強いスーパーバイザーが会社を強くする

店舗で生起する情報を正確に把握し、店長とともに店の「売る力」をけん引するスーパーバイザーは、店長にとって頼れるアニキ的存在と言えます。今回はスーパーバイザーの必要性について、ひも解いていきます。

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株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

Vol.154

スーパーバイザーの仕事は強い店長を育てること

店舗が増えると、経営者の目が行き届かなくなってきます。店舗が増えれば増えるほど商品、サービス、店舗のクレンリネスのバラつきの幅が大きくなります。

チェーングループでは、そのバラつきをできるだけ少なくするために、スーパーバイザー(SV)という役職が設けられています。1店舗当たりの売上の規模にもよりますが、SVは一般的に7~8店舗に1人必要と言われています。

「うちは、チェーンというほどの店舗数じゃありませんから、私が駆けずり回って目を光らせていれば、バラつきの心配はありません」と楽天的なことを言っている経営者がいますが、それもせいぜい3店舗でしょう。それ以上に店舗が増えると、必ずバラつきが生まれます。

そして、そのバラつきの幅は、月日が経つにつれて大きくなるのです。つまり、数店舗の支店経営であってもSVの役割を持った「右腕」が必要になってきます。

SVの最大の仕事は、強い店長を育てることです。店が増えるに連れて一般的には、店長のレベルが下がっていきます。特に出店が急ですと、その下がり方も大きくなっていきます。店長の力量に達しない「店長候補」を店長に据えざる得なくなります。つまり、日々の営業の中で一人前の店長に仕上げていかなければなりません。これがSVの最大の仕事なのです。

育てるのですから、チェックマンではありません。チェーングループでは、SVとは別に店舗の状態をチェックする専門役職があります。インスペクターというのが、それです。SVにもインスペクター的な役割が求められますが、繰り返しますが、一人前の店長を育成することが、SVの仕事です。

SVが訪店すると、店長を含めて店で働く人たちの間に緊張が走る、という光景が思い浮かびますが、これではダメです。強い店長は育ちません。SVが店を去ると、緊張がほどけて元の状態に戻ってしまう。それの繰り返しです。

SVを本当の意味で機能させるためには、ピーク時間に店で一緒に働くことが大事です。店長にとっては、心強い味方=アニキの登場です。これがあってはじめて本物の信頼関係を築くことができます。

店の弱さは、ピークタイムに一番はっきりと現れます。SVは一緒に働くことによって、その弱さを店長と共有することができます。そして、それをどのように克服するかが、両者の共通のテーマになります。

SVが店長に上から命じて、この弱さを克服しろ、と言うのとでは、雲泥の差が生じます。どのようにして克服するのか、その方法を両者で協議できるのですから、その方法はより具体的になります。そして、3ヵ月間でこういう状況まで持っていこう、という共通の目標が明確になります。

自発的に設定された目標なのですから、店長の取り組む姿勢、熱意が違ってきます。つまり、店長が一人前になるまでのスピードが変わってくるのです。

経営者に「モノ申す」存在でなければならない

一緒に働くのですから、SVにかかる負荷は大きくなります。1人のSVが7~8店舗を担当しているとして、これを全店でやり続けていたら、SVの身体が持ちません。当然、力を入れなければならない店と入れなくてもいい店を分けなければならなくなってきます。

QSCのレベルがしっかりと保たれていて、客数が伸びている店の店長は、放っておけばいいのです。放っておくというのは言い過ぎですが、褒めて励ましてあげればいいのです。そして、次の目標を設定する。つまり、SVは常にワーストの店、3店舗の立て直しに全力を注ぐことが求められます。そして全体の底上げを図る。

場合によっては、店長を副店長に降格させて、SV自らが店長として指揮を執らなければならないこともあります。立て直しの一部始終を自らの行動で見せるのです。これくらい説得力のある教育法はありません。それも上から目線で見せるのではなく、あくまでも「弟思いのアニキ」という立場で示すのです。

SVの店長育成で大事なことは、それぞれの店長のレベルに応じて「やり方が違う」という点です。そして、目標も違ってきます。新任の店長などは、本来の店長から比べると、まだ三合目あたりの実力です。そういう店長に最初から高い到達点を示したら、途方に暮れてやる気を失ってしまいます。まさに「人を見て法を説け」です。人を見る力が備わっていなければ、SVは務まりません。

もう一つ、SVの大事な仕事は、社長なり営業部長に「モノを言う」ことです。本部が出してくる販促や新商品、新企画が必ずしも正しいとは言えません。いや、むしろ、間違った戦術、戦略が出てくることの方が多いのです。

たとえば、季節の新商品が打ち出されたとします。大体、新商品というものは通常のオペレーションを乱すものなのですが、その欠陥を最初に発見し、本部に警告するのは、SVです。新商品によって全体の提供時間が遅れ、他の商品の完成度にも影響を与える、キッチンの負荷がかかって店全体の「売る力」を落とす、こういうことがよくあります。

店舗の状況を正確に伝えるのもSVの仕事です。本部は、新商品の売り個数にしか関心がありませんから、オペレーション全体に与える影響(つまり新商品の問題点)について、正確にレポートをするのは、まさにSVの役割です。

現実のSVは、社長の代理のような気持ちでいることが多いのですが、それは間違っています。まさに「店長のアニキ」という立ち位置で、いつも社長(もしくは本部)にモノ申すくらいの強い気概を持っていなければなりません。

本部と店長の間の苦しい立場に立ってはいますが、店で生起する情報を一番多く、また正確に持っているのがSVです。会社の将来は、SVの情報と知見を生かせるかどうか、ここにかかっています。

店の「売る力」を前進させるのも、SVの情報力とそれを受けとめ改善する経営者の度量次第です。稼いでくれるのは店長だけです。その店長を育てるのが、SVなのですから、どのくらい強いSVを持っているか、これこそが会社の成長力の源になります。

しかし、店舗数が増えてくると、必ず出てくるのがSV不要説です。どの経営者も店長さえしっかり掌握していれば、やっていけるのではないか、と必ず一瞬思うものです。それは、有効に機能するSV制度を作れていないことが問題なのであって、SVが不要なわけではありません。

強いSVを育てることを、片時も忘れてはなりません。

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