2025/08/05 コラボ企画

廃食用油で飛行機が飛ぶ!?飲食店がサステナブルな社会実現に貢献する

使用済みの食用油などを原料にした、地球にやさしい航空機用燃料が、SAF(持続可能な航空燃料)だ。欧米での研究が先行してきたこの次世代エネルギーがついに日本でも2025年5月より、国内製造がスタートした。そこの国産SAFの供給を初めて実現させたのが、日揮ホールディングス・コスモ石油・レボインターナショナルの3社による合同会社サファイア スカイエナジー。同社の最高執行責任者COO 西村 勇穀 氏にお話を伺った。

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※スマイラー112号(2025年6月)より転載

「SAF」がないと、飛行機が飛べない時代が来る

合同会社サファイア スカイエナジー 最高執行責任者COOの西村 勇穀 氏

サステナビリティが叫ばれる現代において、「SAF(サフ)」の需要は、今後ますます高まるとみられている。しかし、これまで日本では廃食用油を海外に輸出し、現地で製造されたSAFを再び日本へ逆輸入するという構造が続いていた。

これに対して西村氏は、「今も、日本で廃棄された食用油は、かなりの量が海外に流れています。大きなSAFの生産工場がシンガポールにありますので、そこに多くが持ち込まれているとされています。しかし、その輸出のために二酸化炭素が出てしまうというジレンマがあります。ですからSAFを国内循環させていくということが、我々がこの事業に取り組む意義そのものなのです」と説明する。

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こんな大きな話になるとは思っていなかった

日本初のSAF生産は、西村氏のこんな思いがきっかけとなって誕生した。

「私はもともと石油精製などを手がける化学系のエンジニアでした。海外で仕事をしていたとき、世界ではすでにサステナブルな燃料への転換が始まっていたんです。それを見て、“これからはこういう分野に知見を活かすべきだ”と感じました」という。

そんな気付きを胸に、海外赴任から帰国したタイミングで、自らSAF生産プロジェクトの立ち上げに動き出した。

「“SAF”にはいろいろな原料がありますが、やっぱり廃食用油が一番効率がいい。もともと油ですからね。他の原料に比べて製造に必要なエネルギーも少なくて済むんです。だから、CO2削減の効果も非常に高いんです」。

西村氏の思いから始まった挑戦は、日揮ホールディングスとコスモ石油、そしてレボインターナショナルの3社が協力する形で、実現に向かって走り始める。日揮ホールディングスはサプライチェーン構築の主導およびプラントの設計・建設、コスモ石油はSAFの製造・販売、レボインターナショナルは廃食用油の回収という役割で、それぞれの強みを生かして、SAFのサプライチェーンを実現したのだ。

こうして、2022年11月、3社の出資により、廃食用油を原料とする国産のSAFの製造・販売会社「合同会社サファイア スカイエナジー」を設立。そして2025年5月にSAFの供給がスタート。日本初の国産SAFは大きなニュースとなった。

「廃食用油をもっとたくさん集めることが必要なので、回収に協力してくださる飲食店などを今後さらに増やしていくことが重要です。そのための機運醸成活動などは日揮ホールディングスが中心になって展開しています。その一つが『Fry to Fly Project(フライ トゥー フライ プロジェクト)』です。こうした機運醸成活動が重要になる背景には、現状で飲食店が廃食用油の廃棄に困っておらず、現在のやり方を変えて我々の事業に回すような面倒なことをなかなかしてくれないということがあります。廃食用油を高く買い取りますなどということができればいいのですが、結果としてSAFの販売価格が高くなってしまっては意味がありません。持続性が低くなってしまいます。そこで、SAFの社会的価値や重要性を理解していただき、活動に共感してもらうための仕掛けが必要だと考えました」と西村さん。

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「SAF」が実現する未来への共感が広がっている

現在、「Fry to Fly Project」には、212の団体が参加している(2025年3月末時点)。飲食企業だけでなく、サステナブルを重要視している一般企業や、地方自治体なども多い。東京都や京都市、横浜市、工場のある堺市など30以上の自治体が参加している。

「自治体は通常民間企業の行うプロジェクトには、なかなか参加してくれないのですが、我々の活動は直接的な利益を求めるということではなく資源循環の機運を高めることを目的にしているということで多くの団体にご賛同いただいています」。

「Fry to Fly Project」 では、SAFの高い社会貢献度などを理解していただくためのポスターやチラシなども用意し、飲食店などが活用できるような準備もしている。お客様は、その店で食事することで社会貢献ができていることがわかり、その店がサステナブルな意識が高いことを理解できる。お店や企業に対するお客様の共感性を高めることで、お店の集客や販促に助力できるようにしているのだ。

参加企業の中には、鉄道会社などもあり、車内広告などでSAFによる資源循環や脱炭素を目指す重要性をアピールしてくれているのだそうだ。そんな地道な活動もあって、SAFの存在は急速に認知されるようになってきている。

そして5月1日、関西空港の旅客機に日本初の国産SAFが供給された。この日、空港では記念式典が行われ、SAFを使った旅客機が上海に向かって飛び立つ様子を多くのメディアが取材し、話題となった。

廃食用油をSAFにすることでサステナブルな社会の実現に貢献できるという事実に、多くの人は驚き、共感した。家庭の廃食用油の回収はイオンモール等が協力を始めている。全店舗ではないが、イオンモールのショッピングセンター内に回収ボックスを設置し、そこで家庭の使用済み食用油を集める仕組みを作った。

西村氏は、個人飲食店の協力もぜひお願いしたいと言う。「チェーン店などの協力は、少しずつ増えているのですが、個人店はまだまだ少ない。廃棄してしまっている店もあるかもしれません。SAFの原料として活用させていただければありがたいです。どうぞ、よろしくお願いします」。

飲食業界が、サステナブルな社会を実現する最先端のテクノロジーに貢献できるというのは、少し誇らしい気がする。飲食店の行動が、地球環境を、そして日本の未来を拓いていく。

取材協力:合同会社サファイア スカイ エナジー
神奈川県横浜市西区みなとみらい2−3−1
※活動の趣旨に賛同する企業、自治体、団体は誰でも会費無料で参加可能。
お問い合わせはFry to Fly Project事務局まで。
E-mail: frytofly@jgc.com

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