2023/04/11 コラボ企画

ブランディングから始まる“選ばれる店”づくり(1)

選ばれる店づくりの手段として、「ブランディング」を使った方法を紹介。なぜブランディングが大切なのか、どのようにブランドを作り上げていくのか、ブランドプロデューサーとして活躍する大磯爵歌氏に話を聞く。

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ブランディングって、小さな会社にも必要なの?

 「お客様に選ばれる店にならなければいけない」。

 コロナ禍の中、飲食店オーナーは口をそろえてこう語る。

 コロナにより生活スタイルは一変。デリバリーや、家飲みは当たり前となり、外食は今まで以上に、友人や大切な人との食事の場として求められるようになった。その需要に応えるために、飲食店オーナーの本物志向の意識は強まっている。

 しかし、「選ばれる店」といっても、ゴールは漠然としており、何から始めればよいのか分かりにくい。そこで、本記事では、選ばれる店づくりの手段として、「ブランディング」を使った方法を紹介。なぜ、今ブランディングが大切なのか、どのようにブランドを作り上げていくのか、ブランドプロデューサーとして活躍する、株式会社ビジョンブリッジの代表、大磯爵歌氏に話を聞く。

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株式会社ビジョンブリッジ 代表 大磯爵歌(くらか)氏
言葉で育む、ブランディング研究所主宰。法政大学経営学部にてマーケティング、ブランド論を専攻。卒業後、大手広告会社のプロデューサーを経て2021年独立。業界歴18年間のキャリアを通して、アルコール・自動車・化粧品・流通・官公庁など、さまざまな業種・業界プロジェクトを手掛ける。現在は、小規模事業主のブランド戦略のトータルプロデューサーとして、コンセプトの構築からコミュニケーションの設計・ビジュアル開発・PRに至るまでを一手に請負い、その一気通貫した仕事は顧客から高い評価を得ている。

ブランディングって、そもそも何なの?

 本題に入る前に、ブランドがあることでどんなメリットがあるか整理しよう。まず、消費者が商品やサービスを選ぶ時、ブランドがある方が選ばれやすい、というのはイメージが湧くはず。同じ素材や性能の鞄でも、ヴィトンが選ばれるのは、ヴィトンを持つことで外出がワクワクする、ステイタスや信頼を表現できるなど、鞄を使うこと以上の価値を得られると、消費者は感じているからだ。つまり、ブランドとは単なるロゴやデザインそのものだけを指すのではなく、その商品やサービスを手にすることで、得られる体感値も含めて「ブランド」といえるだろう。そして、そのブランドを育てていくことが「ブランディング」。大磯氏は、ブランディングを次のように定義する。

 「ブランディングとは、自社の想い、考え、価値観、哲学を浸透させ、お客様からの信頼を作る活動である」。

 つまり、自社が大切にしている考えや思いを知ってもらうことで、来店客からの信頼を獲得し、店なら足を運んでくれ、商品やサービスなら手を伸ばしてもらえるようになるということ。信頼を作る活動こそが、ブランディング。そう考えると、ハイブランドだけに必要なものではない、と理解いただけるだろう。

「ブランディングの予算なんて無い」と言う飲食店は多いが・・・

 「ブランディング」と聞くと、ほとんどの人が、かっこいいホームページを作ったり、おしゃれなロゴを作ることを思い浮かべるのではないだろうか。しかし、デザインやロゴはブランドを象徴するものであって、それらを作れば、「はい、ブランドが出来ました」となるわけではない。繰り返しになるが、ブランドを育てるためには、来店客から信頼を獲得することが大切なのだ。

 ブランディングには大きく4つのステップがある。

①想いの言語化

 来店客にどんな経験を提供したいのか、従業員は何を大切にしているのか、自社が大切にしている考えや思い、価値観、哲学をお伝えするために、考えられることを書き出す。

②コンセプト作り

 書き出したものの中から、共通するものをグループに分け、そこから核となるキーワード、物語を見つけ出し、表現の方向性を定める。

③可視化

 コンセプトをもとに、どのように来店客に伝えていくのか。ホームページのデザインや、ロゴ、キービジュアルに落とし込んでいく。

④浸透(アウトプット)

 自分たちの思いを、どのように世の中に浸透させていくか。来店客への声掛け一つにしても、どのような声掛けが良いかを考え、それらを実践していく。SNSで発信していくことも大切。

 以上が、ブランディングの4つのステップだ。自社の思いを言語化し、それを表現する。「そんなの既にやっているよ」と思う人もいるかもしれない。まさにその通りで、SNSで思いを発信する、産地のこだわりを印刷してメニューブックに貼り付けるなど、何気ない行動もブランディングの一つといえる。つまり、ブランディングとは、予算が潤沢にある企業だけが取り組むものではなく、客と接する企業であれば必要なものといえる。ブランディングを体系的に学ぶことで、これまでの何気ないSNS発信や、接客はさらに磨かれていくはず。それが、ひいては「選ばれる店」につながっていくのだ。

 しかし、ブランドを育てることは容易ではない。次に、4つのステップの中でも、最初の壁である「想いの言語化」について、具体的な考え方や方法について紹介していこう。

想いを言葉にしてみよう

 前述した通り、ブランディングは、「自社の想いを言語化する」ことからスタートする。そこで「想いの言語化」について考えていく。

「想いの言語化」ってどうすればいいの?

 ブランドを育むには、企業や個人が大切にしている想いを明確にし、コミュニケーションに息づかせることが必要。ロゴやホームページなどの目に見えるものから、従業員の接客態度や店の雰囲気を通して感じるものまで。そのためには、自社が何を大切にしているかを従業員一人一人が理解し、実践できるようにならなければならない。その初めの一歩となるのが「想いの言語化」。では、どのように言語化すればよいのか一緒に考えてみよう。

 まず、何人かの従業員、リーダーを集めて、「来店客とのやり取りの中で印象に残っていること」を聞いてみよう。言葉がなかなか出てこないときは、「うれしかったこと」「悲しかったこと」「憤りを感じたこと」など、質問を噛み砕きながら、店で実際に働いている人の体験を拾っていくイメージで対話を進める。体験の背景にある喜怒哀楽に注目しながら、店を取り巻くストーリーに耳を傾ける感覚だ。ストーリーがあることで表現が豊かになるので、メモに残しておくとよいだろう。

 それを重ねていくと、次第に自社ならではのキーワードが浮かび上がってくるはず。キーワードとは、何度も繰り返し出てくる言葉、違う言葉でも近いニュアンスを有している言葉を指すが、それらをピックアップしてグループに分けていくと、核となる言葉(=自社らしさ)が次第に見え始めてくる。「感謝」「くつろぎ」「喜び」「おどろき」「一体感」など、いろいろなキーワードが見えてくるかもしれない。最初はぼんやりとしていても問題ないので、大切にしているそれらを、自社のキーワードと仮設定しよう。

アウトプットして、ブラッシュアップしていく

 漠然とでもキーワードが見えてきたら、次に行うことは、それを従業員と共有し、接客や、SNSの発信に落とし込み実践すること。簡単でもいいので、共有する場を持てると良いだろう。

 ここで生きてくるのが、「想いの言語化」のインタビューでメモしておいたストーリー。キーワードを象徴するエピソードを交えながら共有することで、他の従業員にもそのシーンがありありとイメージできるようになり、キーワードへの共感が生まれていく。

 この共感が大事で、来店客への声掛けや、ちょっとした立ち居振る舞いも変わり、SNSなどでの情報発信にもその心持ちが現れるようになり、自ずと、キーワードが、現場で働く人たちの行動に現れるようになる。その積み重ねが、想いの言語化から始まるブランディングといえる。

 上層部や本部が決めたキーワードがトップダウンで降りてくるだけでは、従業員の共感は生まれにくいもの。実際に現場で働く人のインタビューを経て、そこから拾ったストーリーを共有する、分かち合う。このプロセスが、ブランディングにおいてはとても大事なのだ。

 仮設定したキーワードは、次第に一番自社に合う形にブラッシュアップされていくはず。この言葉が一番しっくりくる、私たちはこれを大事にしている、などの納得感がキーワードに息づくようになるのだ。一朝一夕にはいかないかもしれないが、この過程を大事にすることで、骨太のブランドが育まれていくだろう。

※株式会社テンポスホールディングス刊「スマイラー」75号、77号より転載

■飲食業界誌「スマイラー」

“飲食店の笑顔を届ける”をコンセプトに、人物取材を通して飲食店運営の魅力を発信。全国の繁盛店の紹介から、最新の販促情報、旬な食材情報まで、様々な情報を届けている。毎月15,000部発行。飲食店の開業支援を行う「テンポスバスターズ」にて配布中!

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