2012/06/07 繁盛の法則

東京にある気軽なパリ風ビストロとは

アットホームな ル・プティ・トノー 九段店に学ぶ‐路地をやや入った場所にある小ぢんまりしたビストロ。アットホームな雰囲気の中、本場フランスの味が楽しめるため、人気を得ている。

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ル・プティ・トノー 九段店

地下鉄九段下駅から徒歩3分ほど、目白通りからやや路地に入った場所に2001年にオープン。店内はフランス製の調度品を使い、パリのビストロそのままの温かい雰囲気を醸し出している

Key Point

  1. パリのビストロそのものの雰囲気、料理を提供
  2. 気軽にワインと料理を楽しめるように工夫
  3. 魅力的なイベントを継続して実施

日本でのフランス料理の普及を目指しカジュアルな業態を出店

路地をやや入った場所にある小ぢんまりした「ル・プティ・トノー 九段店」は、アットホームな雰囲気の中、本場フランスの味が楽しめるビストロとして人気を得ている。

オーナーシェフのフィリップ・バットン氏は、1963年、フランス・パリ生まれで、1987年に来日し、神戸のフランス料理店のシェフを1年間務めた。その後フランスに戻ったり、イギリス・湖水地方のホテル勤務などを経て、1990年に再来日し、都内のホテルやレストランで料理長として働くようになった。1998~2002年は、プロデュースを担当した東京・代官山の高級フランス料理店「ル・プティ・ブドン」で、料理長兼マネージャーを任されていた。

それまで高級店に関わることが多かったバットン氏だが、日本でもよりカジュアルにフランス料理とワインを楽しんでほしいという思いから、2001年にル・プティ・トノー 九段店を出店した。続いて、2003年に虎ノ門店、2006年に麻布十番店をオープンし、現在、ティファニー株式会社として計3店を経営している。

九段店は、地下鉄の九段下駅から徒歩3分ほどの場所にあり、店舗規模は20坪40席で、テーブルやソファ、スズ製のカウンター、床のタイル、グラスなど、フランス製の建材や調度品、備品が使われている。厨房、ホールともにフランス人のスタッフが数人いることもあり、東京にいながら、パリのビストロそのものの雰囲気を味わえる。特に混雑時には、テーブル間隔の狭さも相まって、お客たちがワイワイ、ガヤガヤと食事と会話を楽しめるような、親密で温かい、独特のムードが醸し出されている。

昼は1,050円、1,800円、2,500円の3価格帯のランチメニューを用意している。料理はすべて日替わりで、1,050円のクイックランチは、パスタまたはリゾットに前菜、パン、コーヒーまたは紅茶がつき、周辺のサラリーマンやOLなどに人気がある。1,800円のセットは、ワインまたはソフトドリンク、前菜、魚または肉料理、コーヒーまたは紅茶がつき、やや時間にゆとりのある層や、顧客とのミーティング、ちょっとしたランチ接待などに利用されている。2,500円のランチセットはデザートつきになるが、低価格のセットもプラス300円でデザートを追加できる。特にフランス人のホールスタッフに、「デザートいかがですか?」「おいしい、おいしい!」とにこやかに勧められ、思わず注文してしまうお客も少なくない。ランチの客単価は1,500円になる。

夜は、ワインとともに料理を楽しんでほしいという趣向で、フランス産を中心に約80種のワインをそろえている。好みの料理をアラカルトの中から選ぶ3,800円、4,300円、7,000円のプリフィクスコースもあるが、アラカルトをシェアしながらワインとともに楽しんでいく常連客が多い。そのため、アラカルトは通常のポーションと、タパスと呼ぶ小ポーションの2種を用意し、人数や好みに応じて量を調整しながらオーダーできるようにしている。夜の客単価は6,000~7,000円で、平均月商は500万円となる。

手前が今年からグランドメニューに加わった「マルセイユのブイヤベースラーメン」小1,300円で、魚介のスープに中華麺を入れたもの。奥が「トゥールーズのおばあちゃん風ソーセージとじゃがいものピューレ」小1,600円

月1回のクスクスディナーや年2回のゴルフコンペも好評

「九段店は、10年来のお客様も多いですし、"以前フランスに住んでいたので懐かしい"と通って下さる方、日本武道館や靖国神社に来られたときにふと見つけて寄る方もいらっしゃいます」と、アシスタントマネージャーの後藤亜由美氏。30~60代の幅広い客層を誘引しており、女性客が6~7割を占めている。

なお、毎月最終週の水曜は、「クスクスディナー」として、北アフリカのパスタ料理を同店風に仕上げた「クスクスロワイヤル」2,800円を提供し、これを楽しみに毎月来店するお客も多い。また、虎ノ門店、麻布十番店も、内外装やメニューはほぼ同じだが、虎ノ門店では毎週土曜にライブミュージックの演奏がチャージなしで楽しめるほか、同社として年2回ゴルフコンペを開催するなど、顧客とのつながりを深めるイベントも行なっている。

同店が本場さながらのビストロとして支持されている要因は、以下の3点であろう。

1フランス人オーナーシェフにより、パリのビストロそのものの雰囲気で、本場の料理を提供している。
2気軽にフランス料理を楽しめるように、昼は1,050円~のランチ、夜はワインやアラカルトを充実させている。
3クスクスディナーやゴルフコンペなど、魅力的なイベントを継続して実施している。

日本におけるフランス料理の普及に努めるバットン氏は、テレビ番組とのコラボレーションで新メニューを開発したり、不定期で開催するスペシャルディナーの日には自ら厨房に入ることもある。今年のグランドメニューには、そのコラボレーションで好評だった「マルセイユのブイヤベースラーメン」小1,300円、大2,200円、「フォアグラとパプリカのマーボー豆腐」小1,500円、大2,600円を加えるなど、常に新たな提案を打ち出している。

住所
東京都千代田区九段北1-10-2 九段アークビル1F
TEL
03-3239-6440
営業時間
11:30~23:30
(ランチ 15:00LO.
 ティータイム 15:00~18:00
 ディナー 22:30LO.)
定休日
日曜