2023/11/24 繁盛の黄金律

伸びている店は、メニューが極端に少なく、店舗調理を守っているところ

コロナ禍が終息して、イートインにはお客様が戻ってきてはいますが、コロナ禍前の状況まで回復した飲食店となるとあまり多くはありません。この現象は日本に限った事なのでしょうか。今回は、アメリカの外食業の今をレポート。日本の飲食業と何が異なるのか、その一部をご紹介します。

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Vol.147

テイクアウト、宅配、ドライブスルーが力を全開した

10月の末、約1週間、アメリカの外食状況を駆け足で視察してきました。ファストフード、ファストカジュアル、カジュアルレストラン、ファインレストラン、食品スーパーのチェーンを中心に、食べ歩きました。正直、疲れました。

アメリカの外食業は、どの業態もメチャクチャ元気です。特に人気のレストランチェーンにはお客様が溢れかえっていました。

アメリカのレストランは基本的に予約を取りません。予約をした人が本当に来てくれる保証はありませんからね。実際に店に来てくれたお客様だけを信用する、いかにもアメリカ的ですね。

お客様も待つことに抵抗はありません。1時間、2時間は平気で待ちます。そのためにディナー型のレストランには、バーコーナーがあるのです。

ファストフード、ファストカジュアルはコロナ禍の3年間、とことんオフプレミスを追求しました。オフプレミスとは、イートイン以外、つまりテイクアウト、デリバリー、ドライブスルー(DT)、この3つです。この3つで売上を確保することに全力を注ぎました。

特にDTの設置に力を入れました。DTが設置できるのは郊外のロードサイドですから、大手チェーンはこの立地へのお引越しを強力に進めました。大きな流れはフードコートから郊外へのリロケーションです。ダメとなったらどんどん撤退する。いい立地への転換スピードは驚くばかりです。

スターバックスコーヒーやマクドナルドなどの大手チェーンも町中型の店を縮小してDT付きの郊外店を増やしました。また、既にある郊外店はDTをWレーンにしました。まあこれは広い敷地があるからできることで、日本ではとても真似ができません。アメリカの外食はDTがコロナ禍の危機を救った、と言っても過言ではありません。

また、ピック&ゴーと言って、SNSで注文して敷地内に車を止めて、注文品を持ってきてもらうやり方も一気に増えました。これは日本でもやっていることですが、どんな状況になってもこれをチャンスとして捉え、どうやったら売れるのかを考え、即実行に移すのが、アメリカのすごいところです。

テーブルサービスも、テイクアウト、デリバリー、ピック&ゴーには力を入れました。多くのレストランがそれ専用の窓口を設けました。DTの力を使えないのが、テーブルサービスの辛いところですから、コロナ禍の逆風を一番受けたのは、テーブルサービスのグループです。

でも、コロナ禍が終息した今、前述のように一気にイートインに本来のお客様が戻ってきています。イートインが回復した分、テイクアウト、デリバリーのお客様は減りましたが、そこそこは残っていますから、その売上分がコロナ禍前の売上にオンされています。人気チェーンは既存店の売上が飛躍的に高まっていますが、これもコロナ禍の間にオフプレミス力を付けたおかげです。

商売の鉄則、「お客様が嫌がることはやらない」を守る

1週間の視察で、配膳ロボットは1台も見かけませんでした。また、卓上のタッチパネル注文もほとんど見かけませんでした。ただし、テーブルで精算できるパネルは、かなり普及しています。一言でいうと、アメリカの方が(特にレストランは)ずっとアナログです。コールベルも普及していませんし、従業員がテーブルに来て注文を取り、従業員が出来上がった料理をテーブルまで運んでいます。テーブルタッチをしっかり守っているのです。

日本では、人員不足を解消するために、新手(あらて)のマシンを積極的に導入しますが、アメリカは旧来のサービスの形を守り抜きます。お客様が求めていないことはしない、という鉄則を守り抜いているのです。日本は、客数が減って売上が落ちても利益が出る仕組みを作ることに熱心ですが、アメリカは、お客様の求めていることをやって客数と売上を伸ばすことに力を入れます。既存店の売上が伸び続けることにどこまでもこだわるのが、アメリカの外食業なのです。どちらが前向きか、アメリカに決まっていますよね。

日本の外食業の多くがやっていることの行き着く先は、お客様がゼロになっても利益が出ることです。そんなことは不可能なのに、それに向かって突き進んでいるのです。投資を抑え、人を減らし、マシンを導入し、改装を止め、とにかくローコストで店が回ることに汲々としている。この悪い循環から抜け出さない限り、日本の外食業に未来は無いでしょう。

それからアメリカの強いチェーンは、店舗調理を重視します。ファストフードはスピード提供が命ですから、調理のシンプル化が不可欠ですが、それでも肝(きも)の部分は、ちゃんと店で調理しています。そしてその調理には、技能が求められるのです。限られた部分ではありますが、そこには鍛えられた技能を注入する。それによって個性のある外食ならではの商品を生み出す。強いチェーンは、必ず技能の向上に努めているのです。

また、メニュー数が少ない。これもアメリカの強い外食チェーンの共通する特徴です。主力商品はせいぜい3つ。チックフィレは、マクドナルド、スターバックスに次ぐ売上高第3位のチキンチェーンですが、主力商品はフライドとグリルドの2つのチキンバーガー2つだけ。また、猛烈な勢いで伸びているレイジング・ケインズというチキンチェーンは、テンダーチキン1品のみ。チキンバーガーも持っていますが、テンダーチキンをバンズに挟んだだけ、という徹底した限定商品主義です。

メニューを増やすくらいならば、主力商品の質を上げ、競争力を高めることに力を入れる、というのがアメリカの外食業の基本的な姿勢です。何度も言いますが、「メニューを増やしても、お客様は増えない」のです。

それから最後にもう一つ、気がついたことがあります。植物由来の肉、いわゆるプラント・ミートは、外食業ではあまり伸びていません。大手ハンバーガーチェーンでも、一時導入するところがありましたが、今は引っ込めています。売れなかったのですね。

その代わり、食品スーパーでは、売り場面積は広がり、品種も増えています。家庭の食卓で使うことがあっても、外食でわざわざ植物由来肉を食べたいとは思っていない、というのが実情でしょう。

おいしさという点で、まだ本物の肉のレベルに達していないことが、伸びない理由です。そもそも外食は「こんなものを毎日食べていたら身体に悪いよな、でもうまいんだな」というものが求められるのですから。「身体には良いが、まずい」じゃ、定着するはずがありません。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

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鍛えられた十分な取材力、現場を見抜く観察力、網羅的な情報力、変化を先取りする予見力、この4つの強みを生かして、外食業に起こっている変化の本質を摘出し、その未来を明確に指し示す“主張のある専門誌”です。表層的なトレンドではなく、外食業に起こっていることの本質を知りたい人にこそ購読をおすすめします。読みたい人に直接お届け!(書店では販売しておりません)

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