急げ!コロナ禍で崩れた商品とサービスの立て直しを

外食業というのは、商品の品質に加えて、時間と空間への満足を提供するビジネスです。コロナ禍を経てお店選びの選別眼が鋭くなった、お客様を満足させるためには意識的にイートインの価値と楽しさを高めることが必要です。

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株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

Vol.155

調理工程がバラバラ、盛り付けがメチャメチャ

アフターコロナ・バブルがはじけて、飲食店の集客力が頭打ちになっています。値上げのせいもありますが、2024年後半は多くの飲食店が、客数減に悩まされることになると思います。

コロナは収束したわけではありませんが、コロナ禍は終息したと言っていいでしょう。コロナ禍は、約4年半続きましたが、それが明けて外食業で明らかに変わったことは、
①テイクアウトやデリバリーの売上が一定の比率を持つようになった
②イートインのお客様は、増えた飲食店と減った飲食店がはっきりした

もう少し説明しますと①については、コロナ禍の間、お客様は店に行けないので仕方なく、テイクアウトやデリバリーを利用するようになりました。その結果、「やっぱりダメだ」と失望したお客様もありましたが、「これはこれで使えるな」と、便利さに気が付いたお客様もいたのです。

コロナ禍が終息して、テイクアウト、デリバリーの注文数は急速に減りましたが、それでも残るところは残ったのです。特にテイクアウト用に特別メニューを開発して、それが売れたところ(たとえば、丸亀製麺のうどん弁当、シェイクうどん)は、売上の一定比率を保っているのです。

②のイートインのお客様の増減、こちらが今回のメインテーマです。お客様が増えたところと減ったところがはっきりした、と書きましたが、増えた飲食店の共通点は、イートインの価値と楽しさを高めた、というところにあります。意識的に高めた店、と言うべきでありましょう。

お客様が増えた店の共通点を列挙しますと、
①調理工程を洗い直した
②提供時間を厳守した
③盛り付けをきれいにした
④テーブルに料理を運んだときに、お客様に笑顔で言葉を添える

要するに、イートインのお客様は、商品の質と提供に厳しくなった、ということです。その厳しい目を乗り越えた店に、お客様は集まっている、ということです。逆に言うとコロナ禍で、多くの飲食店での商品力、提供力がかなりレベルダウンしてしまったのです。

特に調理工程と盛り付けです。本来の工程が厳守されず、作り方がバラバラ、さらには盛り付けのチェックも行われず、本来の商品の姿からかけ離れた商品が平気で提供されていた、ということです。

やはりテイクアウト、デリバリーが増えたことが、商品の質の下落に影響を及ぼしたのです。テーブルでのサービスもぞんざいになります。テイクアウトのお客様や宅配員に渡すようにテーブル提供をしたら「もう二度と、この店には来ない」と、お客様は決意してしまいますよね。当然のことです。

サービスの土台が崩れている

商品力とサービス力を意識的に高めている店が、客数を伸ばしている、というごく当たり前の言葉になりますが、サービスについてもう一歩踏み込んで、具体的に言いますと
①入店時のお迎え
②席へのご案内
③注文を受ける際に行うあいさつ
④退店時のお見送り

これをちゃんと遂行しているところは、支持を失っていません。かつては、外食業では当たり前であったこの一連の行動が消滅しつつあるのです。

入店→席決め→着席→注文の受け付け→精算→退店の自動化が進み、あるファミリーレストランチェーンでは、一度も従業員との接触がない、という仕組みになっています。

これも、コロナ禍の影響が大きかったのです。自動案内、自動注文、ロボットでのお運び、自動精算が、この5年内で一気に浸透しました。お客様も「それはそれで仕方ないか」と、慣れてしまったところもありますが、一方では、ちゃんとしたサービスを受けて、ちゃんとした時間を楽しみたい、という外食願望が一気に膨れ上がってきたのです。

客数を着実に伸ばしている店は、この外食願望をしっかり満足させているところです。至極真っ当な願望なのですが、この願望をちゃんと満たしてくれる外食店が極端に減ってしまっている、というのが現状です。別の言い方をしますと、ここに力を入れれば、武器になります。

スタンダードが崩れたまま営業しているところがほとんどなのですから、意識的に商品とサービスの質を上げれば、それが強い集客力に結びつきます。やるべきことをきちんとやる、これに尽きるわけですから、新しい投資はゼロです。店のテーマとして前向きに取り込み、働く人全員が同じ方向を目指す結束力が出れば効果は表れます。

特に、お迎え、ご案内、お見送りをきちんと実行している店は、本当に少なくなってきました。外食業の基盤、土台が崩壊しているのです。そして、その崩壊にほとんどの経営者が気付いていません。気が付いているのは、お客様だけです。お客様は選別して、商品やサービスの優れた店に集中的に足を運んでいるのです。

それからもう一つ。コロナ禍ではっきり変わったことは、非接触願望が強まったことです。だったらロボット、自動精算で結構じゃないか、などと考えてはいけません。そういう話ではなくて、すし詰めの客席を嫌がるようになったのです。

コロナ禍が明けて、再び客席数を増やそうとしている経営者がいますが、お客様のニーズに気付いていません。お客様は、より広い空間を求めるようになったのですから、客席を減らす店づくりをしなければならないのです。

テーブルの面積を広げる、同じテーブルならば客席数を減らす、カウンターの幅を広げる、卓数を減らす。つまりよりゆったり(6人掛けを4人掛けにするとか)した客席にする、ということです。

たとえば50席あった店ならば、40席にする。間違っても60席に増やしてはいけません。仮に60席にしても、客席稼働率が5割ならば30人で満席です。それならば、50席を40席のゆとりある空間にして客席稼働率を8割にすれば、32人で満席になりますから、客席数を減らした方が、客数が増える可能性が高まるのです。

それからトイレ。改装を考えているのであれば、スペースを広くする。そして男女別、ウォシュレット設置は、今や「マスト」です。客席数を減らしてもトイレを広げる。トイレも集客力の大事な要素になっています。

店の都合を引っ込めて、お客様の都合を優先させなければなりません。コロナ後のお客様の選別眼は、非常に鋭くなっているのです。

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