、原価は高くありませんね。主力商品の原価が高くても、サブアイテムで「冷やす」ことで、トータルの原価率が下がります。
価格が低くて、しかも原価も低い。こういうサブアイテムを持つのは、なかなか至難の業でありますが、我が店独自の名物サブアイテムを持つことができれば、その見返りは大変大きいものになります。ひとことで言えば、よく売れて、よく儲かる店に変身できるのです。
居酒屋グループが今、力を入れているのが唐揚げですね。独自性があってクセになり、アフォーダブルプライスが実現されていれば、まさに強力なサブアイテムを手にすることになります。
居酒屋と言えば、「お通し」はいわば半強制のサブアイテムです。強引に押し付けられて、大半のお客様は不満を抱いている、不思議なサブアイテムです。居酒屋に来店したお客様が、主体的に積極的に「つい注文してしまうお通し」が開発されれば、それが強いマグネットになり、差別化の武器になってくれるはずなのですが、これを実現している店に出会うことは実稀です。
お客様の不満を解消するところにビジネスのチャンスはあるのですから、ぜひ腰を据えて「お通しの改造」に取り組んでもらいたいものです。