2023/12/29 繁盛の黄金律

多店舗展開は「得意の土俵」を守れば、他業種化でも成功できる

1店舗目のお店が軌道に乗り、いよいよ多店舗化を目指そうという時、次はどんな業種をやってみたいと思いますか。成功する経営者は自分の得意を見定め、その得意を究めて、進化させながら多店舗化を進めていきます。

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Vol.148

業種は違っても自分の得意領域からでないこと

不思議でしょうがないのですが、一つの繁盛店を生み出した経営者が「もう1店舗」をやるときに、別の業種の外食業をやるケースが多いようです。

イタリアン居酒屋で当たった、普通ならば同じ商売でもう1店舗を出した方が成功率は高いと思うのですが、次はそば居酒屋をやる、という風に別業種の店をやりたがります。そしてそこも、そこそこに成功して、さて次はこれまでの2店舗の延長線上のものをやるかと思いきや、まったく別業種の店舗をやる。こういう経営者が非常に多いのです。

確かに、創業して初期の頃は、なかなか本命が決まりません。いくつか試行錯誤して、その中から本命をつかみ取る。そういう期間が必要なこともあります。ところが、本命をつかみ取る気持ちがない経営者が、結構いるのです。あれこれやってみて、あれもこれも中途半端に終わって、いつの間にか消えていく、こういう人が多いのです。

成功する経営者は、「これだ!」という本命をつかんだら脇目も振らず、その業態を鍛える(競争力を強くする)ことに全エネルギーを注ぎます。そして、進化させながら多店舗化を進めていくのです。

まずは、自分の得意技を決めなければなりません。「得意」の要素はたくさんあります。

・立地の得意(繁華街・ターミナル・郊外駅前・郊外ロードサイド)
・業種の得意(ラーメン・寿司・焼肉・そば・うどん・喫茶)
・アルコール(有り・無し)
・規模(大型店・中型店・小型店)
・テイクアウト(要る・要らない)
・調理技術(プロが必要・プロは要らない)
・価格帯(中心価格はいくらか、いくらの客単価を狙うか)
・客層(年齢、男女比、動機、ファミリーかフロムオフィスのお客様か)
・営業時間(夜中心か、昼中心か、朝はやるのか)
・滞席時間(短い・長い)

多店舗化しても弱くならないためには、この土俵を明確に決めなければなりません。たとえば夜から深夜の営業で、アルコール比率の高い商売が得意な人は十中八九、朝昼中心の商売はできません。また、繁華街中心部(の家賃は高い)場所を得意とする人は、郊外駅前や郊外ロードサイドでは同じような成功はできません。ことほど左様に、自分の得意からちょっとでも外れると力が十分に発揮できないものなのです。

成功のベースは、得意を見つけ、得意を究めることです。究めないまま、ズルズルといろいろなお店を多店化しても、必ず失敗します。

店ごとに利益率は違う、「ほどほど」を守ることが大事

しかし、ごく稀に多業種多業態で成功する人がいます。たとえば、銀座でいろいろな外食店を5店舗やっているけれど、それを全て繁盛させている経営者。こういう人はいます。

まず成功している理由として、エリアを限定していることが挙げられます。銀座、赤坂、六本木、くらいのエリア限定での成功例はありますね。こういう成功経営者は、やはり自分の得意分野をよくわかっているのです。

大衆相手なのか、接待を取れる準高級店志向になのか。昼中心か夜中心か。アルコールが必要なのか。客単価はどのくらいなのか、どういうサービスが必要なのか。

業種は違っても、業態(商売のやり方)では、共通のラインから外れていません。つまり、得意技をしっかりと押さえているのです。飛行機でも、ジェット機とプロペラ機とでは、飛行高度が違いますよね。ヘリコプターですとさらに低空を飛びます。成功者は自分の飛行高度を間違えません。大衆相手の商売が得意な人は、絶対に高級路線の店には手を出しません。

もう一つ、成功する人は店舗ごとの利益率をよくわきまえています。業種・業態によって、皆、利幅が違います。一般的に中国料理店だと、原価率が30%近くまで下がります。喫茶店では、20%を切るケースもよくあります。一方、ステーキや焼肉では40%を超えないと競争力が出ません。客単価の低い商売(たとえば喫茶店やうどん店)は、原価率が低くないと利益が出ません。しかし、客単価の高い商売(たとえば客単価が15,000円のステーキ店)は、原価率は高くても粗利益高は確保できるのです。

つまり、粗利益率で稼ぐのか、粗利益高で稼ぐのか。有能な経営者は、店舗ごとに分けて商売をしています。業種ごとの適正荒利益率を知っています。適切な利益を追い求めているのです。それぞれの店でどこに力を入れれば、お値打ちを提供できるか、それを知り抜いている人は、ごく例外的に多業種で成功します。しかし、繰り返しますがエリアを限定して、自分の目が届く範囲を明確に定めて、そこから出ないようにしています。

ということは、多くて5~6店舗ですね。その限界を知っている経営者だけが、他業種でも成功しているのです。いろいろな業種の店をやっていると、当然
儲かる店とあまり儲からない店が出てきます。原価率はもちろんのこと、家賃も違いますし、人件費も違います。調理が簡単で、プロの料理人を必要としないで営業できる店もでてきます。そうすると、全ての店の収益構造を一番利益の出ている店に合わせたくなるものです。そして原価率を落とし、人件費を削り、価格を上げるといった「悪しき改革」に手を染めます。さらに悪いことに、一番儲かっている店をさらに利益の出る店にしよう、としはじめます。

ハッと気がつくと、一番儲かっていた店は客数が減り、そこそこ儲かっていた店は全て赤字店に転落してしまっています。全店舗が、ボロボロになってしまっているのです。利益を追い過ぎると、顧客が逃げていく。それの実例がここにあります。そこそこ儲かっている店は、そこそこお客様に支持されているのですから、それ以上の利益を追求してはいけないのです。でも、一番やらなければいけないことは、一業態への集中化です。利益がよく出ている店に絞り込んで、その看板商品を磨き込んで、お客様の支持を高めることです。

そして「これならば多店舗化に耐えられるな」と判断したら自分の力量に合わせて、コツコツ店舗数を増やしていくことです。その時にエリアを広げに飛び地出店はやってはいけません。しかし、一般的には多店舗化を進めると、1店舗の繁盛店の繁盛度合いは、だんだん下落していきます。最初の繁盛をキープしたまま、多店舗化が進行していくことは、ありません.。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

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