分煙コンサルタントが語る飲食店の分煙事情&ノウハウ
2025年4月に大阪府で受動喫煙防止条例が全面施行される。この条例によって、対象外の条件に該当していた小・中規模の事業者も対応が迫られることになる。では、実際に分煙をする場合、小・中規模の飲食店はどんな対応をすべきなのか。大阪を拠点に飲食店などの分煙対策に関するアドバイスをする分煙コンサルタントである日本たばこ産業株式会社の渉外部 課長・宮田氏に、具体的な事例を含めてノウハウを伺った。
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今回、お話を伺ったのは・・・
目次
・大阪府の受動喫煙防止条例(2025年4月1日~)の内容
・飲食店の分煙対策とポイント
・実際の飲食店の分煙成功事例
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大阪府の受動喫煙防止条例(2025年4月1日~)の内容
客席面積30平米超、100平米以下の店が新たに対象に
大阪府の受動喫煙防止条例について知っておくべきポイントは、国が定めた改正健康増進法(望まない受動喫煙を防止するための法律)よりも厳しい規定が定められているという点だ。
上の図にある通り、改正健康増進法と大阪府の受動喫煙防止条例の違いは、禁煙や分煙化の義務対象にならない経過措置事業者の条件にある。
改正健康増進法では経過措置の対象となる条件の一つが、客席面積100平米(約30坪)以下であるのに対して、大阪府の受動喫煙防止条例では客席面積30平米(約9坪)以下と規定されている。つまり、大阪府の事業者で条例施行までは対策が必要なかった100平米以下のお店のうち、30平米を超える小・中規模のお店は禁煙・分煙化の対策が必要になるのだ。ここで注意したいのが、「客席面積」と「店舗面積」「敷地面積」の違いだ。あくまで客席を置いているスペースの面積なので、自店が対象となるかをチェックする際には間違わないように確認しよう。
「今回、条例によって新たに対象になる大阪府内の飲食店は概算で4,000店舗以上と見られています。その一部の飲食店に当社がアンケートを取ったところ、5割強の飲食店が喫煙環境をこのまま維持したいという意向でした。お客様に喫煙者が多く、売上への影響が大きいことが主な理由です」と宮田氏は解説する。
まとめ
2025年4月より、大阪府で新たに義務対象になる事業者
・大阪府の条例は改正健康増進法よりも経過措置対象の条件が厳しい
・改正健康増進法の義務対象:
客席面積100平米を超える
事業者
・大阪府受動喫煙防止条例の義務対象:
客席面積30平米を超える
事業者
※2022年4月より従業員を雇用している飲食店は原則屋内禁煙(努力義務)
・大阪府内で4,000店舗以上が新たに規制対象に。
・調査によると 5割以上 の飲食店が「喫煙環境を維持したい」と回答。
飲食店の分煙対策とポイント
専用室や分煙ブースの設置では補助金などの活用を
では、新たに対象となる小・中規模の飲食店はどのような対応を取る必要があるのか。まず、全面禁煙にするか、分煙するかを選ぶ必要があり、もし分煙する場合は、主な方法として以下の2つの選択肢がある。
① 喫煙専用室や分煙ブース(紙巻専用・加熱式たばこ専用含む)を設置
② 敷地内の屋外に灰皿などを置いて喫煙スペースにする
「①のパターンが最もスタンダードです。それまで全面喫煙可能だったお店がしっかり分煙したことで、たばこを吸わない方でも入店しやすくなり、客層が広がったという事例もあります」と宮田氏。
一方で、設置費用が数百万円規模でかかることや、喫煙専用室や分煙ブースのスペースを確保すること、場合によっては客席を減らす必要があることに留意したい。補助金を活用できる可能性もあるので各自治体や国の補助金の条件をチェックすることも大切だ。
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喫煙専用室や分煙ブースを設置するには、「喫煙室外から喫煙室内に向かって風速0.2m/秒以上で空気が入り続ける」「壁、天井によって区画されて完全に仕切られている」「屋外または外の場所に排気する」という技術的要件を満たす必要がある。
費用を抑えるために、もともとある個室を喫煙専用室に変更する店舗も少なくない。「0から設置する場合はダクト工事が必要になりますが、立地や建物の都合で工事できない場合は、脱煙機能付き分煙ブースを選択することも可能です。ブース内のフィルターでたばこの煙をクリーンな空気に換えて室内に戻す屋内循環型で、メーカーにもよりますが小さいものなら幅1m×奥行き1m×高さ2m40㎝程度からあり、100~200万円ほどで設置できますが、毎年、一定のメンテナンス費用も発生します」と宮田氏。
②で屋外を喫煙スペースにする一番のメリットは、灰皿一つを置くだけでほぼ費用がかからないことだ。ただ、2025年1月27日からは大阪市の全域で路上喫煙禁止になったため、敷地からはみ出て喫煙されないように、喫煙スペースの配置には十分注意したい。
加えて、分煙時には外国人向けに多言語の標識を目立つところに提示することも大切だ。「国際的なイベントが開催されるので海外からの観光客なども増えますが、日本の喫煙ルールはわかりにくいため周知徹底することが大切です。大阪府のホームページで標識の印刷用データをダウンロードできるほか、インターネット通販などでも多言語標識のステッカーを購入できます」(宮田氏)。
まとめ
分煙の手段やポイント
・ 喫煙専用室や分煙ブースを設置
→補助金活用や個室の利用、屋内循環型ブースの活用などでコスト削減可能。
・ 敷地内の屋外を喫煙スペースにする
→夏冬の対策、大阪市内においては路上喫煙にならないよう注意が必要。
・ 多言語標識の設置
→外国人向けの標識を目立つ場所に掲示し、ルールの周知を徹底。
実際の飲食店の分煙成功事例
条例施行前から分煙に取り組み、集客やイメージアップに結び付いた大阪市内の店舗の事例を紹介する。
あるカフェの場合
「席数50で、もともとは喫煙席7割、禁煙席3割のお店でしたが、条例施行前に喫煙専用室を設けることに。以前は来店時に喫煙席か禁煙席かの希望を聞き、いずれかが満席の場合は待ちが発生していましたが、喫煙専用室を作ることでオペレーションが楽になり、ウエイティング(待ち時間)も減少。たばこを吸わない方の一層の取り込みにも成功したそうです」(宮田氏)。
ある居酒屋の場合
「もともと喫煙可能なお店でしたが、一部の常連のお客様からの要望で全面禁煙にしたそうなのですが、わずか1カ月で売上が大幅にダウン。喫煙する方にも再び来店してもらうべく分煙したいというご相談をいただきました。席数30の店内には、喫煙専用室を設置するスペースがなく、配管工事もできないことから分煙ブースを設置。その結果、喫煙する常連のお客様が戻ってきただけでなく、平均滞在時間も長くなって売上も改善。喫煙するスタッフからも休憩時間に利用できると好評だそうです。また、外国人観光客も多いことから、多言語の標識を掲示してルールを順守してもらうようアピールしているとのこと。海外では、飲食店は禁煙が一般的なので、分煙ブースを初めて見る外国人の方は少なくありません。誰でもわかる標識をつけることはインバウンド対策としても重要だといえそうです」(宮田氏)。
まとめ
カフェの事例
対応策:喫煙専用室を設置。喫煙者は専用室へ誘導。
効果:来店客ごとに喫煙・禁煙席への誘導をする必要がなくなり、オペレーションがスムーズに。ウエイティング(待ち時間)も減少。たばこを吸わない方の来客も増加し、新たな客層を獲得。
居酒屋の事例
対応策:一度全面禁煙したところ売上減少。喫煙専用室用の配管工事ができないため、分煙ブースを導入。
効果:喫煙する常連客が戻り、平均滞在時間が長くなり売上が回復。外国人観光客向けの多言語標識も効果を発揮。
今回は大阪府で条例が施行されたが、今後、他の都道府県でも同様の条例が施行される可能性は大いにある。また、改正健康増進法で定められている通り、一部の事業者に禁煙・分煙対策の義務がないのはあくまでも“経過措置”に過ぎない。いずれ、すべての飲食店が対応しなければいけない日が来ると考えておいた方がよいだろう。条例によって対象になった飲食店はもちろん、分煙を考えている飲食店も本記事の内容をヒントに分煙対策を進めていただきたい。
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