2023/10/27 繁盛の黄金律

値上げをしても客単価が下がる(こともある)

踏ん張った末にようやく敢行した値上げだったのに、客単価が一向に上がらない、客数が減ってしまった、と悩む店主は少なくないのではないでしょうか。ただ一律にすべてのメニューを値上げしたのでは、お客様は支払額をセーブするために注文数を減らしたり、安いメニューをチョイスするなど、防衛行動を働かせます。客単価を上げるための値上げについては、いくつかのポイントがあるので、見ていきましょう。

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Vol.146

1.5割の値上げをしたが、客数はコロナ禍前に戻っていない

チェーングループが去年から何度も値上げを続けています。現在の価格は、コロナ禍前の1.5割増しになっています。総体的には、去年2回、今年になって1回の値上げをしました。そしてさらに現在、もう1回値上げをしています。これに連なって大部分の個人店が値上げをしています。やはり平均すると1.5割増し、といったところでしょうか。

今年1月~8月までの主な外食業の売上高を2019年比で見てみると、売上高が上回った上場外食業が35社あります(ちなみにトップは、郊外ラーメンチェーンの「山岡家」です)。これを客数比で見てみると、2019年を上回っているチェーンは9社しかありません。つまり、大部分のチェーンは、客単価アップ(値上げ)で売上を回復させているのです。

この値上げラッシュの中にあって、価格を上げていないチェーンがあります。イタリアン・ファミリーレストランの「サイゼリア」です。サイゼリアは価格を上げないどころではなく、むしろサイドメニューの一部を値下げしているのです。つまり、1人当たりの注文皿数を増やして客単価を上げようという戦略です。

食材費、人件費、光熱費、建築(改修)費が全て上がる中で「ようやるよ」と感心します。内実は大変でしょうが、こういう「テコでも動かない」チェーンが一つくらいあってもいいでしょう。吉と出るか、凶と出るか、結果はまだ判りませんが、応援したい気持ちです。

値上げをすると、客単価は上がるけれども、客数が減ってしまうのが悩みの種です。予想以上に客数が減ってしまえば、その値上げは失敗だった、ということになります。

より安いメニューを注文する、注文の皿数を減らす

ところが意外や意外、値上げをして客単価が下がってしまうことがあるのです。最悪の値上げということになりますが、どうしてこのようなことが起こるのでしょうか。

理由は次の2つがあります。

① 別の安いメニューを注文する
② 注文皿数を減らす

①はよくあることですね。例えば、スペシャルハンバーグが売りの店が、その看板メニューを値上げすると、別のチキンメニューや(スペシャルでない)レギュラーハンバーグを注文するケースです。支払い額が上がることを回避しようとするのです。お客様の防衛行動で、かえって客単価が下がってしまうのです。

②の注文皿数の減少も、お客様の防衛行動です。いつもはサラダとスープも注文していたけれど、スープの注文をやめる、といった行動がそれです。ラーメン店でもよくありますね。二人客、カップル客が、いつもはラーメンと餃子を一つずつ注文していたのに、値上げ後は餃子一つをシェアする行動に出る。これも客単価が下がります。

これを回避するには、全メニューを一斉に値上げするようなやり方をしないことです。これをやると必ず、注文皿数が減ります。サラダやスープ、あるいは餃子のようなサイドメニューは値上げしないことです。我慢する部分が必要なのです。注文皿数を増やして客単価を上げようとするならば、先のサイゼリアがやっているように「サイド(メニュー)は(価格を)下げる」ことも考えに入れなければなりません。

もう一つは、新メニューの導入ですね。ここでも、客単価を上げることを主眼に置かなければなりません。一つは主力メニューのジャンルの中で、新メニューを考えることです。ハンバーグが主力の店であれば、ちょっと高めの具材(もしくはソース)を考えることで新メニューを出せば、単価が上がります。

この時に力を入れるべきは、季節性を打ち出すことです。パスタの専門店であれば、キノコを使ったり、牡蠣(かき)を使ったりした新メニューの開発ですね。これで、客単価が引き上げられます。

ここで注意しなければならないのは、基本価格帯(プライスゾーン)から飛び出さないことです。1,000~1,300円が中心価格である店が、2,000円の季節メニューを入れてもお客様は注文してくれません。注文しないどころか、反発を買い、店の信用が損なわれてしまいます。基本価格帯のちょっと上での価格を設定しなければなりません。季節メニューは休眠しがちな顧客の目を覚まさせる役割も担っていますから、顧客がそっぽを向いてしまうような高単価商品を出してはいけないのです。

しかし、新商品を出したために客単価が下がるようなことがあってはなりません。それは悪手(あくしゅ)というものです。サイドメニューでも新商品を出すことに力を入れていかなければなりません。注文しやすいサイドメニューが開発されれば、注文皿数が増えて、ごく自然に客単価が上がってくれます。

デザートメニューもまったく同じです。強い店は必ず、強いその店独自のデザートメニューを持っているものです。サイドメニューもデザートメニューも大事なのは、価格です。注文しやすい価格になっているかどうか、です。

内容的にいくら魅力的なメニューが開発されても、価格が高ければ、注文するお客様はいません。サイドメニュー・デザートメニューは、メインメニュー以上に価格設定が難しいのです。いい内容のメニューなのに、ポーションと値付けが間違っているために、ちっとも出数が上がらない、というケースにしばしば出合います。お客様の立場に立ってもう一度、価格をチェックしてみましょう。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

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